世界の偉人シリーズ|第12話 小倉昌男 ヤマト運輸創業者・宅急便の生みの親
巨大市場は、
最初から巨大に見えるとは限らない。
むしろ多くの場合、
・誰も儲からないと思っている
・手間ばかりかかる
・非効率に見える
・大企業が相手にしない
場所に眠っている。
しかし時として、
そこに未来を見る人間が現れる。
彼は、その一人だった。
小倉昌男
「宅急便を作った男」として知られる。
物流を、企業のものから個人のものへ変えた男。
1924-2005|Yamato Transport 創業家2代目経営者。
【「坊ちゃん社長」だった】
意外かもしれないが、
小倉昌男は叩き上げではない。
大和運輸創業家の出身。
いわゆる御曹司だった。
若い頃は、
・苦労知らず
・エリート
・二代目坊ちゃん
と見られていた。
本人も後年、
「自分は経営者向きではないと思っていた」
と語っている。
だが面白いのは、
そういう人物ほど、
時に既存業界を壊すことがある点だ。
なぜなら、
業界の「常識」に染まり切っていないからである。
【当時の物流は「企業のもの」だった】
現在では当たり前だが、
昔の運送業界は、
個人客をほとんど見ていなかった。
主役は、
・工場
・港湾
・大企業
・大量輸送
だった。
つまり物流とは、
「大量に運ぶもの」
だったのだ。
一方、個人宅向け配送は、
・荷物が小さい
・件数が多い
・手間がかかる
・再配達もある
極めて非効率に見えた。
だから当時、多くの人間は、
「個人配送なんて儲かるわけがない」
と本気で考えていた。
【「市場がない」のではなかった】
しかし小倉は違った。
彼が見ていたのは、
現在の数字ではない。
未来の生活変化だった。
・核家族化
・女性の社会進出
・百貨店通販
・個人消費増加
・地方発送需要
彼は、
「これから人は、
もっと個人で物を送り合うようになる」
と見ていた。
これは、サム・ウォルトンが
「地方市場」を見つけた構造に近い。
他人には、「存在しない市場」
に見えていた。
しかし実際には、
まだ誰も見えていなかっただけだった。
【宅急便は猛反対された】
1970年代、
小倉は「宅急便」を始めようとする。
しかし社内は猛反対した。
・儲からない
・効率が悪い
・手間が多すぎる
・採算が合わない
現場も不安だった。
なぜなら、従来の運送とは真逆だからだ。
大量輸送ではない
一件一件、個人宅へ届ける
しかも時間指定までやる
現在なら当たり前だが、
当時はかなり異常な発想だった。
【サービスが先、利益は後】
ここで小倉昌男の本質が出る。
彼は有名な言葉を残している。
「サービスが先、利益は後」
普通の企業は逆だ。
利益を考え、
その範囲でサービスを決める。
しかし小倉は、
「良いサービスを作れば、
後から必ず利益が付いてくる」
と考えた。
だから宅急便は単なる輸送ではなく、
・時間指定
・丁寧配送
・個人対応
・再配達
・地域密着
を重視した。
つまり彼は物流を、
「生活サービス」
に変えたのである。
【異常な現場主義】
小倉は、かなりの現場主義だった。
特に重視したのが、
セールスドライバーだ。
彼は言う。
「会社の顔は本社ではない。ドライバーだ」
だから、
・制服
・言葉遣い
・接客
・地域関係
まで徹底的に教育した。
これは当時の運送業界ではかなり珍しい。
従来の物流会社は、荷物中心だった。
しかし宅急便は違う。
「人との接触」
を重視した。
ここが、単なる配送業との違いだった。
【全国一律サービスへの執念】
普通の企業なら、
利益が出ない地域は切る。
しかし小倉は違った。
地方配送にも拘った。
離島
山間部
人口の少ない地域
効率だけ見れば厳しい。
それでも彼は、
「物流はインフラだ」
と考えていた。
宅急便は、
単なる民間サービスというより、
「生活基盤」
として設計していたのである。
【実はかなり合理主義】
小倉は情熱家に見える。
しかし同時に、
かなり数字にも厳しい。
・原価
・配送効率
・採算
・回転率
を徹底的に見る。
ここはヘンリー・フォードにも近い。
感情論だけではない。
構造を作る。
だから宅急便は、
巨大システムになった。
【赤字地獄だった】
現在の成功だけ見ると、
最初から勝っていたように見える。
しかし実際は逆だった。
宅急便初期は、かなり苦しかった。
・配送網整備
・人員増加
・設備投資
・システム構築
コストが爆発する。
当然周囲は、
「やめた方がいい」と言う。
しかし小倉は、
「儲からない理想」
を抱えて孤独に戦っていた。
これは、
多くの創業者に共通する。
未来は、最初から理解されない。
【最大の苦悩】
宅急便は、
サービス品質を上げれば上げるほど、
コストが増えた。
・丁寧対応
・時間指定
・全国網
・再配達
すべて金がかかる。
小倉は常に、
利益
品質
全国サービス
の板挟みだった。
これは、理想と現実の戦いでもあった。
【なぜ宅急便は日本を変えたのか】
重要なのは、
宅急便が単なる運送ではない点である。
このサービスの登場によって、
・地方から荷物を送れる
・個人が簡単に贈れる
・通販文化が広がる
・個人取引が増える
・生活導線が変わる
つまり、
「個人物流」
そのものが民主化されたのだ。
これはかなり大きい。
ヘンリー・フォードは、
車を庶民化した。
サム・ウォルトンは、
低価格消費を庶民化した。
そして小倉昌男は、
「物流そのものを、
一般家庭のインフラへ変えた」
のである。
【三人の共通点】
面白いのは、
彼らに共通点があることだ。
・大企業が見ていない市場を見る
・庶民側を見る
・生活変化を先に読む
・仕組みを作る
・効率を極める
・インフラ化する
つまり彼らは、
単に商品を売ったのではない。
「新しい生活様式」
を作ったのだ。
【小倉昌男の本質】
小倉は、
発明家でも、
派手なカリスマでもない。
むしろ、
「生活の不便を、構造で解決した人」
だった。
だから宅急便は、
単なる配送サービスではない。
それは、
「個人が安心して物を送り、
受け取れる社会」
そのものだったのである。
【クロネコマークの誕生背景】
「クロネコヤマト」という愛称は、
親猫が子猫をくわえて運ぶ姿から生まれた。
これは単なるマスコットではなく、
会社の思想そのものを表している。
1957年、
ヤマト運輸はアメリカの運送会社
「Allied Van Lines」と提携した。
その際、アメリカ側が使っていた
「黒猫が子猫を運ぶマーク」に感銘を受け、
ヤマト側は、
「荷物を大切に運ぶ姿勢」
が自社理念と一致すると考え、
日本で使用を開始した。
親猫が子猫を口で運ぶ姿は、
丁寧
慎重
絶対に落とさない
愛情深い
というイメージがある。
つまり、
「お客様の荷物を、自分の子どものように運ぶ」
という想いを込めたのだ。
当時の運送会社は、
無愛想
荷物扱いが荒い
企業向け中心
という印象が強かった中で小倉は、
「優しい配送」を打ち出した。
【戦っていた相手】
小倉が戦っていたのは、
他の運送会社だけではない。
本当に戦っていたのは、
・「個人配送は儲からない」という常識
・大口法人偏重
・配送の不便
・荷物到着の不確実さ
・遅い物流
・不親切なサービス
・「運ぶだけ」という発想
だった。
当時の運送業界は、企業向けが中心だった。
個人が荷物を送る。
小さな荷物を翌日に届ける。
そんなことは、非効率で利益にならない、
と言われていた。
しかし小倉は違った。
彼は、
「個人が自由に荷物を送れる社会」
を見ていた。
だから彼は、
小口配送を整備し、
全国網を作り、
時間指定を導入し、
サービス品質を徹底し、
赤字覚悟で宅急便を広げていく。
しかも彼は、単なる物流効率ではなく、
「荷物の向こうにいる人」
を見ていた。
だからヤマト運輸は、
昔から接客品質に厳しい。
つまり彼が作っていたのは、
配送会社ではない。
「人と人を繋ぐ生活インフラ」
だったのである。
彼が本当に戦っていたのは、
「不便で冷たい物流社会」
そのものだった。
【これは戦略だったのか】
結果だけ見れば、宅急便の成功譚。
しかし中には、かなり強い型がある。
・法人市場だけを見ない
・生活者側の不便を観察する
・「小口配送」を巨大市場化する
・インフラを細分化して再設計する
・現場品質を異常に重視する
・赤字でも全国網を作る
・サービスを先に作り市場を育てる
・物流を感情価値へ変える
極めて生活インフラ型の構造である。
当時、配送会社は、大口法人中心だった。
しかし小倉は違った。
彼は、
「個人が自由に荷物を送れる社会」
を見ていた。
だから彼は、
小口配送
↓
翌日配送
↓
全国網
↓
家庭物流
↓
EC時代の基盤
まで繋げていく。
彼が作ったのは、配送会社ではない。
「日本人の生活物流インフラ」
だったのである。
【まとめ】
小倉昌男が変えたのは、
運送会社ではない。
日本人の生活導線である。
・企業物流を個人物流へ変えた
・サービスを中心へ置いた
・全国配送網を作った
・物流を生活インフラ化した
・人と人を結ぶ仕組みを作った
そして重要なのは、
彼が最初から巨大市場を見ていたわけではない点だ。
他人には、
「儲からない荷物」
に見えていた。
しかし彼だけは、
「未来の日常」
に見ていたのである。
次回予告
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