7-1|成功している会社の「分岐点」を見てみる -判断を変えた瞬間、何が起きたのか- (1/3)
ここまでの章では、
判断が歪む理由、
判断を軽くする設計について、
理論と実体験から整理してきました。
第7章では少し視点を変え、
今、成功している会社が「どこで判断を変えたのか」
その分岐点を、事例として列挙します。
分析よりも、
「共通点を感じ取る」章です。
① ネーミングを変えたことで成功した事例
ネーミングは「中身」ではなく「判断装置」
ネーミングはセンスの問題ではありません。
顧客にとっては、
一瞬で理解できるか
判断できるか
を決める装置です。
お〜いお茶
もともとは「煎茶」として販売されていた商品でした。
しかし「お〜いお茶」という呼びかけ型のネーミングに変えたことで、
• 生活シーンが即座に想像できる
• 親しみやすい
• 説明が不要
となり、売上は大きく伸びました。
中身はほとんど変わっていません。
変わったのは、判断のしやすさです。
鼻セレブ
従来は「モイスチャーティッシュ」など、
機能説明型の名前で販売されていました。
「鼻セレブ」というネーミングに変えたことで、
• 何のための商品か一瞬で分かる
• 使った後の状態が想像できる
• 機能ではなく体験で判断できる
結果、消費者は
「鼻に優しい」という価値を即座に理解し、
購買に結びつきました。
購買は三層構造でできている
購買は、次の三層構造です。
• 下層:認知
• 中層:興味
• 上層:需要(購買)
多くの商品は、
中層や上層の説明ばかりを増やします。
しかしネーミング変更で起きているのは、
最下層の「認知」を一瞬で突破することです。
私の知る名経営者は、TVCMを出稿する際、
社名をカタカナにするように指示しました。
英語名がしっくり来る会社なのに「カタカナ」にするのはなぜ?
そう尋ねると、TVCMでは社名は1、2秒しか表示されない
だから認知しやすいように「カタカナ」にしたそうです。
これぞまさしく「認知」を意識した経営判断です。
② 対象を変えたことで成功した事例
ワークマン
ワークマンの事例は、
「対象を変える」ことの本質を非常に分かりやすく示しています。
もともとは、
完全にプロ向けの商品でした。
しかし新しく就任した役員は、
想定外の売れ方をしていることに気づきました。
• 医師・看護師向けに作った滑らない靴 → シニア層
• 真冬作業用の防寒上下 → ライダー
• 水商売向けのエプロン → 家庭菜園者
つまり、
作った相手と
実際に判断して買った相手が
違っていた
のです。
ワークマンはここで
「誰に売れているか」を見直し、
切り出して再設計しました。
それが、
• ワークマン女子
• ワークマン+
です。
商品を変えたのではありません。
判断する主体を変えたのです。
変えたこと
それは一般消費者向けのため、
店舗設計にアパレル店要素を入れたことだけです。
③ 売り方を変えたことで成功した事例
ハウステンボス
ハウステンボスは、立地的に集客が弱い。
「一度行けば十分」という評価でした。
そこで事業買収をきっかけに、
集客ではなく再訪理由の設計に舵を切ります。
• 毎月咲く花を変える
• 冬は花が咲かない → イルミネーション
• 有料・無料エリアを機能分離
• 別荘地を併設
• モナコと同規模というサイズを売りにし、実証実験場化
これは施設拡張ではありません。
来る理由を一つに固定しなかった
という、判断設計の転換です。
④ 広告のトーンを変えたことで成功した事例
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン
USJは、
クリスマスシーズンのTVCMで
従来までの
「イルミネーションが綺麗です」
という機能訴求から離れました。
代わりに切り取ったのは、
感情の一瞬です。
父と小学生の娘がナイトパレードを見ている
父親の心の声
「あと、何回君とこうして来られるかな」
これは説得ではありません。
判断を省略させる広告です。
分岐点に共通していること
これらすべての事例に共通するのは、
• 何かを良くした
• 機能を足した
ではありません。
判断を軽くした
それだけです。
第7章は「理解」ではなく「腑に落とす章」
この章は、
理論を学ぶ章ではありません。
「全部、同じ構造の話だ」
と感じてもらうための章です。
そして次の章で、
判断の設計を再現可能な型に落としていきます。
次は、
社名・発想を変えた企業はなぜ生き残ったのか
-市場が縮むとき、企業はどこへ動くのか-
について説明します。
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