自由の女神~2025ヴィクトリアマイル・鞍馬S・新潟大賞典・競馬小説カフェ・ド・イーグル~
■ 女神
2025年5月16日(金)午後8時
-岩手県某市早起村 カフェ・ド・イーグル-
バータイムのカフェ・ド・イーグル。時計は短針が8の数字にちょうど重なったころだった。
「貫ちゃんが来る前に、ここまでの見解をまとめておきましょう」
ミスターがみんなを見回していった。みんなが頷く。貫一郎は今日、引っ越しの仕事が入り遅くなるということが、ケチャ子を通じて知らされていた。
「昨日発表されたヘッドライン。ラヴェルが浮上しますね」
(第20回)ヴィクトリアマイル ヘッドライン
「薫る風の彼方から優美な女神が駆け抜けてくる。」
2015(第10回)ヴィクトリアマイル
「戦い続けてきた美しき女神、最高の笑顔の瞬間を迎えたい。」
【3枠5番】ストレイトガール ※翌年【連覇】
(戸崎圭太・藤原英昭・廣崎利洋HD)
【3枠5番】ラヴェル
※津村明秀は勝てばヴィクトリアマイル【連覇】
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2019(第80回)オークス
「可憐に咲き誇れ、強靭な美しき女神が降臨する。」
(ラヴ)ズオンリーユー
(Mデムーロ・矢作芳人・DMM)
2着:カレンブーケドー(ル)(津村明秀)
2025(第20回)ヴィクトリアマイル
(ラヴ)ェ(ル)(津村明秀・矢作芳人)
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ケチャ子がいった。
「2012年以降でヘッドラインに『女神』登場は三回目。一回目はちょうど10年前、今年同様区切りの第10回ヴィクトリアマイル。勝ったのは翌年連覇することになる3枠5番ストレイトガール…連覇と3枠5番。重なるのが津村明秀のラヴェル」
イカ社長が頷いて続く。
「その次がラヴズオンリーユーのオークスだな。こちらも第80回という区切りの開催。ラヴェルと同じ矢作芳人厩舎で、勝ち馬の頭2文字が『ラヴ』、2着馬の末尾が『ル』で津村明秀。ラヴェルはこのオークスの1.2着馬を完璧に合体させた馬っつうこった」
(ラヴ)ズオンリーユー(矢作芳人)
2着:カレンブーケドー(ル)(津村明秀)
【3枠5番】(ラヴ)ェ(ル)(津村明秀・矢作芳人)
聖子ママが続いた。
「ラヴェル自身が戦歴に『女神』を持っているのも見逃せない点だったわね。最初の重賞勝利であるアルテミスステークス。アルテミスは特別レース名解説によると、ギリシャ神話に登場する狩猟と純潔の女神」
ヴィクトリアマイル ヘッドライン
「薫る風の彼方から優美な女神が駆け抜けてくる。」
2022 アルテミスS(=狩猟と純潔の女神)
1着:8-10 ラヴェル
2着:3-03 リバティアイランド(≒自由の女神)
店内に沈黙が降りた。
この考察をするにあたり、リバティアイランドの名前にたどり着くことは不可避だ。
香港で星となり、日本には遺骨という残念なかたちで帰国した三冠馬リバティアイランド。その遺骨は、故郷である北海道の墓碑で眠ることになるという。
ミスターが沈黙を破るべく、重い口を開く。
「Club JRA-Netからきたメールの件名にも、『勝利の女神』という文言があります」

「リバティアイランドは三冠牝馬ですから来週のオークスの予告なのかもしれませんが、ここまで強調してるとなると、今週やるのかもしれません。3枠5番…リバティアイランドのオークスゼッケンでもあります」
2023 オークス
3-05 リバティアイランド
ヴィクトリアマイル
(3-05)ラヴェル
■ マディソンガール
「そういえばさっきのアルテミスステークス。リバティアイランドは3番だったわよね?」
みんなが発言者のケチャ子をみた。
「明日のあずさ賞。マディソンガールのゲートを見て!」
5/17(土)
京都9R あずさ賞 10頭
7-(08)マディソンガール(逆3)
※母ヤンキーローズ・リバティアイランドの半妹
2022 アルテミスS(=狩猟と純潔の女神)
1着:8-10 ラヴェル
2着:3-03 リバティアイランド(≒自由の女神)
みんながなるほどと頷いた。
リバティアイランドは全12戦。8番に入ったことはない。3番はラヴェルの2着に敗れたアルテミスステークスと、一冠目の桜花賞勝利ゲートだ。
ミスターがいった。
「逆番なのがちょっと弱いですが、妹のマディソンガールを使って、アルテミスステークス示唆ということなのかもしれません」
■ 貫一郎のお土産
そのとき、息を切らしながら入ってくる客がいた。作業服姿の貫一郎だった。引っ越し現場から直行したという。
「いやー、遅くなっちゃいました。とりあえず生で! トイレ行ってきます」
貫一郎の指定席はカウンター右端、イカ社長とは真逆の位置になるが、そこに荷物を置くのももどかしかったようで、大きなビニール袋をイカ社長の右の席に置いてトイレに入っていった。
「おお。また何かお土産をもらってきたようだぜ」
イカ社長が貫一郎の許可も得ず、ビニール袋の中身をガチャガチャとかき回し始めた。
便利屋稼業の貫一郎は、遺品整理や引っ越し業務のときに、捨てるなりもらうなり自由にしてくださいと、いろいろな物をもらってくることが多い。今回は、大量のゲームソフトをもらってきたようだった。
「こ、これは!」
イカ社長はひとつのゲームソフトを上着の内ポケットにしまうと、腕を組んで目を閉じた。何か大きなヒントを得たらしい。
■ 競馬学校の真実
トイレから戻った貫一郎は、イカ社長がゲームソフトをいじっていたことをケチャ子から聞かされたが、まったく意に介さない様子だった。喉をゴクゴクと気持ちよく鳴らし、生ビールはすでに残りわずかとなっている。
数分後、貫一郎が2杯目の生ビールを数口飲み、人心地ついたのを確認してイカ社長が口を開いた。
「俺たちは木を見て森を見ずだったかもしれねえぜ」
なんのことと問うケチャ子に、競馬学校の動画だとイカ社長は答えた。みんながスマホやパソコンで二回分の競馬学校動画を見直した。
「うーん・・・・いまいちよくわからないですね」
そう貫一郎は首を捻ったが無理もなかった。そもそもイカ社長の質問が曖昧で、何を言わんとしているのかわからない。
「出題者だよ。2本の動画を通して、出題者は一貫してるだろ?」
「石川裕紀人…でしょ?」
ケチャ子の問いにイカ社長がニヤリと笑う。
「そう! 石川がクイズを出している! これがキーワードだったんだ!」
イカ社長が内ポケットから出したゲームソフトを見て、ミスターと聖子ママがおおという声を挙げた。だが、年代が違うケチャ子と貫一郎には通じていない。
ゲームソフトは、ゲームボーイ版の『アメリカ横断ウルトラクイズ』だった。

ポカンとしているふたりにミスターが説明する。
「アメリカ横断ウルトラクイズ。1970年代後半から1990年代にかけて、人気を博した日テレのクイズ番組です。合言葉は…」
「ニューヨークへ行きたいかーー!!」
イカ社長と聖子ママが右手を高くつきあげながら叫び、ミスターを含めた三人が笑った。
「ニューヨークといやあ、ミスニューヨーク。ヴィクトリアマイルに一度だけ出走があるぜ」
2022
第17回 ヴィクトリアマイル
(3-05)ソダシ
10着:6-12 ミスニューヨーク
2025 ヴィクトリアマイル
(3-05)ラヴェル
「ミスニューヨークを介してソダシとつながることはわかりました。石川はどうつながるんですか?」
貫一郎の言葉に、ミスターはそうだったと説明を再開する。
「アメリカ横断クイズは、日本から海外へと旅をしながらクイズを行うのですが、スタジオからの放送は高島忠夫と日テレの石川牧子アナが担当してたんです。ほら、ヴィクトリアマイルの1番にちゃんと石川がいるでしょう?」


ヴィクトリアマイル
1-01 クリスマスパレード(石川裕紀人)
2022 チャンピオンズC
(3-05)ジュンライトボルト(石川裕紀人)
※石川裕紀人 GⅠ初勝利
2025 ヴィクトリアマイル
(3-05)ラヴェル
ケチャ子と貫一郎にも、やっと意味が通じてきたようだった。聖子ママが続く。
「アメリカ横断ウルトラクイズがキーワードなら、JRAホームページのトップ画像の構図も納得だわ」

「観客が映っているレアな構図。これって後楽園での○×クイズよね、社長さん?」

「そういうこった。後楽園での○×クイズといやあ、第1問は自由の女神に関連する問題と決まってらあ…つまりはリバティアイランド。競馬学校動画は結局のところ、リバティアイランドを教えてくれてるってわけさ」
■ グリーンビッグドール
その後も、ミスター、聖子ママ、イカ社長からアメリカ横断ウルトラクイズの歴史について説明を受けたケチャ子と貫一郎は、やっと今回のシナリオの全貌が見えてきたようだった。
「自由の女神・・・それで堀田茜だったのね!」
ケチャ子の発見について、今度はイカ社長らがレクチャーを受ける番となった。
「いい? 明日新潟大賞典のプレゼンターに堀田茜が来るの」

みんながうんうんと頷く。
「彼女って出川ガールズのひとりなのよ」

「アメリカ横断ウルトラクイズと同じ日テレの『イッテQ!』。出川が出川イングリッシュを駆使して、自由の女神までたどり着けるかっていう名作があるじゃない!」

みんながおおという声を挙げた。
日テレの長寿番組『世界の果てまでイッテQ!』。人気企画のひとつが、出川イングリッシュが爆笑を呼ぶ、ミッションクリア物の『出川哲朗はじめてのおつかい』だ。
自由の女神まで行くミッションでは、自由の女神を『ビッグ・グリーン・ドール』と表現したり、外国人が発音した『スタチュー・オブ・リバティ(自由の女神)』を『スタジオエブリ』と聞き間違えたりするくだりがある。
■ ジャストミート
「JRAホームページトップ画像、競馬学校動画、堀田茜…すべてがつながってきましたね」
ミスターがいった。
「赤枠に入ったラヴェル。キムラハヤオさんからいただいたお題、『ビクトリア、マイル(参る)』ともつながりました」
キムラハヤオさんのnote
キムラハヤオさんのお題、『ビクトリア、マイル(参る)』とは、盛岡市とカナダのビクトリア市が姉妹提携40周年を迎えるにあたり、記念ビールを製造したという話題だ。
「赤の3枠に入ったラヴェル。NHKニュースに、ちゃんと赤いラベルとありますよ」


みんながおおという声を挙げた。イカ社長がとどめを刺す。
「アメリカ横断ウルトラクイズといやあ福留功アナ。それを引き継いだのがジャストミートの福澤朗。衣装は赤だっただろう?」

ヴィクトリアマイル
3-05 ラヴェル
みんながなるほどと声を挙げ、満場一致でカフェ・ド・イーグルの本命馬が決まった。
カフェ・ド・イーグル
ヴィクトリアマイル 本命馬
◎5番 ラヴェル
■ 鞍馬ステークス
10分間の休憩後、明日は京都の鞍馬ステークスが面白そうだと聖子ママがいった。
1番と2番で「七五三」ができているという。
5/17(土)
京都11R 鞍馬S
1-01(ナナ)オ
2-02 アナ(ゴサン)
→ 七五三
「なるほどなあ・・・そっからどう読むんでい?」
イカ社長の問いに聖子ママが答える。
「七五三といえば千歳飴でしょ? おあつらえ向きに生産地が千歳の馬が一頭だけいるのよ」
鞍馬S
3-03 バンデルオーラ(産地:千歳市)

「へえー! 前走3着なのにフロック視されてるのか人気がないわね」
興味を示したケチャ子がいった。
「そうなのよ景子ちゃん。あたしはこの馬から手広く流してみるわ」
カフェ・ド・イーグル
鞍馬S
◎3番 バンデルオーラ
馬連・ワイド:3-6(本線)
馬連・ワイド:3-1.2.7(押さえ)
■ 新潟大賞典
新潟大賞典は1番がキーホースではないかといったのは、貫一郎だった。1番カネフラが、さきほど出てきた千歳市の生産馬だという。
<5/17(土)3場メイン 産地:千歳市>
新潟11R 新潟大賞典
1-01 カネフラ
6-11 サイルーン
8-15 ボーンディスウェイ
東京11R 六社S
1-01 エイカイマッケンロ
京都11R 鞍馬S
3-03 バンデルオーラ
「新潟と東京の1番がいずれも千歳市の生産馬。1番カネフラには『カフネ』があるんです」
ピンと来ていない者が多い中、ミスターが気づいていった。
「ええと、貫ちゃん。それって本屋大賞受賞作でしたでしょうか?」
貫一郎が大きく顎を引く。

「そうなんです、ミスター。著者は阿部暁子。なんとなんと、岩手県花巻市出身なんです。キムラハヤオさんからいただいた岩手県ネタ。ここにもつながるのかなって・・」
みんながなるほどと頷いた。
「それでですね、当然調べるのは阿部姓の馬主。明日はなんと一頭だけなんです!」
<5/17(土)阿部姓馬主>
京都1R
6-06 ヒシカリナン(阿部雅英)
新潟大賞典 16頭
1-01(カネフ)ラ
3-(06)マイネルメモリー(正22)
(第22回)本屋大賞
(カフネ)(阿部)暁子
みんながおおという声を挙げた。ミスターが援護射撃を出す。
「それはいいですね、貫ちゃん! マイネルといえば春天に出たマイネルエンペラーが怪我をしたニュースががありました。春天は11番ゲート。マイネルメモリーは逆11番です!」
天皇賞(春)
6-11 マイネルエンペラー(丹内祐次)5着
※5/16 JRAニュース 左第1指骨剥離骨折の報道
新潟大賞典 16頭
3-06(マイネル)メモリー(丹内祐次)(逆11)
「なるほどなあ・・エンペラー故障のニュースは日本人にとっちゃあ気になる話題だ」
イカ社長がポンと手を叩いていった。
「みなさんどうぞご心配なくと、同じマイネル、同じ丹内祐次で一発あるかもしれねえぜ」
みんながうんうんと頷き、カフェ・ド・イーグルの勝負馬券が決まった。
カフェ・ド・イーグル
新潟大賞典 勝負馬券
◎6番 マイネルメモリー
単複:6番
■ 編集後記
徒歩通勤をきっかけに始めた、オーディブル(Amazon)でのオーディオブック生活。そろそろ1年半ほどになります。
たまたま昨日聞き始めたのが、第22回本屋大賞受賞作である、阿部暁子さんの『カフネ』でした。
そんな偶然もありますが、今週大きかったのはなんといってもキムラハヤオさんとのエールの交換。
note再開理由。
— キムラハヤオ (@kimurahayao) May 14, 2025
実は私、精神的に死んでたですが、ファイナライズさん(@finalizekeiba)が寸暇を惜しんで連日長文note投稿をしているのに俺一体何やってるの?と思ったからです。
お礼を兼ねて詳しい顛末を書こうと思ってたですが、再開したら、頭がグルングルン回り出して、有耶無耶になりそう。
競馬サイン読みプレーヤーのレジェンドといってよいキムラさんに、この競馬小説から刺激を受けたといってくださり、長く続けて来て本当によかったなと感慨深いものがありました。
内館茂盛岡市長が、姉妹提携を結んでいるカナダのビクトリア市を訪問する(参る=マイル)というニュース。私のアンテナには引っかかっていないものでした。
先週は奥州市出身の大谷翔平ことショウヘイが京都新聞杯を勝ち、今週は奥州市に隣接する花巻市出身の阿部暁子さんが新潟大賞典を教える。そんな妄想を抱いています。
さてさて、当たりを掴めているでしょうか。
素敵なインスパイアと、創作意欲のパワーをくださったキムラハヤオさんに、改めて感謝申し上げます。
そしてそして、いつも応援してくださっているみなさん、ありがとうございます!
毎週100%とはいかないでしょうが、これからも毎週、持っているものを出し切っていきます!
今後とも応援よろしくお願いします!!
