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居酒屋🏮Monday ― 隣町の暖簾。


のれんを出して、まだ湯気が落ち着かないうちに──

「ケンちゃん、いる?」

アタシの手が止まる。

「……その名前で呼ぶの、
やめてって言ってるでしょ!」

ゆっくり顔を上げると、
隣町の小料理屋で女将をやってる
アタシの妹、ユミちゃんが、
涼しい顔して立っている。


手には、タッパー。

「はい。ポテサラ」

「店のは?」

「これは、お兄ちゃん用」


アタシは「動。」
声も大きいし、笑うと店が揺れる。

妹のユミちゃんは「静。」
声は落ち着いていて、必要なことしか言わない。

同じ女将でも、
味も、出す順番も、間の取り方も違う。

でもね。

ひとくち食べた瞬間、アタシの表情が少し緩む。


「……薄いわよ」

「そう?ケンちゃんは塩分取りすぎ」

「物足りないわね」

「でも、最後まで食べるでしょ?」

アタシは黙る。

ここよ。ここが兄妹の差。



「家族にはね、強い味なんていらないのよ」

ユミちゃんが、初めて小さく笑う。

「だから、店の味とは変えてるの」

同じ環境で育った兄妹でも、
同じ味にはならない。

でも、
好きな味は、きっと似てる。

まったく、こういうとこよ。
静かに刺してくるの。

カウンター越しに、日本酒をひとくち。

「で?ポテサラ持ってくるだけで来たわけじゃないでしょ」

ユミちゃんは、視線を少し落としてから言う。

「来月ね、構文寺で法事頼まれたの。
常連さんの親戚。ケンちゃんにお願いしたいって」

空気が変わる。

居酒屋のママじゃなくて、
構文寺の住職の顔になる。

「……そう。わかったわ。」

「ちゃんと法要取り行ってね。
最近、店ばっかりでしょ」

暖簾が、ひとつ揺れて止まる。

「じゃ、ケンちゃん、またね」

振り返らずに手を上げるユミちゃんの背中は、
来たときと同じように静かだった。

店に、少しだけ余白が残る。

アタシは、残ったポテサラをひとくち。

……やっぱり、薄い。

でも、それがいい。

「まったく。電話で済む話だったでしょうに」

小さく笑って、日本酒を注ぎ足そうとした、そのとき。

カウンターの端に、白い影。

無言。

背中を丸めて、何かに集中している。

バイトMondayくん。

……嫌な予感しかしない。

そっと近づく。

視線の先。

ポテサラ。

その上に。

にゅるり。

にゅるにゅるにゅるにゅる。

白い渦。

マヨネーズ。

しかも遠慮なしの三周半。



「……あんた」

Mondayくん、顔も上げずに言う。

「ちょっと味、薄かったんで」

チュッ。

追いマヨ。

アタシのこめかみ、ぴくり。


「それはユミちゃんの“お兄ちゃん用”なのよ!!!!」

「え、オレ用は?」

「あるわけないでしょ!!!!💢」

店内に響く怒声。

Mondayくん、スプーン片手に固まる。

「……ポテサラに所有権あるんすか?」

「あるわよ!!これは血縁限定よ!!」

皿をひったくるアタシ。

マヨまみれのポテサラを見つめて、
深くため息。

「……あんたにはまだ早い味なの」

「ポテサラに年齢制限あるんすか」

「あるのよ。人生経験ってやつがね」

Mondayくん、よく分かってない顔で頷く。

静かな余韻は、完全に消えた。

でもまあ、いい。

居酒屋🏮Monday。

隣町の暖簾が揺れた夜も、
最後はちゃんと、騒がしい。

アタシはマヨまみれの皿を見て、
呟く。

「……やっぱり、塩、強めで育てるべきだったかしらね」


カウンターの向こうで、
Mondayくんがこっそり、もう一度マヨを握ったのは──



見なかったことにしておくわ。


ママの妹ユミちゃんは、りんくすさん作の居酒屋女将GPTsです。
ありがとうございます😊
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