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娘が教えてくれた、本気で走る人生。


こんなにも長く、人生に関わるとは思わなかった。
ただ習い事として始めたはずのサッカーは、気がつけば娘の人生の軸となり、そして私の人生までも大きく動かしていた。

小さな体で、大きな世界に飛び込んだ日。

サッカーをしていたのは娘。
でも、人生を広げてもらったのは私でした。

そんなふうに思えるまでに、
気がつけば長い年月が流れていました。

娘がサッカーを始めたのは3歳の頃。
テニスとサッカー、どちらを続けるか選ばせた——

人見知りだった娘は、
きっとテニスを選ぶだろうと思っていました。

けれど娘が迷わず指差したのは、サッカーでした。

男の子ばかりのスクール。
それでもコーチは、驚くほど子どもを褒める人でした。

褒めて、褒めて、褒めちぎる。

だからスクールはいつも大人気。
子どもたちはみんな、誇らしそうな顔をしていました。


小学校に上がり、
保育園のママ友に誘われてチームへ入団。

けれど最初の娘は——

ボールではなく、砂を触っていました。

それでもコーチは何も言わず、
ただ静かに待ってくれていました。

2ヶ月後。
娘は笑いながらボールを蹴っていました。

あの光景は、今も私の中で色褪せません。

はじめて“楽しい”が芽生えた日。

男の子しかいないチーム。

悔しい思いも、たくさんしたはずです。
それでも娘は6年間続けました。

スクールを掛け持ちし、塾にも通う。
小学生とは思えないほどストイックでした。

気づけばスクールでは、
ちょっとした有名人に。

「誰あの子?」
「あいつ上手くない?」
「チクショー!また取れなかった!」

そんな声が聞こえてきたこともありました。

もしかしたら——
サッカー選手になるのかもしれない。

本気でそう思ったこともあります。

でも、すぐに知ることになります。

上には上がいる。

それがスポーツの世界でした。


小学生の頃、女子チームにも所属しました。

なかなか勝てないチーム。
それでも——たった一度だけ、勝った試合があります。

コーナーキック。

ふわりと上がったボールに、娘が飛び込む。

ヘディングシュート。

ゴール。

その瞬間、
親も子どもも、みんな泣いていました。

たった一勝。

でも、忘れられない一勝でした。


仲間がいたから、強くなれた。

中学入学時、娘の身長は140cm。
卒業する頃には160cmになっていました。

あの小さくて可愛かった娘は、
もうそこにはいませんでした。

中学受験をしながらクラブチームへ通い、
都内の学校生活と両立。

決して順風満帆ではありませんでした。

それでも最後のフットサル大会で優勝。

みんなで泣きました。

努力が報われる瞬間を、
初めて目の前で見た気がしました。


高校は内部進学ではなく、外部受験。

理由はただ一つ。

サッカーを続けるため。

仲間とのすれ違い。
チーム内の不満。
コーチへの葛藤。

サッカーノートには、悔しさが並んでいました。

それでもコーチは言い続けたそうです。

「チームの柱になれ」
「もっと欲を出せ」

その言葉の意味を、
娘はきっと最後に理解したのだと思います。

本気で走り続けた、その先に。

激戦区のリーグ。

ずっと3位、4位。

そして迎えた三年最後のリーグ戦。

優勝。

決定点を決めたのは——
エースナンバーを背負った娘でした。

上位リーグへの挑戦権も獲得。
そして見事、参入。

大学の入試を受けながらのことでした。




納会は涙、涙。

娘の最後の挨拶は
「頼りないエースでごめん。」
「凄く良いメンバーに恵まれて幸せなサッカー人生でした。」
「バトンは繋いだよ!」

後輩たちからは
「そんなことありません!先輩がいなくなったらどうすればいいか…涙」
「まだ一緒にやりたいです…涙」
「試合見に来てください!絶対ですよ!」

そんな声が上がっていました。

リスペクトの嵐でした。

ああ、やり切ったんだな。

そう思いました。

終わりじゃない。
ここから、それぞれの未来へ。

コーチが試合前に言ったそうです。

「すべてはN(娘の名前)から始まった。
偶然じゃない。必然だ。
だからリーグ戦は取りに行くぞ!」

このことを後輩達から
教えていただきました。

胸がいっぱいになりました。

娘を見つけてくれて、
育ててくれて、
信じてくれて——

感謝しかありません。


大学生になった娘は、
サッカーとは違う、新しい夢に向かっています。

もう、あの頃のように
試合の応援に行くことはありません。

週末ごとにグラウンドへ向かうことも、声が枯れるほど名前を呼ぶこともありません。

少しだけ、寂しい。

でも——

娘の人生は、これからも続いていく。

次に追いかけるのは、もうサッカーボールではない。自分で選んだ、新しい夢。

私はきっと、これからも変わらず応援し続けるだろう。

ゴールの外からではなく、人生という長いフィールドの外から。

娘がサッカーを続けてくれたから、私はこんなにも豊かな時間を生きることができた。
その意味を、今、やっと理解しています。


たくさんの景色を見せてくれた。
たくさんの人に出会わせてくれた。

娘には、感謝しかありません。

そして今、心から思います。

子どもが本気になれるものに出会えたなら、
それは親にとっても、人生の宝物になる。

勝ち負けではない。
結果だけでもない。

本気で走った時間は、
必ずその子の人生を支えていく力になる。

そしてきっと——
親の人生までも、豊かにしてくれる。





すべての時間に、ありがとう。

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