世界の偉人シリーズ|第7話 井深 大 ソニー共同創業者・日本を世界最高峰の技術大国へ導いた男
世の中には、優れた技術者は多い。
だが、
「その技術によって、人間の生活がどう変わるか」
まで見えていた人は少ない。
機械を作る人はいる。
性能を高める人もいる。
しかし、「未来の生活そのもの」を先に想像し、
そこへ技術を配置していた人物は極めて少ない。
彼は、その一人だった。
井深大
「技術者の創業者」
として語られることが多いが、
実際には単なるエンジニアではない。
・哲学者
・未来予測者
・製品思想家
・生活編集者
に近い人物だった。
1908-1997|Sony共同創業者。
【技術者ではなく「未来設計者」だった】
当時、多くの技術者は、
「何が作れるか」を考えていた。
しかし井深は違った。
彼が考えていたのは、
「人間は、これからどう生きるか」
だった。
技術から考えていない。
先に、
・生活
・感情
・行動変化
を想像していた。
その上で、
必要な技術を配置していたのである。
ここが非常に重要だ。
だから彼は、
高性能
高機能
高耐久
だけでは動かなかった。
むしろ、
・小さい
・持ち歩ける
・感動する
・新しい
・触りたくなる
を重視した。
これは当時の日本企業としては、
かなり異質だった。
【焼け跡の小さな会社】
終戦後、日本は焼け野原だった。
物資もない。
金もない。
未来も見えない。
普通なら、まず生き残りを考える。
だが井深は、そんな時代に、
「世界へ出る会社」を考えていた。
1946年、東京通信工業を設立する。
後の Sony である。
まだ名前もない。
資金もない。
社員も少ない。
しかし彼らには、奇妙な熱気があった。
未来を作る。
その感覚だった。
【盛田昭夫との関係】
井深と盛田昭夫は、よく、
技術の井深
営業の盛田
と整理される。
しかし実際は、もっと複雑だった。
確かに井深は、技術理解が深かった。
しかし彼は、単なる技術者ではない。
むしろ、「人類がこれからどう変わるか」
を見ていた。
一方、盛田昭夫は、
その未来を市場へ翻訳する力を持っていた。
だから Sony は強かった。
未来を見る井深。
世界へ広げる盛田。
二人の役割は、機械と営業ではない。
未来と市場だった。
【「宇宙人」のような会社だった】
当時の日本メーカーは、非常に堅実だった。
壊れにくい。
性能が高い。
価格競争に強い。
それが王道だった。
しかし Sony は違った。
・なぜ、こんな小さいのか
・なぜ、こんな形なのか
・なぜ、こんな機能が必要なのか
周囲から理解されない製品も多かった。
井深は、そこに意味を感じていた。
新しい生活は、
最初は理解されない。
そう考えていたからだ。
【最初の大失敗】
Sony初期、
井深たちは電気炊飯器を開発している。
現在では意外に思えるが、
当時はまだ、「家庭電化そのもの」
が新しい時代だった。
家事を変えたい。
生活を変えたい。
井深は、そこへ強い関心を持っていた。
しかし結果は大失敗。
木桶に電極を入れ、
電流で米を炊くという、
かなり大胆な構造だったが、
・生煮え
・焦げ
・ベチャベチャ
が頻発した。
まともに炊けない。
結局、製品化には至らなかった。
普通なら、ここで慎重になる。
しかし井深は違った。
失敗しない会社は、
挑戦していない。
そう考えていた。
つまり彼にとって失敗とは、
恥ではない。
未来へ行く途中だった。
この思想が、
後の Sony の挑戦文化を作る。
だから Sony は、失敗を恐れず、
次々と未知の製品へ挑めたのである。
【ウォークマン秘話】
Sony Walkman は、
社内でかなり反対された。
理由は単純だった。
「録音できないから売れない」
当時、カセット機器とは、
録音する物だった。
つまり常識的には、
再生専用機など、中途半端に見えた。
しかし井深や盛田は、別のものを見ていた。
人は、音楽を持ち歩きたがる。
ここだった。
彼らは、「機械の機能」ではなく、
「人間の行動変化」
を見ていたのである。
これは極めて重要だ。
未来を変える商品は、
「性能競争」からは生まれにくい。
人間の行動変化から生まれる。
【映像の民主化を見抜いていた】
1970〜80年代
まだ映像は、専門家のものだった。
ビデオカメラはテレビ局。
映像制作は特殊技能。
そんな時代である。
しかし井深は、繰り返し語っていた。
これからは、
誰でも動画を撮る時代になる。
当時としては、
かなり奇妙な発想だった。
しかし彼は、
・小型化
・個人化
・映像の民主化
を強く予見していた。
彼は、
「映像は一部の専門家だけのものではなくなる」
と考えていたのだ。
この思想は後に、
・ハンディカム
・デジカメ
・スマホ動画
・YouTube文化
へ繋がっていく。
井深は、単なる発明家ではない。
「人類の行動変化」を見ていた。
【永遠の少年】
井深大は、
理系天才というより、
非常に人間臭い人物だった。
有名なのは、子供のような好奇心である。
新製品を見ると、
自分で触りたがる。
分解したがる。
夜中まで試したがる。
周囲からは、「永遠の少年」
と言われていた。
これは単なる性格ではない。
好奇心を失わなかった。
そこが、Sony の原動力になった。
【失敗を異常に許容した】
Sony初期は、失敗だらけだった。
炊飯器失敗
製品不良
事故
赤字
しかし井深は、失敗を過剰に恐れなかった。
むしろ、
失敗しない会社は、挑戦していない。
そう考えていた。
当時の日本企業としては、
かなり異端だった。
普通は、減点を嫌う。
しかし井深は、
挑戦が止まることを嫌った。
だから Sony は、変な会社だった。
そして、変だったから、未来へ行けた。
【学歴より好奇心】
井深は、学歴主義を嫌った。
もちろん能力は見る。
しかし彼が本当に重視したのは、
「好奇心」
だった。
面白がれるか。
夢中になれるか。
触りたがるか。
そこを見ていた。
だから Sony は、
比較的自由な会社になった。
管理で縛りすぎない。
個性を殺しすぎない。
それは、
「人は管理より好奇心で動く」
と彼が理解していたからである。
【ジョブズに近かった男】
後年、
Apple の Steve Jobs は、
技術を人間体験へ変えた人物
として知られる。
だが実は、井深大も非常に近い。
彼もまた、機械そのものより、
・人がどう感動するか
・生活がどう変わるか
・未来がどう見えるか
を重視していた。
だから Sony は、
単なる家電メーカーではなかった。
未来のライフスタイル企業だったのである。
【戦っていた相手】
井深が戦っていたのは、
競合企業だけではない。
本当に戦っていたのは、
前例主義
常識
減点文化
管理思想
「今まで通り」だった。
だから彼は、
小さくし、
持ち歩かせ、
自由にし、
個人へ解放した。
つまり彼が作っていたのは、
家電ではなく、
「未来の生活」だったのである。
【これは戦略だったのか】
結果だけ見れば、Sonyの成功譚。
しかし中には、非常に強い型がある。
・未来の生活を先に見る
・技術より行動変化を見る
・性能より感動を見る
・小型化で生活導線を変える
・失敗を許容する
・好奇心を重視する
・管理より自由を重視する
・常識の逆側に未来を見る
極めて未来先行型の構造である。
井深は、単なる技術者ではなかった。
彼は、
小型ラジオ
↓
トランジスタ化
↓
持ち運ぶ文化
↓
ウォークマン
↓
個人電子機器時代
という、未来への連続性を見ていた。
彼が見ていたのは、
「何が作れるか」ではない。
「人間の生活が、これからどう変わるか」
だった。
だから彼は、
機械を小さくし、
個人へ近づけ、
感情へ入り込み、
生活の中へ電子機器を浸透させていった。
しかも面白いのは、
性能競争だけをしていないことだ。
彼が重視していたのは、
驚き
楽しさ
感動
未来感
だった。
つまり Sony が作っていたのは、
単なる家電ではない。
「未来の生活体験」
だったのである。
【まとめ】
井深大は、
単なる技術者ではなかった。
彼が見ていたのは、
「人間は、これからどう生きるか」
だった。
だから Sony は、
・小さく
・自由で
・感情的で
・持ち歩けて
・ワクワクする
製品を生み続けた。
それは単なる家電ではない。
未来の生活提案だったのである。
そして現在、
スマホで動画を撮り、
音楽を持ち歩き、
個人が発信する時代になった。
井深が見ていた未来は、
半世紀後、現実になった。
彼は、
機械を作っていたのではない。
人類の生活導線そのものを、
静かに変えていたのである。
次回予告
世界の偉人シリーズ|第8話 早川徳次
早川電機工業(現、SHARP) 創業者
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