少数民族のものづくりを辿る旅、マイチャウとパーコーを訪ねて
※本記事は2025年11月の訪問をもとに作成しています。
ベトナムの少数民族の製品を見ていると、
ふと立ち止まってしまうことがあります。
この模様はどこから来たのだろう。
この布は、どんな場所で、誰が作っているのだろう。
お店に並ぶバッグや服はとても魅力的ですが、
その背景には、作られた場所が存在しています。
村、工房、畑、染め場。
そしてそこには、誰かの暮らしがあります。
これまでいろいろなブランドや生産者の方に話を聞く中で、
何度も同じ名前が出てきました。
「マイチャウ」

ハノイから南西に約140km、車で3〜4時間。
山に囲まれた谷あいの地域で、
タイ族を中心に、モン族やムオン族など複数の少数民族が暮らしています。
織りや刺繍といった伝統技術が、
観光用ではなく、今も生活の中に残っている場所です。
今回は、そのマイチャウと、
さらに奥にある藍染めが有名な村、パーコーを訪ねました。
一泊二日の取材旅です。
マイチャウへ
今回は、ブランド
Chie dupudupa の創業者 Thuyさんの車で、
マイチャウへ向かいました。
少し前にハノイのお店を訪れ、
ブランドインタビューをさせてもらっていました。

店内に並ぶのは、
洗練されたデザインのアイテムたち。
ハノイでも人気のお土産ショップのひとつです。

話を聞く中で印象的だったのは、
単なる商品づくりではなく、
少数民族の女性の雇用や、技術支援を行っていること。
工場はゼロから立ち上げ、
何度も現地に通いながら、少しずつ形にしてきたそうです。
その話を聞いて、
実際の現場を見てみたいと思い、今回の訪問につながりました。

Hoa Ban+
マイチャウに到着して、まず訪れたのが
Hoa Ban+(ホアバン・プラス)です。
少数民族の女性たちとともに、
伝統技術を活かした製品づくりを行っている団体です。

Googleマップ: https://maps.app.goo.gl/HPK4tpizbGonXLQM8
👉 詳しくはこちら
https://fav-saigon.com/blogs/brandstories/hoaban
ここではホームステイも運営していて、
マイチャウに来るときは、いつもここに泊まります。
木造の高床式の建物は、
風がよく通り、とても心地いい空間です。

中心となっているのは、Thuanさん。
女性の雇用や技術支援に長く取り組み、
JICAや日本のNGOとも連携してきた方です。

今は一緒に商品開発も進めていて、
マイチャウのお母さんのような存在です。
小さな工場
そのまま、Thuyさん(Chie dupudupa)の工場へ向かいました。
最初に訪れたのは、
小さなハンドメイドの工場です。
ここでは、すべて手作業で製品が作られています。
働いているのは、
全員マイチャウの女性たち。
この工場は、Thuyさんが
ゼロから技術支援を行い、立ち上げた場所です。
企画、デザイン、パターン作成、縫製、
そして技術指導から販売まで。
すべてに関わりながら、
毎年数えきれないほどの新しい製品を生み出しています。

特に印象に残ったのは、
この工場の外での活動でした。
定期的に少数民族の村を訪れ、
ワークショップを開いているそうです。
伝統技術を活かしながら、バッグ、洋服など
日常使いができる製品の作り方を教える。
そして、
そこで作れるようになった商品を、実際に買い取る。
自分たちで作れるようになれば、
自分たちで売ることもできる。
一過性ではなく、
続いていく仕組みを作っていることが印象的でした。
もう一つの工場
そこから車で5分ほど。
もう一つの工場へ向かいました。
こちらは先ほどの小さな工場とは対照的に、
かなり規模の大きな工場で、OEM生産も行っています。
中に入ると、多くの人が働いていて、
空気もどこか少し違って感じられました。
ここでは、ブランド設立の背景についてもお話を聞きました。
少数民族の伝統を守ること。
雇用を生み出すこと。
そして、その技術を世界に広げていくこと。
そうした想いで、この工場は運営されています。
小さな工場がすべて手作業なのに対して、
こちらでは機械も取り入れられ、より多くの生産が可能になっています。
また、遠方から働きに来る人のために社宅が用意されていたり、
未経験の人でも働けるように研修制度が整えられていたりと、
働く環境もしっかりと考えられていました。
実際に、さまざまな民族の人たちがここで働いています。
印象的だったのは、Thuyさんの言葉でした。
「売り上げが上がると、すぐ設備に投資しちゃうので、
いつもお金が足りないんです」
そう笑いながら話してくれた姿が、とても印象に残っています。
実際に話を聞いていて、
とてもまっすぐで、地に足のついた取り組みだと感じました。

カフェ時間
工場を見たあと、
Hoa Ban+の近くのカフェへ。
少し作業をしながら、ゆっくりと過ごします。
静かな村で一息つく時間は、
マイチャウに来たときの楽しみのひとつです。
Hoa Ban+との打ち合わせ
そのあと、Hoa Ban+のメンバーと打ち合わせを行いました。
この日はThuanさんともお話しすることができ、これまでの取り組みや今後について、現場の視点で意見を交わしました。
話したのは、これからの製品づくりと、その先にある販売についてです。
Hoa Ban+には、長年培ってきた技術や設備があります。
少数民族の女性たちによる手織りや刺繍など、ここにしかない素晴らしい技術もあります。
一方で、それらを継続的な仕事につなげていくためには、
「良いものを作る」ことに加えて、「きちんと売れる仕組みをつくる」ことが欠かせません。
社会的な意義のある活動であっても、ビジネスとして成り立ってこそ、長く続けていくことができます。
だからこそ、私たちが関わることで、
現地の技術やストーリーを、日本をはじめとするより多くの人たちに届けていきたい。
そんな未来について話し合いました。
マイチャウの夜
夜になると、ホームステイが一気に賑やかに。
服飾系の大学生たちが研修で滞在していて、
そのまま民族ダンスのイベントへ。
気づけば一緒に踊っていました。
そして壺のお酒。
Rượu cần(ルオウカン)

壺を囲んで飲む時間は、
とてもゆったりと流れていきます。
パーコーへ
翌朝、モン族の村
Pa Co(パーコー)へ向かいました。
パーコーはマイチャウから車で1時間ほど、
さらに山の奥に入った場所にあります。
ここには主にモン族が暮らしており、
藍染や臈纈染といった伝統的な布づくりが、
今も生活の中で続けられています。
週末には民族市場が開かれ、
周辺の村から多くの人が集まる場所でもあります。
今回は知人の紹介で、
自宅で藍染を営んでいる方を訪ねました。


藍染(インディゴ染め)
家の敷地にお邪魔すると、
大きな甕(かめ)のような染め桶が並んでいました。

藍染は、藍の葉を発酵させて作った染料を使います。
布を染めては乾かし、
また染める。
この工程を何度も繰り返すことで、
あの深くて柔らかい藍色になります。
一度では色は出ず、
時間と手間をかけて、少しずつ色が重なっていく。
その過程を目の前で見ると、
あの色の奥行きに納得がいきます。
臈纈染(ろうけつ染め)
もう一つ見せてもらったのが、
臈纈染(ろうけつ染め)です。

小さな道具を使い、
溶かした蜜蝋で布に模様を描いていきます。
そのあと布を藍で染めると、
蝋がついた部分だけが染まらず、
白い模様として浮かび上がります。
すべて手描き。
線のゆらぎやかすれも含めて、
ひとつとして同じものがありません。
ヘンプと糸づくり
さらに別の家では、
ヘンプの糸づくりも見せてもらいました。
パーコーでは、
ヘンプ(大麻)が生活の中にあります。
村の中を歩いていると、
普通に家のまわりに生えているのが見えます。
その繊維を取り出し、
乾燥させ、ほぐし、
少しずつ撚って糸にしていく。
とても静かで、根気のいる作業です。

こうしてできた糸が、
布になり、染められていきます。
天然染料
モン族の布に使われている色は、
すべて自然のものから生まれています。
藍(インディゴ)
ベニノキの赤
ウコンの黄色
山の中にある植物から、
色を取り出して使っています。
自然の中にある色だけで、
あの独特の風合いが作られていることに驚かされます。
山の昼ごはん
見学のあと、村で昼ごはんをいただきました。

この日いただいたのは、
モン族の黒鶏。
見た目は少し特徴的ですが、
臭みがまったくなく、
身はしっかりしていてプリプリ。
噛むほどに旨味が広がります。
昔ながらのキッチンで、
火を起こして料理してくれました。
その場の空気も含めて、
とても印象に残る食事でした。
最後に
ベトナムの少数民族のものづくりを辿ると、
必ず「場所」に行き着きます。
村、工房、畑、染め場。
そこには必ず、
人と生活があります。
普段見ている製品も、
こうした場所とつながっている。
そう思うと、
見え方が少し変わってきます。
また少しずつ、
こうした場所を紹介していきたいと思います。
そしてこれからは、
こうした現地の方々とのコラボレーションを通じて、
商品開発にも取り組んでいきます。
Hoa Ban+の皆さんと現在話し合っているのは、ヘンプ、手織り、天然染色、そして少数民族を象徴する伝統的なパターンなど、現地に受け継がれてきた技術を大切にしながら、より多くの人に手に取ってもらえる製品づくりです。
普段の生活の中で気軽に使えるシャツやパンツ、トートバッグ。
そして、個人的に最も実現したいと思っているのが、マイチャウの技術を活かしたデニム生地です。
日本でも手織りのデニム生地が注目されていますが、せっかくならベトナムの伝統技術を活かした、ここでしか作れないクールなデニム生地を作ってみたいと思っています。
手織りの生地に、天然の藍染。
もしそれが実現できたら、ここで受け継がれてきた技術と、日常的に使えるデザインが融合した、とても面白い製品になるはずです。
まだまだ確認しなければならないことはたくさんあり、実現までの道のりは長そうです。
それでも、一歩ずつ形にしていきたいと思っています。
そんなプロセスも、これから発信していく予定です。
そして、できれば今年中には最初の製品を皆さんにお届けしたいと思っています!
Fav!について
Fav!では、ベトナムの少数民族の伝統技術から生まれた製品や、
ユニークな背景を持つブランドを、日本向けに紹介・販売しています。
単に商品を販売するだけではなく、
ブランドの想いや作り手のストーリー、
その土地の文化や暮らしもあわせてお届けしています。
ECサイトには、取材記事やブランド紹介も掲載していますので、
気になった方は、ぜひのぞいてみてください。
👉 Fav!公式サイトはこちら
https://fav-saigon.com/
Writer
Yasu(Fav ! 編集部/ハノイ在住・ベトナム歴5年目)
