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願いの叶いさき| #せりふ三題噺

「見て、光ってる」

宇宙を見ているみたいに、ゆっくりと緑がかった黄色の蛍光色がふわりと漂うように光っていた。

星の呼吸のような光り方だった。

水が川床の石を避けるように流れ、石の縁をさっと撫でるような、細い音が続いていた。

携帯電話をとり出して写真を撮ろうとする娘に
やんわりと注意した。

「それはダメだよ。ホタルは強い光も嫌うんだ」

「ここに来る前に虫よけスプレーや制汗剤なんかの、匂いが強いものもつけて来るなって言っただろう?隠れちゃうんだよ」

娘は少し不満そうな顔をして、
小さな文句を言っていた。

「ホタルが苦手なんだよ」

そういいながら、娘に言いかけた言葉を飲み込んだ。

-星も蛍も、少し離れた距離から見てるから、
綺麗に感じるんだよ-

無数の光のスジが、私たちの足のまわりを
不規則な軌道を描きながら動いていた。

写真に撮るより、この時間を少しでも
記憶に焼き付けてほしいと、
不規則に流れる光に願っていた。

これが娘との最後の外出だった。

一人っきりになり、しばらく経った。

強い匂いが苦手だったが、娘の好きだった
香りのディフューザーが焚かれていた。

冬になり寒さが身に沁みた。
夜に温かいスープを飲んだ。

窓から見える景色は色んな色の光に溢れていた。
強い光、弱い光
規則正しい光、不規則な光

この場所から見える街のイルミネーションは、
淡く、チカチカと慌しい光を放っていた。

あの下には、人が沢山隠れている。

瞼を閉じると、あの子の顔が浮かんだ。
ちかちかと断片的な表情しか思い出せなく
なっていた。
頬を撫でるように暖かさが溢れ落ちた。

目を閉じたまま、
彼女が消えないように願っていた。

手にしたスープがすっかり冷えたころ、
瞼を開けた。

視界にあの蛍のような淡い光の残像が
ゆっくりと漂っていた。

夜空を見上げた。
遠くに光が淡く見える。

遠すぎる星はいまにも消えそうだった。


▼今週のお題
■セリフ
「見て、光ってる」
■三題
・宇宙
・スープ
・虫よけ

→はらとけい様
提出が遅くなり、申し訳ありません。
参加させていただきました。
よろしくお願いします。

▼投稿ルール
投稿締切(任意):2026年5月21日(木)23:59
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