三十六計|第26話 指桑罵槐 ~本当に叱られているのは、誰か~
人は、目の前で怒られている人を見る。
そして思う。
「あの人が叱られている」
しかし組織では、
本当に狙われている相手が
別にいることがある。
重要なのは、
「誰に言ったか」ではなく、
「誰に届いたか」である。
【三十六計 第二十六計の意味】
指桑罵槐(しそうばかい)
別の対象を指しながら、
本命にメッセージを伝える戦略。
重要なのは、
直接言わないことだ。
・面子を潰さない
・抵抗を招かない
・周囲にも同時に伝わる
・空気ごと変える
こうすることで、
対立を避けながら統制を取る。
これが指桑罵槐である。
【現代語訳】
組織では、正論ほど扱いが難しい。
会議で上司がこう言う。
「報告が遅い人がいる」
「数字への執着が足りない」
誰のことか、皆わかっている。
しかし名前は出さない。
なぜか。
・名指しすると反発される
・言い訳を招く
・関係が壊れる
・一対一の対立になる
一方で、
・全体に向けて言えば本人に届く
・周囲も同時に引き締まる
・主導権を維持できる
人は、言葉そのものより、
場の空気で動く。
【歴史の事例】
前漢の時代、皇帝である武帝は、
権力を持ち始めた家臣に対し、
正面からの叱責を避ける場面があった。
紀元前120年前後、
宮廷内で規律の乱れが問題となった際、
武帝は特定の重臣を名指しせず、
・軽い違反をした官吏を厳しく処罰する
・法令の運用を急に厳格化する
・全体に対して規律強化を宣言する
といった対応を取った。
すると、
本来問題視されていた有力家臣たちは、
「次は自分が対象になる」
と理解し、自ら行動を改めた。
正面衝突を避けながら、
秩序だけを正したのである。
【経営事例】
ある営業会社で、
トップ営業部長の行動が問題になっていた。
・部下への高圧的態度
・案件情報の抱え込み
・ルール軽視
しかしその人物は売上エース。
経営陣も直接叱ることができなかった。
ところがこの会社は、
組織の秩序を崩さずに問題を解消した。
どうして改善できたのか?
この会社は、
本人を直接叱責しなかった。
代わりに、
全体に向けて制度変更メッセージを出した。
・「成果だけで評価しない」ことを明言
・情報共有率を評価項目に追加
・部下育成を昇格条件に追加設定
・協働案件の必須化を追加
すると、
・行動基準が明確になり
・組織全体の空気が変わり
・問題行動が目立つ構造が生まれた
結果として、
・当該部長の行動は改善
・営業部の離職率が低下
・部門売上は成長
・次世代管理職が増加
誰も名指ししていない。
しかし全員が理解していた。
この会社は、
直接叱らずに組織を正したのである。
【解説】
この企業経営者はこう考えた。
①「正面衝突はコストが高い」
実績のある人材ほど、
対立は組織を揺らす。
②「問題は個人ではなく構造」
一人を叱っても、
仕組みが同じなら再発する。
③「人は評価で動く」
言葉より、
評価制度が行動を変える。
④「空気で統制する」
個別指摘ではなく、
全体基準を変える。
これがまさしく、指桑罵槐である。
【経営応用事例】
① マネジメント
問題を名指しせず、
ルール変更で正す
② 営業組織
成果偏重から
行動基準へ転換する
③ 人材育成
個別注意ではなく、全体基準により
特定個人だけではなく組織全員を導く
共通するのは、
直接攻撃より環境設計の方が
はるかに強いということだ。
【核心メッセージ】
怒る相手は一人。
動く相手は全員。
つまり、対象は一人。
しかし全体に伝えると事で
組織全員の行動が改善されるということだ。
【まとめ】
指桑罵槐とは、
遠回しな表現ではない。
・本命へ届かせる
・周囲にも伝える
・対立を避ける
・秩序を守る
ための戦略である。
本当に叱られているのは、
目の前の一人ではない。
その場にいる全員である。
次回予告
三十六計|第27話
假痴不癲 ~賢い者ほど、愚かに見せる理由~
三十六計シリーズ目次
投稿記事インデックス ★こちらで関心ある記事をお探し頂けます
孫子の兵法シリーズ目次 ※全42話が確認頂けます
いいなと思ったら応援しよう!
もしよろしければ応援をお願いいたします。いただいたチップはクリエイター活動費に使わせていただきます!ありがとうございます。