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11-2|人が辞めなかった理由 -判断の渡し方を間違えなかったから-

判断の渡し方、それは「任せ方の設計」

判断を任せたとき、
人が辞めるか、踏みとどまるか。

その差は、
能力でも覚悟でもありません。
人望やカリスマでもありません。

それはただ一つ、
判断の渡し方、「任せ方の設計」を間違えなかったかどうか
それだけです。


任せ方には、二つの型がある

判断を任せるとき、
実務上のやり方には大きく分けて二つの方法があります。

一つ目は、時間をかけて学ばせる方法です。
いわゆる継承準備として数か月間横に置き、

・会議に同席
・判断軸
・意思決定の順番

を、日常の中で見せ続けてから任せる。

責任者を任せようという相手なので、
行動を共にすれば、自然と理屈で理解していきます。

一定時間が経ったら、
「君ならどう判断する?」と問いかけ、
判断軸のズレや、理屈が弱い部分は、
その都度きちんと説明して修正していく。

判断軸を体に染み込ませてから任せる。

これが、
本人だけでなく、周囲が辞めないための担保になります。


もう一つは、準備期間をほとんど設けず、
ある日突然「君に任す」と権限移譲する方法です。

ただし、このやり方が成立するには条件があります。

・部下からの質問に回答しない(後任に連絡させる)
・分からないことは、いつでも電話で教える
・最初の3か月は、徹底して付き合う
・最終責任は自分が取る

この前提を明確にした上で、
水面下で密にフォローする。

重要なのは、
どちらの方法を選ぶかではありません。


準備なしの権限移譲が成立する条件

後者が成立するのは、
次の条件が揃っているときだけです。

・新体制に切り替えたい明確な理由がある
・任せた方が、その人は伸びると判断している
・分からないことを、遠慮なく質問できる関係性がある

この関係性があるなら、
「任せながら教える」は成立します。

なぜなら、
実戦でしか身につかない判断力があるからです。


ここで決定的に重要なこと

「人が辞めなかった」には、
もう一つの意味があります。

それは、
任された本人だけでなく、
周囲の人も辞めなかった

ということです。

責任者が交代するとき、
現場では必ずハレーションが起きます。

・なぜ、あの人なのか
・自分は評価されていないのではないか
・やり方が変わるのではないか

ここで判断を誤ると、
後任は残っても、周囲が静かに辞めていきます。


任せてはいけない判断、任せるべき判断

ここで、明確に線を引きます。

任せてはいけない判断
・事業の方向性
・人事の最終決定
・評価や処遇
・失敗したときに、取り返しがつかない判断

これらは、必ずトップが引き受ける。

失敗したときに、
「それは俺の判断だ」と言える覚悟が必要だからです。


一方で、任せるべき判断もあります。
・現場で起きる日々の選択
・可逆性のある施策
・失敗しても学びに変えられる判断

ここを任せないと、
人は育たず、組織は重くなります。


人が辞めなかった本当の理由

任された人は、
「責任を押し付けられた」と感じなかった。

周囲の人は、
「判断が公平で、守られている」と感じた。

だから、人は辞めなかった。

判断を丸投げしたのではありません。
判断できる設計を渡しただけです。


まとめ

判断を任せるとは、
自由を与えることではありません。

恐怖を取り除くことです。

・どこまで任されているのか
・どこから守られているのか
・失敗したとき、誰が責任を取るのか

これが見えている組織では、
人は逃げません。

仕事を渡すのではなく、
判断できる設計を渡す。

・判断基準を渡す
・責任の所在を示す
・周囲との関係まで設計する

ここまで含めて、
はじめて「人が辞めない権限移譲」になります。

任せる前に、
その人だけでなく、
その人の周囲まで見ているか。

それが、
組織が壊れるか、強くなるかの分岐点です。

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