孫子の兵法|第29話 戦場は語っている ~行軍篇が教える地形の読み方~(行軍篇まとめ)
戦場は沈黙していない
戦場は静かに見える。
しかし実際には
無数の情報が流れている。
孫子は行軍篇で
地形の観察について何度も語っている。
例えば次の言葉だ。
鳥起者,伏也。
鳥が突然飛び立つとき、
そこには伏兵がいる。
孫子は言う。
自然は嘘をつかない。
人間は隠せても、
環境は隠せない。
地形は戦略そのもの
孫子の時代、
戦争は地形によって決まることが多かった。
山、川、森林、湿地
これらは単なる背景ではない。
戦略そのものだった。
例えば
赤壁の戦いである。
劉備と孫権の連合軍は、
長江の風向きを利用して
曹操軍の艦隊を焼き払った。
ここで重要なのは兵力ではない。
地形と環境の理解である。
曹操軍は北方出身で
水戦に慣れていなかった。
さらに艦隊を鎖でつないでいた。
そこに火攻めが行われた。
結果、
曹操軍は壊滅する。
これは戦術の勝利というより
環境理解の勝利である。
地形に応じた軍の配置
孫子は、
山・河・斥沢(湿地)・平地という4つの地形それぞれに
適した布陣の原則を説いている。
・山地
高い場所に陣を取れ。
敵が高所にいる場合は攻め上がるな。
・河川
渡河後は水際から離れよ。
敵が渡河中なら半分渡ったところで攻撃せよ。
・湿地
速やかに通過せよ。
長居するな。
・平地
低い場所を後ろにせよ。
開けた場所を前にして陣を構えよ。
・共通原則
陽(陽当たり)と高所を好み、陰と低地を避けよ。
自然現象から敵情を読む「察敵の法」
孫子は、
敵の動向を、直接見ずとも自然のサインから
読み取れると説いている。
・木が揺れている ➤敵が進軍中
・草に障害物が多い ➤救の偽装、罠
・鳥が飛び立つ ➤伏兵あり
・獣が驚いて走る ➤奇襲の準備
・土煙が高く舞う ➤戦車部隊の接近
・敵の使者が丁寧に来る ➤休戦を求めている
・兵が木陰に集まる ➤疲弊・暑さに参っている
孫子の地形思想
孫子は
戦争を次のように考えている。
戦いとは「環境の利用」
である。
兵力だけで勝負する戦争は
最も下手な戦争だ。
優れた将軍は
・地形
・天候
・補給
・時間
これらを利用する。
つまり「戦場を味方にする」。
現代ビジネスの「地形」
現代の経営にも地形が存在する。
それは、
市場構造
である。
例えば
・規制
・流通
・技術
・顧客習慣
これらはすべてビジネスの地形だ。
優れた企業はこの地形を読む。
例えば
・EC企業は物流を利用する
・プラットフォーム企業はネットワーク効果を利用する
・低価格企業はサプライチェーンを利用する
つまり
市場の構造を使って勝つ。
これはまさに
孫子の思想そのものだ。
行軍篇の核心
行軍篇の核心は「観察」である。
戦場は常に情報を発している。
しかしそれを読み取る人は少ない。
優れた将軍は「戦場」を見る。
・地形
・兵士
・自然
・動き
すべてを観察する。
その結果、「戦う前に勝つ」。
兵の管理と将の統率
令素行以教其民、則民服。
令不素行以教其民、則民不服。
令の素より行われている軍は衆に服す、
令の素より行われていない軍は衆に服さず。
・規律は戦場で急に厳しくするのではなく、
日頃から一貫して育てるもの
・兵を可愛がりすぎると命令が効かなくなる
・逆に威厳なく厳罰だけでは兵は心服しない
・将は「恩」と「威」の両方を使いこなすことが肝要
まとめ
行軍篇は、
戦場観察の書である。
・戦場は常に情報を発している
・自然は嘘をつかない
・地形は戦略そのもの
・環境を利用せよ
優れた将軍は
戦場を支配しようとしない。
戦場を理解する。
そして
環境を味方につけて勝つ。
それが
孫子の戦略なのである。
次回予告
第30話 地形は戦略そのものである
~地形篇が教える六つの地形~(地形篇)
いいなと思ったら応援しよう!
もしよろしければ応援をお願いいたします。いただいたチップはクリエイター活動費に使わせていただきます!ありがとうございます。