営業は「売る仕事」ではなく「人を助ける仕事」だと思う
前回、雨の日に社長が駅前でティッシュを配っていた話を書きました。
あの日、私の心が動いたのは、社長が何かを売っていたからではありません。
社員を守るために、誰かに任せず、自分の足で駅前に立っていたからです。
その姿を見て、私は「この人について行こう」と思いました。
今振り返ると、私が営業を「人助け」だと考えるようになった原点は、あの光景にもあったのかもしれません。
営業は「売り込む仕事」なのか
営業と聞くと、多くの人は「売り込む仕事」を思い浮かべると思います。
数字を追い、商品を説明し、契約を取る。
もちろん、それも営業の一部です。
仕事である以上、結果は必要ですし、数字を作らなければ会社は続きません。
利益がなければ、人を助け続けることもできません。
でも、営業の本質は「売ること」だけではない、と私は思っています。
営業とは、目の前の人が何に困っているのかを知る仕事です。
何に不安を感じているのか。
本当はどうなりたいのか。
何が整理できずに止まっているのか。
そこを一緒に見つけて、前に進むきっかけを作る。
それが営業の本質だと、私は考えています。
売れる時は、自分が話している時ではなかった
私は若い頃から、人と話すことが好きでした。
接客が好きで、お客様との会話が楽しかった。
ありがたいことに、販売の仕事では結果も出せました。
毎月数字を追い、目標を達成し、現場で売ることに必死でした。
綺麗な営業だけをしてきたわけではありません。
泥臭く動いて、足で稼いで、断られてもまた声をかける。
いわゆるドブ板営業のようなことも、ずっとやってきました。
だからこそ、営業の大変さも、数字を追う苦しさも、現場で結果を出す厳しさも、少しは分かっているつもりです。
ただ、当時の私は「なぜ売れているのか」を、今ほど深くは考えていませんでした。
話すのが好きだから。
商品説明ができるから。
勢いがあるから。
そのくらいに思っていた部分があります。
でも、長く現場に立つうちに、少しずつ考え方が変わっていきました。
売れる時というのは、こちらが一方的に話している時ではありません。
相手が安心して話してくれた時。
相手の不安が少し軽くなった時。
「この人になら聞いても大丈夫そうだ」と思ってもらえた時。
そういう時に、結果として商品やサービスが選ばれるのだと思います。
営業で大切なのは、相手を言い負かすことでも、説得しきることでもありません。
相手を理解しようとする姿勢です。
笑顔で接する。
きちんと挨拶をする。
相手に敬意を持つ。
話を遮らずに聞く。
相手の立場で考える。
どれも特別なことではありません。
でも、仕事に慣れてくると、この当たり前が崩れてしまうことがあります。
私自身、きれいな営業ができていたわけではない
数字を追いすぎる。
契約を急ぎすぎる。
自分の都合を優先してしまう。
そうなると、相手を見る前に、売ることだけを考えてしまいます。
その瞬間、営業は人助けではなく、押し売りに近づいてしまうのだと思います。
私自身も、最初からきれいな営業ができていたわけではありません。
結果を出すことに必死で、数字を作ることだけを優先してしまった時期もありました。
自分の「売る力」に頼りすぎていた時期もあります。
今振り返ると、もっと相手の気持ちを見られたはずだ、と思う場面もあります。
だからこそ、今は強く思います。
営業は、売るための技術だけでは足りない。
人と向き合う姿勢がなければ、長く続く信頼は作れない、と。
売り込まれるのが好きじゃないから、売り込みたくない
正直に言うと、私は売り込まれるのが好きではありません。
だから、自分も売り込みたくないんです。
もちろん、仕事なので提案はします。
必要だと思えば、はっきり伝えます。
相手にとって必要だと感じれば、背中を押すこともあります。
でもそれは、契約を取るためではなく、その人やその会社にとって必要だと思うからです。
逆に、本当に必要ないと思えば、無理に勧めません。
合わないものを売れば、その場では数字になるかもしれません。
でも、信頼は残りません。
営業は、一度の契約で終わる仕事ではないと思っています。
一度の会話。
一度の対応。
一度の気配り。
その積み重ねが、後になって信頼になる。
そして信頼があるから、次の相談が生まれ、紹介が生まれ、長い関係が生まれる。
私は、営業とはそういう仕事だと思っています。
「売り込むのが嫌」な人こそ、営業に向いている
今、私は販売力向上のコンサルティングや営業研修に関わっています。
そこで伝えたいのも、単なる売り方ではありません。
どう話せば売れるのか。
どんなトークで契約が取れるのか。
そういう技術も、もちろん大切です。
でも、その前にもっと大切なことがあると思っています。
目の前の人に敬意を持てているか。
相手の話をちゃんと聞けているか。
自分の都合ではなく、相手のために考えられているか。
営業力とは、言葉の上手さだけではありません。
相手と向き合う力であり、相手の気持ちを受け取る力であり、相手が前に進む一歩を一緒に考える力だと思います。
営業が苦手だという人の中には、「売り込むのが嫌だ」と感じている人が多いように思います。
私は、それを悪いことだとは思いません。
むしろ、その感覚は大切です。
売り込みたくない。
無理に契約を迫りたくない。
相手に嫌な思いをさせたくない。
そう思える人は、本当は営業に向いているのかもしれません。
相手の気持ちを考えられる、ということだからです。
営業を「売り込むこと」だと思うと、苦しくなります。
でも、「人を助けること」だと考えると、少し見え方が変わります。
相手の悩みを聞く。
困っていることを整理する。
必要な情報を伝える。
選択肢を一緒に考える。
それも、立派な営業です。
最後に
営業は、数字を作る仕事です。
でも、それだけではありません。
人の不安を軽くする仕事。
人の悩みを整理する仕事。
人が前に進むきっかけを作る仕事。
私は、そう信じています。
もし今、営業が苦しいと感じている人がいるなら、「どう売るか」よりも先に、「誰の、何を助けるのか」を考えてみてほしいです。
そこが見えた時、営業は少し違う仕事に見えてくると思います。
私自身も、まだまだ悩みながら仕事をしています。
それでも、営業は人を笑顔にできる仕事だと信じています。
だから私は、これからも営業を「人助け」として伝えていきたいと思っています。
私は、営業の相談をされても、いきなり売り方の話はしません。
まず聞くのは、「今、何に困っていますか」です。
売る前に、整理する。
提案する前に、相手を知る。
もし今、営業や人材育成で整理したいことがある方は、その入り口だけでも一緒に考えられたらと思います。
次回は、結果を出すことに必死だった頃の自分を振り返りながら、「厳しさ」と「育成」を勘違いしていた時期について書いてみます。
