医療的ケアが必要な子どもたちの育ちと発達
― 身体・呼吸・姿勢から考える支援の視点 ―
はじめに
今回、札幌市の医療的ケア児支援者養成研修にてお話しする機会をいただきました。
北海道子ども総合医療センター(通称:子ども病院)で、リハビリテーション科および地域連携・在宅支援に携わっている理学療法士の西里です。
本記事では、
子どもの「育ち」と「定型発達」
医療的ケアが必要な子どもたちに見られる発達の特徴
呼吸・姿勢・摂食嚥下といった身体面からの具体的な支援
について、研修内容をもとにまとめています。
医療的ケア児を取り巻く現状
日本では現在、2万人以上の子どもたちが、在宅で日常的に医療的ケアを必要としながら生活しています。
これは単なる数字ではなく、毎日強さを求められる家族の現実です。
医療的ケアの定義と増加
医療的ケアという言葉は、2021年の法律で初めて明確に定義されました
この10年で医療的ケア児の数は2倍以上に増加
ケアの担い手
日常的な24時間ケアの約93%は母親が担っています
ケアは短期的なものではなく、成長とともに長期にわたって続くものです
ライフステージごとに変化する課題
医療的ケア児と家族は、成長段階ごとに異なる壁に直面します。
乳児期:在宅での医療的安定
幼児期:保育園・幼稚園との連携
学童期:学校・教育との調整
成人期:制度・法律の大きな切り替え
「18歳の壁」
18歳を境に、
児童福祉法 → 障害者総合支援法
へと切り替わります。
これにより
利用できていたサービスが突然使えなくなる
手続きを一からやり直す必要が生じる
という問題が起こります。
さらに、
子ども向けサービス:この10年で 82%増加
大人向けサービス:39%増加
と、移行期の受け皿不足が深刻です。
地域連携の好事例:大阪府豊中市
制度の壁を超える取り組みもあります。
豊中市の取り組み
医療的ケア児を支える看護師不足への対応
教育委員会と病院が連携
病院が看護師を雇用し、学校へ派遣
人件費は教育委員会が負担
成功のポイント
医療的指示を病院が一元管理
学校休業中も病院勤務が可能で雇用が安定
病院による研修で専門性を維持
「家族が背負う介護」から「社会で支える仕組み」への転換が重要であることを示しています。
子どもの育ちと定型発達の理解
発達の目安「3・6・9・12か月」
3か月:首が座る
6か月:腰が座り、お座り・寝返り
9か月:四つ這い、つかまり立ち
12か月:一人立ち・一人歩き
運動発達は、感覚・認知・情緒の発達と密接に関係しています。
医療的ケア児における発達の特徴
疾患と発達の関係
発達がゆっくり進む疾患
一度低下し、再び回復する疾患
徐々に機能が低下する疾患
増悪と回復を繰り返す疾患
発達段階「いつ」「どの時期に」起きたかを踏まえた支援が重要です。
機能分類の視点
GMFCS(粗大運動)
MACS(手の操作)
CFCS(コミュニケーション)
EDACS(摂食嚥下)
VFCS(視機能)
共通言語として多職種間の情報共有に役立ちます。
重症心身障害児に多い身体的特徴
筋緊張異常
呼吸障害
摂食嚥下障害
胃食道逆流
側弯・股関節脱臼
これらは相互に影響し合うため、単独ではなく包括的な視点が必要です。
呼吸への理解と支援
酸素飽和度(SpO₂)の考え方
SpO₂ 90%以下:呼吸不全の可能性
数字だけでなく全身状態を見ることが重要
換気障害の種類
閉塞性換気障害
拘束性換気障害
中枢性換気障害
多くの場合、複合的に存在します。
姿勢・ポジショニングの重要性
顎の位置調整
前傾姿勢・うつ伏せ
多様な姿勢を取ること
これにより呼吸状態が大きく改善することがあります。
摂食嚥下・胃食道逆流への対応
姿勢調整
食形態の工夫
医学的評価に基づく判断
必要に応じて
胃瘻造設
気管切開
喉頭気管分離術
などの医療的対応が検討されます。
医療とリハビリの組み合わせ
理学療法・日常ケア
薬物療法(ボツリヌス、ITBなど)
整形外科的治療
成長に合わせた適切なタイミングでの介入が重要です。
6つのF(Six F-words)
Function
Family
Fitness
Friends
Fun
Future
医療的ケア児にとっての「フィットネス」とは、
呼吸・循環を整え、安心して生活できる身体を保つこと。
その先に
家族との時間
社会参加
笑顔のある未来
があります。
おわりに
医療的ケアが必要な子どもたちへの支援は、
「治療」だけではなく、
日々の関わり・姿勢・呼吸・そして可愛がることが土台になります。
多職種が優しく連携し、
子どもと家族が地域で安心して暮らせる社会を目指していきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ご相談やご質問があれば、ぜひ気軽にお声がけください。
