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11-1|なぜ「任せる」と組織は壊れるのか -「権限移譲」と「業務を任せる」は別次元-

「権限移譲」と「業務を任せる」は別次元

社長や事業責任者が、
「君に責任者を任せた」と言った途端に、
組織が止まることがあります。

これは任された人の怠慢でしょうか。
いいえ、理由は単純です。

任された人が判断できないからです。

多くの人は、「経験」で判断します。
だから、経験のないことは判断できません。

ここで重要なのは、
判断とは「経験 × 論理」で成り立っている
ということです。

論理とは難しいものではありません。

なぜ社長は、
なぜ事業責任者は、
こう判断をしたのか。

その判断軸・判断理由を理屈として理解できれば、
未経験でも判断は可能になります。


同行二人(どうぎょうににん)で考える

これは、空海(弘法大師)の言葉として知られる
同行二人と同じ考え方です。

「自分だったらどうするか」ではなく、
「この人だったら、どう考えるか」。

その思考をなぞることで、
判断は再現可能になります。

実例があります。

中村邦夫氏は、
松下電器産業(現、パナソニック)の第6代社長として、

松下幸之助の経営哲学である
・終身雇用
・企業は人なり
・不況でも人は切らない

という方針を覆し、
創業以来初の大規模リストラを断行しました。

メディアから
「松下幸之助の哲学に反するのではないか」
と問われたとき、中村氏はこう答えています。

幸之助公でも、この状況なら同じ判断をした。
私は同行二人で考えている。

これは哲学を捨てたのではなく、
判断軸を継承したということです。


「任せる」ことは「権限を委譲する」こと

「任せる」こと、すなわち権限移譲は、
部下を伸ばすきっかけになります。

しかし同時に、
判断軸を持たないままの人に任せれば、組織は壊れます。

・任された人は迷い
・結果が出ず
・責任だけを背負わされ
・やがて辞めていく

売上が低迷する原因は、
能力ではありません。

判断できる設計がないだけです。

重要なのは、
「理屈で理解しろ」と命じることではありません。

任せる側が、

・なぜ自分はこの判断をしたのか
・どこを基準にしたのか

言語化し、時間をかけて伝える意思を持つことです。

具体的には、次の要素です。

・目的地
・現在地
・残距離
・行軍手段(戦略)
・進行速度(営業のソース)
・戦況(市場環境)
・競合情報

これらが揃えば、
未経験の分野でも人は判断できます。


判断を任せるとは、基準を渡すこと

日常の例に置き換えてみましょう。

幼児が机の上のカッターナイフを触ろうとしたとき、
あなたたなら何といいますか?

・「危ないからダメ」
・「それは何かを切る道具、怪我するから遊びに使っちゃダメ」

後者で教えれば、
ナイフも包丁もダメだと理解します。

しかし前者では、
カッター以外で同じことを繰り返します。

判断を任せるとは、行動を縛ることではありません。
判断基準を渡すことです。

そしてそれは、
任せてから教えるものではなく、
任せる前から時間をかけて教えるべきものです。

つまり
権限移譲とは、移譲する側の準備が結果を左右します。


まとめ

判断を任せることと、
放任することは、まったく別物です。

組織が壊れるとき、現場ではつぎのような状態が起きています。

・何を基準判断すれば良いか分からない
・失敗したとき、誰が守ってくれるのかわからない
・正解が一つしかないと思い込んでいる
・「責任を取らされる」感覚だけが残る

この状態で任される判断は、
自由ではなく、恐怖です。

だから人は、
・前例を探す
・上司の顔色を見る
・判断を先送りするようになります。

これは能力の問題ではありません。
判断できる設計が無いだけです。


次は、
人が辞めなかった理由
-判断の渡し方を間違えなかったから-
について説明します。


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