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孫子の兵法|第37話 見えない戦争、スパイこそ戦略の中枢である ~用間篇が教える5つの間~(用間篇まとめ)

戦争は武力でなく、スパイで決まる。

前回は「情報の重要性」を解説した。
今回は「情報の使い方」を解説する。


孫子の革命的思想

孫子は
軍事思想に革命を起こした。

それは

スパイの体系化

である。
孫子は用間篇でこう述べている。

 故用間有五。

間には五種類がある。

孫子はスパイを
五つの種類に分類した。

これは古代としては
極めて高度な情報理論である。


五つのスパイ

孫子は次の五種類を挙げる。

① 郷間: 現地住民を利用するスパイ
② 内間: 敵組織の内部協力者
③ 反間: 敵スパイの逆利用
④ 死間: 偽情報を流すためのスパイ
⑤ 生間: 情報を持ち帰るスパイ

特に重要なのが「反間」である。

情報戦の本質は「奪うこと」ではない。
相手に誤認させることにある。

敵の情報網を逆に利用する。
これが反間である。

 故明君賢將,動而勝人,成功出於衆者,先知也。

明君賢将の動きて人に勝ち、成功の衆に出づる所以は、先知なり。

現代訳すると、
優れた指導者が常に勝つ理由は、
事前に情報(先知)を得ているからである。

孫子は二千五百年前に、
情報ネットワークの本質を見抜いていたのだ。


歴史に見る情報ネットワーク

情報戦の本質が最もよくわかるのが、
第二次世界大戦における
イギリスの二重スパイ作戦である。

MI5は、ドイツのスパイを次々と捕らえた。
しかし彼らを処刑しなかった。

「そのまま使った」のである。

ドイツ軍はこう信じていた。

・イギリスにスパイを送り込んでいる
・現地から正確な情報が届いてる

つまり自分たちは優位だと。
しかし現実は逆だった。

その情報はすべて
イギリス軍によって設計されていた。


その結果が、
ノルマンディー上陸作戦である。

ドイツ軍は最後まで
上陸地点を誤認した。

なぜか。
「信じていた情報」が
間違っていたからである。

ここで重要なのは、
情報がなかったことではない。

情報が「ありすぎた」ことだ。

しかもそれは
敵によって設計された情報だった。

これはまさに「反間」である。
相手に誤った確信を持たせることだ。


情報の本質

孫子は言う。

戦争で最も価値があるものは
未来の情報である。

敵が何をするか。

それが分かれば
戦争の形を変えられる。

だから孫子は
スパイに報酬を惜しむなと説く。

スパイはコストでなはない。
「投資」である。
しかも、最もリターンの大きい投資だ。

ただしスパイは
「信頼」でしか動かない。

だから、
・厚遇せよ(報酬・待遇)
・極秘で扱え
・信頼関係を築け

人間関係こそが
情報戦の土台なのである。


現代の情報戦

現代社会でも
情報戦は続いている。

・企業の市場調査
・国家の情報機関
・データ分析

これらすべては情報戦である。

孫子の思想は
今もそのまま通用する。


現代ビジネスへの応用

用間篇は現代に置き換えるとこうなる。

① 郷間 =市場の一次情報
 ➤顧客・現場のリアルな声

② 内間 =内部情報
 ➤業界関係者・パートナーの情報

③ 反間 =競合の逆利用
 ➤競合の戦略・情報を利用する

④ 死間 =情報発信
 ➤意図的に市場にメッセージを流す(PR・テスト)

⑤ 生間 =現場ヒアリング
 ➤営業・顧客接点から得る一次情報

ポイントはただひとつ。
「一次情報を握る者が勝つ」


核心テーマ

用間篇の核心はこれだ。

情報は「集めるもの」ではない。
作ることができる。

そしてもうひとつ。

情報は分散させるな。

分散した情報はノイズになる。
統合された情報だけが意思決定に役立つ。

情報はトップに集約し、
分析・統合して初めて価値になる。


まとめ

用間篇は
情報ネットワークの書である。

・スパイには五種類ある
・情報は操作できる
・未来の情報が最も価値がある
・情報戦が戦争を決める

優れた将軍は
戦場だけを見ない。

情報の流れを見る。

そして勝てる状態を整えてから戦う。

最も危険なのは敵ではない。
「正しいと信じている情報」である。

情報は必ず検証し、
複数の視点で立体的に組み立てなければならない。


追記

日本でも同じである。
戦国時代においても、勝敗を分けたのは情報だった。

戦国武将で間者運用に最も長けていた武将は
次のとおりである。

1位:武田信玄

➡組織的・理論的(最も孫子的)
・「三ツ者(みつもの)」という諜報組織を整備
・忍び・商人・僧侶などを使い全国に情報網を構築
・敵国の内部事情まで把握
ポイント
・戦う前に勝っている状態を作る
・情報をもとに戦略を組む(まさに孫子)

2位:徳川家康

➡国家レベルの情報網を確立
伊賀・甲賀の忍者を配下に
・全国に情報網を張る
・江戸幕府でも諜報機関として継続
ポイント
平時から情報網を維持
・政治と情報を一体運用

3位:織田信長

➡攻撃的・心理戦
敵の内部分裂を誘う
・偽情報・心理戦を多用
・商人ネットワークを活用
ポイント
「反間(敵を裏切らせる)」が非常に上手い
・情報を「攻撃」に使うタイプ

4位:豊臣秀吉

➡人間関係型
人心掌握で情報を得る
・敵の家臣を取り込む(実質「内間」「反間」)
ポイント
・スパイを使うというより、人をスパイ化する

5位:北条氏康

➡戦術特化型
風魔忍者を活用(風魔小太郎)
・夜襲・攪乱・情報収集を組み合わせる
ポイント
・戦術レベルでの間者運用が秀逸


次回予告

この第37話をもって、
「孫子の兵法」十三篇の解釈と現代ビジネスへの応用は終わります。
次回は最終章。

【最終回】第38話 孫子はなにを教えていたのか
【特別回】第39話 孫子を経営に使う5つの方法
【付録①】第40話 なぜ世界のリーダーは孫子を読むのか
【付録②】第41話 孫子ょ読む人と、読まない人の決定的な違い
【付録③】第42話 孫子の兵法完全ガイド

長期に亘ったシリーズの総括として、
本質を一気に整理します。
「孫子の兵法」シリーズは第42話が最終話となります。

孫子の兵法シリーズ目次 ※最新記事までの全話が確認頂けます


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