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三十六計|第16話 欲擒故縦 ~敢えて逃がし、全体を取る~

人は、「目の前の相手を捕まえること」
が成果だと考える。
しかし実際には、すぐに捕まえたものほど
全体の成果にはつながらない。
本当に大きな成果は、
「一部を敢えて手放したとき」に生まれる。


【三十六計 第十六計の意味】

 欲擒故縦(よくきんこしょう)
 捕らえようとするなら、あえて逃がす

一部を意図的に自由にすることで、
より大きな目的を達成する戦略である。

重要なのは「制圧すること」ではない。
「全体を取るために、一部分を手放すこと」
である。


【現代語訳】

成果を急ぐと、人はこう考える。

・今取れる顧客を全部取る
・目の前の案件を確実に押さえる
・短期の売上を最大化する

しかしこれを徹底すると、
逆に全体を失うことがある。
一方で、別の方法がある。

・あえて一部顧客を追わない
・すぐに取れる案件を見送る
・短期利益を捨てる

すると結果として、

・より大きな案件が残る
・長期契約が生まれる
・市場全体の支配力が上がる


【歴史の事例】

中国・戦国時代、
秦は楚を攻略する過程で、
あえて一部の城を即座に攻略しなかったとされる。

楚軍は重要拠点の一部を奪われても、
完全には撤退せず防衛を維持した。

秦はここで攻撃を止め、
逃げ道を完全には塞がなかった。

その結果、楚軍は「まだ守れる」という判断をし、
主力を温存したまま局地戦に分散した。

しかしこの判断により、
楚軍の戦力は一点に集中できず、
結果的に広域防衛が崩れた。

秦は最終的に、
分散した戦力を各個撃破することで、
全体を制圧した。

これは、すべてを一度に取ろうとせず、
あえて逃がすことで
全体構造を崩した戦いである。


【経営事例】

ある企業が、
すべての見込み顧客を追うのではなく、
あえて一部の小規模案件を受注対象から外し、
大型案件に集中する戦略を取った。

その結果、
限られた顧客からの契約単価が上昇し、
全体の売上構造が大きく変化した。
この企業はなぜ
「一部を捨てる」ことで成果を最大化できたのか?


この企業はまず以下を実施した。

・小規模案件の営業工数を意図的に削減した
・優先顧客の条件を厳格化した
・短期契約を戦略的に見送った

すると、

・営業リソースが高単価案件に集中した
・提案品質が向上した
・交渉力が上昇した

さらに、

・大型案件の成約率が上昇し
・契約単価が引き上がり
・顧客層が上位にシフトした

結果として、

・売上は小口依存から脱却し
・利益率が改善し
・事業構造そのものが変化した

この企業は「すべてを取った」のではない。
「取らない選択によって、全体を取った」
のである。


【解説】

この企業経営者はこう考えた。

①「すべて取ることは最適ではない」

・短期売上は分散する
・リソースは希薄化する
・本質的な価値が下がる

と判断した。

②「捨てることで集中が生まれる」

・選択肢を減らす
・対象を絞る
・判断を単純化する

ことで成果が尖ると考えた。

③「小さな成果より大きな構造」

・個別の受注ではなく
・全体の利益構造を優先した

④「一部を逃がすことで全体を取る」

・追わない顧客を作る
・見送る案件を作る
・選ばれない状態を作る

これ、逆に支配領域を広げた。


【経営応用事例】

① 営業戦略

小口案件を捨て、
優良顧客に集中する

② プロダクト戦略

全機能提供ではなく、
コア機能に集中する

③ 事業戦略

非収益事業を切り捨て、
主力事業に集中する


【核心メッセージ】

すべてを取ろうとすると、すべてが弱くなる。
敢えて捨てることで、全体が強くなる。


【まとめ】

欲擒故縦とは、
捕まえる技術ではない。
「全体を取るために一部を手放す戦略」
である。

・全部追わない
・あえて逃がす
・全体を取る

成果は量ではなく、構造で決まるのだ。


次回予告


三十六計|第17話 
抛磚引玉 ~小さく出して、大きく引き出す~


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