益田ミリ(1969.1- )「ツユクサナツコの一生 第16回 まねき猫」『小説新潮』2022年7月号

『小説新潮』2022年7月号
新潮社 2022年6月22日発売
https://www.amazon.co.jp/dp/B0B2TW69V7
https://www.shinchosha.co.jp/shoushin/backnumber/20220622/


益田ミリ(1969.1- )
「ツユクサナツコの一生
第16回 まねき猫」
p.292-303
「連載のマンガ 決まらん
時々、地元のタウン誌で4コマ漫画描かせてもらってるし
インスタではずっとマンガ描いてるけど
ネットの連載て初めてやし
チャンスかも?
いやチャンスやろ!
ちょっと 散歩や
暑~っ ガリガリ君 食べたいなあ
かわいいなあ 小学校から私立か~
すごいな~ なんぼ かかるんやろ
じんせいには おみくじみたいなとこもあるて
お父さん言うてたけど
その前に なんか言うてたよな なんやったっけ?
あれ!? お久しぶりです
この店の前で会うなんてすごい偶然やねぇ 去年 ここでカキ氷たべてから もう一年か~
バイト、急に辞めはったし どうしてはるんかな思てました
今は夜、工場でパーとしてるんよ 今日もこれから仕事
そうなんですか
うちの人の仕事、ほらコロナでいろいろへってしもて
そのぶん給料も少ななって
あ――…… そうですか
この前、子供とケンカしたとき
「親ガチャ」言われて
なんのことかわからんで
当たりハズレがあるいう意味なんやってね
うちはハズレやて
あー
ほんでもわたし なんとも 思わんかったんよ
そのことのほうが なんやむなしいゆーか
わたしにどうしろ言うんやて
まねき猫でも買おかな
おなじとこに生まれ変わるんやったら
また似た人生になるやろ
ほんでも今日、
ここで一緒にカキ氷食べれたことはうれしいです
ただいまー
おかえり~ ナツコ すぐお弁当箱出しや
お母さん、わたしやっぱり 美大はアカンやんな
美大て 4年の? そうやなぁ~
4年はちょっと お金がなあ
お姉ちゃんも一緒やし ごめんやで
なんや 帰っとったんか 今日はカレーやで
「吾輩は……」 ツユクサナツコ
吾輩は猫であるが 人間になる薬を 手に入れたのである
正確に言うと人間風になれる薬なので、
吾輩はニャンゲンになったのである
吾輩は早速かねてから気になっていた
人間のカバンを手に入れたのである
なぜなら人間はカバンが好きだからである
吾輩のカバンには大量の紙[幣]が入っていたのである
どうやらこれで様々なものがゲットできるようで
部屋を手に入れ ヨギボー[米国製ビーズソファ]も手に入れ
それから 勉強して 学校へ行き 週休3日の会社に入り ソロキャンプをしたり 星のやに泊まったりしたあのである
しかし吾輩はニャンゲンだから
人間ほどには寿命がなく
それはもう仕方のないことで
自分なりにニャンゲンとしてがんばった自負もあるが
人生、いやニャン生を振り返って思うことと言えば
あのカバン げっとして ラッキーやった~
なのでありました
たまたまや
運なんや
吾輩は最後の力を振り絞って… ふーっ
[カバンを他の猫にあげる]
そして吾輩は よよよ
涼しい場所で静かに横たわり
感謝してこの世に別れをつげたのでありました
これは……
動物のほのぼのマンガ言う依頼に合致してんのか?
しとらんな
運、か~
努力ではどーにもならんことはあるわな
なんでもかんでも がんばりだけとはちゃうんやよな
ニャンゲンは感謝する心を持っとるな ええやつや
このマンガで連載は100%ムリやろけどな ははは
ドタッ ドタッ
おとうさん ごはんしよー
ちょうどマカロニサラダでけたとこや
ありがとう
ビール飲もか」
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「ツユクサナツコの一生
第1回 ガムマシーン」
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第15回 タンバリン」
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『永遠のおでかけ』
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益田ミリ(1969.1 - )
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『泣き虫チエ子さん 1-4』
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『沢村さん家のこんな毎日 平均年令60歳』文藝春秋 2014.5
『沢村さん家はもう犬を飼わない』2015.7
『沢村さん家の久しぶりの旅行』2017.6
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