三十六計|第8話 暗渡陳倉 ~正面に目を向けさせて本命を通す~
人は「見えている動き」を本命だと判断する。
【三十六計 第八計の意味】
暗渡陳倉(あんとちんそう)
密かに陳倉に渡る
表では別の行動を見せながら、
裏で本命を通す戦略。
重要なのは奇襲ではない。
・正面に相手の意識を集中させる
・目に見せて納得させる
・疑いを消す
その結果、
相手は本命が見えなくなる。
これが「暗渡陳倉」の本質である。
【現代語訳】
人は一度
「これが本命だ」と判断すると、
その瞬間、
・他の可能性が消え
・疑う理由がなくなり
・確認すらしなくなる
だから仕掛ける側は
・敢えて動きを見せ
・相手に理解させ
・考えることを止めさせる
そして、その間に本命を通す。
【経営事例】
とある企業が、
主力商品の営業キャンペーンを発表した。
・大々的な広告宣伝
・販売チャネルの拡張
・既存顧客の囲い込み強化
競合他社はこの動きを見て、
すぐさま対抗措置を講じた。
市場の関心は、
どの会社がシェアを伸ばすか、
皆が注目していた。
しかし数か月後、
この企業は
・別ブランド売上が急伸し
・主力商品売上を上回った
その後、
主軸は新ブランドへ移行した。
競合他社は対応が遅れ、
新市場でのシェア獲得に出遅れた。
さて、
この企業はなぜ、
主力商品の営業キャンペーンを打ち出したのか?
なぜ最初から、
新ブランドを前面に出さなかったのか?
【解説】
この企業経営者は、
他社の新商品リリースを遅らせるために
敢えて主力商品を強化するフリをした。
競合は当然「見えている動き」に追随する。
そして
競合が主力商品の営業強化を始めたタイミングで、
・既存商品に紛れて新商品をリリース
・新規販売チャネルに新商品を投下
・既存顧客に新商品を提案した
つまり、
競合他社はカモフラージュに騙され追随することで
新商品の発売タイミングを逸してしまった。
この企業経営者は、
・少ない予算で
・他社の追随を回避して
・効率よく新標品を販売
するために仕組んだのだ。
もし、
新商品販売キャンペーンを準備すれば
競合他社はそれを簡単に察知する。
そこで
主力商品の販売キャンペーンを行うフリをして
競合を欺いたのだ。
これが
「正面に目を向けさせて、本命を通す」
という構造である。
【歴史の事例】
中国・楚漢戦争。
劉邦は、
敵に正面ルートの修復を敢えて見せ続けた。
・工事を行い
・進軍の意思を示し
・相手の警戒を固定する
一方で、
・別ルートを密かに進軍させ
・守りの薄い地点を突いた
敵は
・正面に意識を集中し
・裏の動きに気づかず
・対応が遅れる
結果として、
・防衛線が突破され
・戦局が決定づけられた
ここで重要なのは、
力で突破したのではなく、
敵の誤認を誘発して通した点にある。
【戦国時代の事例】
豊臣秀吉の中国大返し。
・通常の行軍を装い
・情報を制御しながら
・実際には異常な速度で移動した
敵は
・動きを正確に把握できず
・判断が遅れる
その結果、
・想定外の位置に出現し
・主導権を握られた
「どう進んだか」ではなく、
どう見せたかが結果を変えた。
【経営応用事例】
① 新規事業戦略
既存事業の延長に見せながら、
・裏で新しい収益構造を構築する
競合は既存競争に集中し、
変化に気づかない。
② マーケティング戦略
主力商品を前面に出し続けることで、
・市場の認識を固定する
その裏で、
・別ラインを育てる
認識が固定されるほど、
裏は見えなくなる。
③ 交渉戦略
別の論点に議論を集中させることで、
・相手の思考を固定する
その間に、
・本命の条件を通す
人は同時に複数の焦点を持てない。
【経営での活用法】
① 表の動きを設計する
② 前提(認識)を固定する
③ 裏の導線を確保する
④ タイミングをずらす
⑤ 一気に通す
【核心メッセージ】
戦いは正面(見えている世界)で決まらない。
前提で決まる。
だから
・見えている動き
・説明されている計画
・理解できる行動
に安心した瞬間に負ける。
戦略とは行動ではない。
認識の固定である。
【まとめ】
・正面を見せる
・前提を作る
・裏から通す
重要なのは
・どこを進むかではなく
・どう思わせるかである
気付いた時には、
既に終わっている。
これが
「正面を装い、裏から通す」
ということである。
【次回予告】
三十六計|第9話
隔岸観火 ~対岸から火事を眺めよ~
➡「三十六計」は36の勝ち方の「型」を説いています。
ぜひ次作もご覧ください。
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