孫子の兵法|第30話 地形は戦略そのものである ~地形篇が教える六つの地形~(地形篇)
戦いは場所で決まる
戦争は兵士の数で決まる。
多くの人はそう考える。
しかし孫子は違う視点を持っている。
戦争を決めるのは兵力ではない。
場所である。
孫子は地形篇でこう述べている。
地形有六。
地形には六つの種類がある。
孫子は戦場を六つの地形に分類し、
それぞれに適した戦い方があると説明している。
孫子は言う。
戦略とは、地形への適応である。
戦争とは同じ条件で戦うものではない。
戦う場所によって戦略は変わる。
六つの地形
孫子は戦場を次の六つに分類している。
① 通形 (つうけい)
両軍が自由に行き来できる地形。
➡先に高所を取った方が有利になる。
② 挂形(けいけい)
進めるが戻りにくい地形。
➡敵が準備していない時だけ攻撃する。
③ 支形(しけい)
どちらが攻めても不利。
➡無理に戦うな。
④ 隘形(あいけい)
狭い道。
➡先に占領した側が有利になる。
⑤ 険形(けんけい)
山などの険しい場所。
➡高所を押さえること。
⑥ 遠形(えんけい)
敵との距離が遠い。
➡無理に戦うな。
これらは単なる地理ではない。
戦場の関係性を示している。
例えば「通形」。
これは双方が自由に移動できる場所だから
平野や開けた地形がこれに当たる。
この場合、孫子はこう述べている。
先に高地を取り、補給路を確保せよ。
戦う前に有利な位置を確保せよ。
逆に「隘形」。
これは狭い場所だから
山道や峡谷などだ。
この場合、先に占領した者が圧倒的に有利になる。
このように地形によって
戦い方は完全に変わるのだ。
歴史に見る地形の力
地形が戦争を決定した例は多い。
例えば長篠の戦い。
当時、武田騎馬軍団は
日本最強と言われていた。
そこで織田信長は
設楽原という地形を利用した。
ここで重要なのは
武器(鉄砲隊)だけではない。
信長は
・川を前面の障害物として利用し
・馬防柵を設け
・騎馬突撃ができない状況を作り
・横一列に鉄砲隊を三段配置させた
つまり信長は
戦術だけではなく、地形で勝った
のである。
孫子が言う
「地形を制する者が戦いを制する」
という言葉そのものの戦いである。
孫子は
地形によって戦い方は変わる、と説いている。
凡軍好高而悪下、
貴陽而賤陰。
高い場所を取り低い場所は避けよ、
日当たりの良い場所(陽)を選び日陰(陰)は避けよ。
つまり、高所を取り太陽を背にする。
すると視界は有利になり、敵の視界は不利になる。
これは現代でも、
軍事・警察・サバイバルの基本である。
ビジネスにおける「地形」
現代ビジネスにも地形は存在する。
それは「市場構造」である。
例えば
・規制
・流通網
・技術標準
・顧客習慣
これらはすべて企業が戦う地形だ。
優れた企業はこの地形を読む。
例えば
・プラットフォーム企業はネットワーク効果を利用する
・低価格企業はサプライチェーンを利用する
・ブランド企業は顧客心理を利用する
つまり
市場の地形を使って勝つ、のである。
これはまさに
孫子の地形思想そのものだ。
現代ビジネスにおける実例
地形篇を用いて勝利した事例がある。
それは、
セブン・イレブンだ。
当時の日本は、
・百貨店
・大型スーパー
が主流だった。
しかしセブンイレブンの創業者・鈴木敏文氏は、
経営は規模の大小ではなく
地形の使い方次第だと考えた。
そこで、
小型店舗 ✕ 住宅地
という場所を選んだ。
大企業が戦う「巨大店舗市場」ではなく
「生活圏市場」を選び成功させた。
これはまさに
戦場を変えた
戦略だ。
地形篇が教える戦略
地形篇の重要なポイントは
一つである。
戦略は固定できない。
場所が変われば
戦い方は変わる。
兵力が同じでも
・地形
・補給
・移動
が変われば
戦力はまったく違うものになる。
だから孫子は言う。
戦場を理解せよ。
戦術の前に
環境を理解せよ。
核心テーマ
地形篇の核心は明確だ。
戦略は環境の産物である。
強い軍とは
強い兵士を持つ軍ではない。
環境を利用できる軍である。
つまり
戦場(地形)を味方につける軍が勝つ。
まとめ
地形篇は、
戦場環境の理解を教える篇である。
・戦争は場所で決まる
・地形には種類がある
・戦略は地形に適応させよ
・環境を利用せよ
優れた将軍は
兵力だけを見ない。
戦場を見る。
なぜなら戦争とは
地形が戦略そのものだからである。
次回予告
第31話 戦争は力の勝負ではない
~孫子が明かした「敗北の六構造」~(地形篇まとめ)
孫子の兵法シリーズ目次 ※最新記事までの全話が確認頂けます
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