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4-1|なぜ医療業界出身者が率いても、医療系派遣は伸びなかったのか ― 属人営業という判断バイアス ― (1/4)

医療系派遣会社の経営再建を任されたときの話です。
社長も営業部長も製薬会社(MR)の出身者で、
どちらも好成績を収めた、営業に自信がある方々でした。

医療業界に精通し、ドクターとの関係構築にも長けていました。
一見、これ以上ない布陣に見えました。

しかし現実は、
売上低迷・慢性赤字。
要するに「受注」が取れませんでした。

営業の前提は、次のようなものでした。
• 営業先は総合病院が中心
• 車で回り、まずドクターとの人間関係を作る
• 宿直の夜に差し入れを持って訪問する
• MR営業の成功体験踏襲が前提


このやり方自体が「間違い」だったわけではありません。
しかし、派遣営業には適合していなかったのです。

派遣ニーズの中心は、
• 医療事務
• 病院総合受付
• 会計
• レセプト処理
などです。

これらは、
• ドクターとの深い信頼関係
• 長期的な人間関係

から生まれるものではなく、
• 急な欠員
• 突然の退職
• 明日から来てほしい

という偶発的・突発的な需要です。

つまり、
MRとしての成功体験そのものが判断バイアスになっていた
ということです。


私が変えたのは「人」ではなく「前提」

やったことは、3つだけです。

① 営業対象を変えた

総合病院中心から、
クリニック・個人病院・歯科・動物病院へ。
意思決定が早く、突発ニーズが発生しやすい領域に集中しました。

② 営業手段を変えた

車移動から、自転車営業へ。
町中の施設を細かく回り、
「たまたま今困っている」を拾える構造を作りました。

③ 営業思想を変えた

人間関係重視から、
偶発需要を捕捉する仕組み型営業への転換です。


属人営業から「落ち穂ひろいモデル」へ

私はこのモデルを、こう例えています。

経験者は湖で釣りをするとき、スポットを見極め、狙い撃ちする。
私は1メートルおきに釣り竿を立て、毎日一度餌を替えに行く。

するとどこかで魚がかかる。
魚を見てから餌を最適化する。
すると、さらに釣れる。

これは
標準化 × 偶発性 × 改善ループのモデルです。


経験者は過去の経験蓄積から、
自分が定めたポイントで魚が釣れないと場所を変えます。
或いは餌を変えたり、釣り方を変えます。

しかし初心者にはそのような芸当はとてもできません。
だから想定した魚が好む餌をつけた釣り竿を等間隔でたくさん置きます。
そして毎日餌を変えに行きます。

つまり分母が大きければ結果と言う分子を得る確率が高まります。
最初は「偶然」でいい。
しかしこの「偶然」を見つけたらそれを「必然」に変えていきます。
経験値や勘に頼れば結果を出せる人は容易に増やせません。
しかし魚が釣れる原因を探し、
魚を釣る再現性を高めれば、あとは勝手に釣れるようになります。

営業は属人芸、という考えを一度棚上げして
営業を科学してみましょう。
そうすれば結果が出ない原因が、
「経験」や「業界常識」に辿り着きます。


次の回では、「改革が現場に受け入れられた理由」について説明します。

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