見出し画像

三十六計|第18話 擒賊擒王 ~中心を押さえ、全体を止める~

人は、
「全体をコントロールしよう」
と考える。
しかし現実には、全体を動かしているのは
「ごく一部の中心」である。
そこを押さえれば、全体は自然に止まる。


【三十六計 第十八計の意味】

 擒賊擒王(きんぞくきんおう)
 賊を捕らえるなら、まず王を捕らえる

末端ではなく、意思決定の中心を押さえることで、
全体を一気に制御する戦略。

重要なのは「数を制圧すること」ではない。
『構造の中心を押さえること』である。


【現代語訳】

組織や市場には、必ず中心がある。

・意思決定者
・評価基準
・資金の流れ
・影響力のある少数

しかし多くの人は末端を見る。

・現場の反応
・個別の顧客
・表面的な数字

しかし、本質はそこではない。

・誰が決めているのか
・何が判断を左右しているのか
・どこが止まれば全体が止まるのか

そこを押さえることが重要なのだ。


【歴史の事例】

中国・三国時代、
魏の曹操は広大な領域を統治する中で、
反乱勢力に対して局地戦を繰り返すのではなく、
指導者層の排除を優先した。

特に有名なのは潼関の戦い(211年)
における馬超・韓遂連合軍への対応である。

曹操は正面から各部隊を逐一撃破するのではなく、
連合軍内部の指揮系統に揺さぶりをかけた。
結果として、

・連合軍の意思決定が分裂し
・指揮系統が崩れ
・統一行動が取れなくなった

最終的に連合軍は統制を失い、
各個撃破される形となった。

これは兵の数を減らした戦いではない。
指揮の中心を崩したことで
全体が崩れた戦いである。


【経営事例】

ある企業が、
複雑な意思決定構造を持つ法人営業において、
現場担当者ではなく意思決定権を持つ
キーパーソンへのアプローチに集中した。

その結果、
案件全体の停滞が解消され、
契約成立までのスピードは大幅に短縮された。
この企業はなぜ「中心への集中」
によって成果を最大化できたのだろうか?


この企業はまず以下を行った。

・意思決定権を持つ人物の特定
・現場担当者ではなく最終承認者への接点強化
・評価基準(と優先順位)の再確認

すると、

・現場での停滞が解消され
・判断プロセスが短縮され
・社内調整の影響が減少した

さらに、

・意思決定のボトルネックが解消され
・案件の進行速度が安定し
・成約率が上昇した

結果として、

・複雑な組織構造を持つ案件も受注が進み
・営業プロセスが短縮され
・全体の成果が改善された

この企業は「全員を動かした」のではなく、
「決める一点を動かした」だけである。


【解説】

この企業経営者はこう考えた。

① 現場は「利用者」であって「決定者」ではない

いくら現場担当者が好意的でも、
決裁権がなければ案件は進まない。

問題は現場の温度感ではなく、
誰が最終判断を持っているかだ。

② 案件が止まる場所は構造的に決まっている

・決裁者
・予算承認
・リスク判断

大企業営業では、
止まる場所はだいたい同じだ。

③ 説得相手を変えると、必要な武器も変わる

現場には便利さを売る。
経営層には、

・利益改善
・コスト削減
・リスク低減

を売る。
相手が変われば、提案は変わる。

④ 中心を押さえるとは、最重要ボトルネックを潰すこと

全員を説得することではない。
最も強い拒否権を持つ場所を攻略することが肝要。

そこが動けば、
周囲は自然に動き始める。

これが「中心を押さえて、全体を止める」
つまり物事の中心を動かすことで
全体を動かし結果を得る流れを作った、ということだ。


【経営応用事例】

① 営業戦略

現場ではなく
決裁者に直接アプローチする

② 組織戦略

全員ではなく
意思決定レイヤーを特定する

③ M&A戦略

現場統合ではなく
経営層の意思統一を優先する


【核心メッセージ】

全体は動かす必要はない。
中心を押さえれば、全体は自然に動く。


【まとめ】

擒賊擒王とは、
全体を制圧する技術ではない。

「中心を押さえて全体を止める技術」
である。

・末端を見ない
・中心を探す
・一点を押さえる

勝敗は量ではなく、中心で決まる。

モノには必ず重心があるように、
ビジネスや案件にも同じように「重心」となるものがある。
それをも極めて、これを動かすことで結果がついてくる。


次回予告


三十六計|第19話
釜底抽薪 ~原因を断てば、争いは消える~


三十六計シリーズ目次
投稿記事インデックス ★こちらで関心ある記事をお探し頂けます


いいなと思ったら応援しよう!

Keiichi Kojima | 判断の設計を支える もしよろしければ応援をお願いいたします。いただいたチップはクリエイター活動費に使わせていただきます!ありがとうございます。