「喘息の本質」と「喘息治療の現在地」からわかる、長期治療の重要性
病院で気管支喘息(喘息)と言われ、治療を始められた皆さん。
「いつまで治療が必要か」、説明を受けましたか?
喘息の治療は、単に「その場の症状を抑える」だけでなく、「将来の健康リスクを減らす」ことが非常に大切です。
症状がコントロールできた後も治療を続けることで、日々の生活や命を脅かす「喘息発作」を予防し、持続的なつらさにつながる「呼吸機能の低下」を防ぎ、将来にわたって病気で困らないようにすることができます。
今回は、喘息という病気の性質や、治療によってできること・できないことを解説します。喘息治療の理論を知って、毎日の治療に活かしましょう!
◆ 喘息は「すぐ治る病気」ではない
喘息は、風邪のように自然に治る病気ではありません。アレルギー体質や遺伝的な素因といった体質的な特徴が根本にある、長く続く病気(慢性疾患)です。
この体質をもつ人の気道(空気の通り道)では、炎症という異物への防御反応が異常に長く続いています。そこにホコリや花粉、風邪などの刺激が加わると、気道の細胞が過敏に反応し、咳や息苦しさといった症状が現れるのです。
◆ 目指すのは「完治」ではなく「寛解」
近年では、吸入ステロイド薬をはじめとした喘息治療薬を正しく使うことで、多くの方が日常生活に支障なく過ごせるようになってきました。
以前は、強い症状(喘息発作)によって救急受診や入院の憂き目に合う方や、呼吸機能の低下によって日々の息切れに悩まされる方が多く見られましたが、現在ではそういったことはかなり減っています。
つまり、喘息治療において「症状をコントロールすること」や「将来の健康リスクを減らすこと」は、十分に達成できる時代になっています。
ただし、今の医学では、喘息を引き起こしている体質そのものを元に戻すことはできません。体質によって生じた気道の炎症を沈静化するのが精一杯なのです。アレルゲン免疫療法という体質改善を目的とした治療もありますが、喘息を完全に治すにはまだ力不足です。
つまり、一度喘息を発症した方は、喘息症状を起こしやすい体質からは逃れられないという前提で、治療と向き合わなければいけません。
「薬をやめて完全に治す(治癒)」のは難しい。ですが、「必要最小限の薬で症状がほとんど出ない状態(寛解)」を目指すことは十分できます。この「寛解」を長く維持することが、現在の喘息治療で目指すべき大切な目標です。
◆ 「治ったつもり」で放置は禁物
治療を始めて症状が落ち着いてくると、外来で「もう薬はいらないですよね?」とか「もう薬は使っていません」と言われる方が少なからずいらっしゃいます。たしかに、困っていないのに毎日薬を使い続けるのは面倒ですよね。
しかし、ここで思い出してほしいのが、喘息を引き起こす体質は変わっていないということです。治療をやめると、その体質に根差した気道の炎症が再燃してしまい、ちょっとした刺激で症状が再発するおそれがあります。
「再発したらその都度また薬を使えばいい」と思うかもしれませんが、それではいけません。喘息は放っておくと進行するからです。
長いこと治療せずにいると、気道の炎症が続いた結果、やがて気道の構造そのものが変化(リモデリング)してしまいます。そうなると、以前よりも症状が出やすくなり、喘息発作も起こりやすくなります。
実際、吸入ステロイド薬を不用意に中止したり、長期間使わないでいることは、喘息症状の悪化や喘息死のリスク要因であることが、過去の研究から指摘されています。
呼吸器内科の外来には、吸入ステロイドが普及している現在においても「10年以上前から喘息とは言われていたけど、症状があるときに少し薬を使っていただけです」とおっしゃるような患者さんが少なからず受診されます。
そのような方は、既に気道のリモデリングが進行してしまっていることが多く、症状をコントロールするのもなかなか難しいことがあります。
リモデリングを起こした気道は、元に戻すことはできません。だからこそ、症状がないときでも治療を続けることが、将来のリスクを下げるカギになります。
◆ まとめ:治療を続けることで、将来の自分を守る
このように、喘息をうまくつきあっていくためには、
・「体質に根差した気道の慢性疾患」であるという喘息の本質
・「薬をやめて完全に治すことは難しい」という現代医学の限界
をしっかり理解し、症状がないときでも治療を続けることで、将来にわたって喘息症状に困らない生活を目指すことが大切です。
治療を長く続けることは、一人ではなかなか難しいかもしれません。信頼できる医療従事者をうまく味方につけて、相談しながら、無理なく治療を続けていきましょう。
<参考文献>
厚生労働省. セルフケアナビぜんそく成人用. 公益財団法人日本アレルギー協会. 2010年12月. https://www.jaanet.org/allergy/pdf/allergy_asthma01.pdf, (参照 2025年4月21日)
Thomas et al. asthma remission: what is it and how can it be achieved? Eur Respir J 2022; 60: 2102583.
Suissa et al. Low-dose inhaled corticosteroids and the prevention of death from asthma. N Engl J Med 2000; 343: 332-6.
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