三十六計|第11話 李代桃僵 ~小を犠牲にして大を守る~
人は「すべてを守ろう」とする。
しかしそれが、すべてを失う原因になる。
【三十六計 第十一計の意味】
李代桃僵(りだいとうきょう)
桃の木の代わりに李の木が枯れる
小さな犠牲で、大きな損失を防ぐ戦略。
重要なのは「切り捨て」ではない点だ。
・何を残すか決める
・守る対象を限定する
・不要なものを切る
その結果、
・損失は局所化され
・全体は維持され
・再起の余地が残る
つまり、
負け方を設計することで、
勝ち方を残す戦略である。
【戦国時代の事例】
紀元前3世紀、
中国・戦国時代。
趙の将軍・廉頗は、
秦との戦いで不利な状況に置かれていた。
正面から戦えば壊滅する可能性が高い。
このとき廉頗は、
・無理に戦わない
・一部の拠点を放棄する
・防衛ラインを後退させる
さらに、
・前線の一部を殿として残し
・主力部隊の撤退を優先した
結果、
・一部の損失で戦線を維持
・主力戦力を温存
・立て直しの時間を確保
もし全てを守ろうとすれば、
全崩壊していた可能性が高い。
これは、
どこで捨てるかを決めたことで、
全体を守った戦い方である。
【経営事例】
大きな投資をしていた新規事業を
途中で切り捨てたにも関わらず、
その企業は業績を回復させ、成長を維持した。
この企業はなぜ「捨てる」判断で勝てたのか?
ある企業が、新規事業に大きく投資していた。
・初期投資は数十億円規模
・人員も大幅に投入
・経営の期待が高いプロジェクトだった
しかし、
・想定より売上が伸びない
・追加投資が必要な状態が続く
・黒字化見通しが立たないまま時間が経過した
そこでその企業は、
・追加投資を停止した
・新規採用を凍結した
・一部機能の開発を中止した
さらに、
・事業規模を縮小した
・人員を他事業へ異動した
・既存顧客対応にリソースを限定した
その後、
・一部サービスの提供を終了した
・損失を確定させた
・事業の拡大を停止した
しかし結果として、
・損失は限定された範囲に収まり
・会社全体の資金繰りは維持され
・他事業への投資は継続された
なぜ大損失を出したのに、
この企業は成長を維持できたのか?
【解説】
この企業の経営者は、最初にこう考えた。
①「このまま続ければ損失は拡大する」
・追加投資が必要になる
・回収の見込みが見えない
・時間とともに選択肢が減る
つまり、
問題は失敗ではなく、
見込みが立たない事業を止めないことだと認識した。
②「すべてを守ろうとすれば、すべてを失う」
・ここまで投資した
・まだ取り戻せるかもしれない
この発想こそが危険だと理解していた。
それは合理性ではなく、
過去のコストに縛られた判断だからだ。
③「守る対象を決める」
ここで経営者は考えた。
・この事業を守るのか
・会社全体を守るのか
答えは明確だった。
守るべきは会社である。
④「切るラインを先に決める」
そこで
・これ以上投資しないライン
・残す機能の範囲
・撤退の条件
を明確にした。
感情ではなく、ルールで切る状態を作った。
⑤「段階的に縮小する」
あとはルールに基づき
混乱が起こらないように、
・重要度の低いものから止める
・コアだけを残す
・影響をコントロールする
これにより、
・混乱を防ぎ
・損失を局所化し
・組織の安定を維持した
⑥「損失を確定させる」
そして最終的に、
・一部サービスを終了
・投資回収を諦める
・損失を受け入れる
この決断を行った。
結果として、
・キャッシュは守られ
・他事業への投資が可能になり
・会社全体は成長を維持した
この一連の判断はすべて、
「どこで捨てるか」を
先に決めたことから始まっている。
【経営応用事例】
① 事業判断
不採算事業から撤退し、資源を他に振り向ける
② 投資判断
損切りを行い、資金を守る
③ 組織運営
全員を守らず、最適な配置に再編する
【経営での活用法】
① 守る対象を決める
② 切るラインを明確にする
③ 損失を受け入れる
④ 被害を止める
⑤ 次に資源を振り向ける
【核心メッセージ】
人は損失で負けるのではない。
「切れなかった判断」で負ける。
だから
・何を守るかではなく
・どこで捨てるか
ここが勝敗を分ける。
決断が遅れるほど、
選択肢は消えていく。
【まとめ】
・守る対象を絞る
・不要なものを切る
・全体を残す
重要なのは
・どれだけ持つかではなく
・どこで手放すかである
損失は避けられない。
しかし拡大は止められる。
これが
「小を犠牲にして大を守る」ということである。
【次回予告】
三十六計|第12話
順手牽羊 ~流れに乗って奪う~
三十六計シリーズ目次
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