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世界の偉人シリーズ|第31話 リーヴァイ・ストラウス リーバイス創業者・金を掘らずに、金鉱夫に売った男

1848年、
アメリカ・カリフォルニアで金が発見された。
後に「ゴールドラッシュ」と呼ばれる歴史的大事件である。

世界中から一攫千金を夢見る人々が押し寄せた。
しかし、その中で最も成功した人物は誰だったのだろうか。

金を発見した人か。
土地を持っていた人か。
それとも金鉱を掘り当てた人か。

実は違う。
その答えの一人が、彼である。

彼は金を掘らなかった。
それどころか鉱山で働いたことすらない。
それでも世界的企業を築き上げた。
なぜか?

彼は人々が見ていた「金」ではなく、
人々が抱えていた「問題」
を見ていたからである。


リーヴァイ・ストラウス
ジーンズという世界標準の作業服文化を作った実業家。
ドイツ系移民。
1829-1902|リーバイス創業者。


ドイツの貧しいユダヤ人少年

1829年、ドイツ・バイエルン地方のユダヤ人家庭に生まれた。
父親は病気で亡くなり、
家計は決して豊かではなかった。

1847年、18歳になった彼は母や姉妹とともにアメリカへ移住する。
移住先はニューヨーク。
兄たちが営む雑貨商で働きながら、

布地
裁縫用品

毛布
日用品

などを扱った。
後に世界的ブランドを築く男だが、
この時はどこにでもいる移民の青年に過ぎなかった。

しかし、この経験が後の成功につながる。
なぜなら彼は、
「人は何に困っているのか」
を聞く習慣を身につけたからである。


ゴールドラッシュと運命の決断

1848年、カリフォルニアで金が発見される。

多くの人々は夢を見た。
金を掘れば人生が変わる。
財産が手に入る。
大金持ちになれる。

しかしリーヴァイは少し違う角度から見ていた。
「金を掘る人間は何を必要としているのか」
である。

1853年、彼はサンフランシスコへ移り商売を始めた。
金鉱夫向けに

布地
衣類
日用品
工具

などを販売した。
後にアメリカでは有名な言葉になる。

「金鉱を持つより、金鉱夫に売れ」

である。
実際、ゴールドラッシュでは対照的な結果が生まれている。

金が発見された土地の所有者ジョン・サッターは、
押し寄せた採掘者によって土地を荒らされ、
最終的に破産した。

一方、リーヴァイは金を掘らず、
金を掘る人々に必要なものを売って成功した。

同じ時代。
同じ場所。
しかし見ていたものが違ったのである。


何者でもなかった商人

後に世界的ブランドとなるリーバイスだが、
リーヴァイは最初からジーンズ屋だったわけではない。
彼の商売は、

布地
テント
毛布
雑貨

を売る普通の商店だった。
つまり、「何を売ればよいのか」
まだ見えていなかったのである。

成功者として語られる彼にも、
何者でもなかった時代があった。
実際、ゴールドラッシュ熱狂が落ち着くにつれ
競争は激しくなった。

誰でも売れる時代は終わった。
そこで彼は改めて顧客を観察した。
すると一つの共通した不満が見えてきた。

「ズボンがすぐ破れる」

である。


デニムとジーンズ

ここでひとつ面白い話がある。

人々は、ジーンズのことを「デニム」と呼ぶ。
なぜデニムと呼ぶのか、
その由来をご存知だろうか?

実はこの言葉はフランスの
ニーム(Nîmes)という街に由来している。

ニームで作られていた丈夫な綾織物
「セルジュ・ド・ニーム」が縮まり、

デニム(Denim)

になったと言われている。
リーヴァイはこうした丈夫な布地を仕入れ、
労働者向けの作業着として販売していた。

つまり、ジーンズは最初はファッションではなかった。
現場で働く人々のための道具だったのである。


ジーンズを発明した男ではない

意外なことに、
リーヴァイはジーンズの発明者ではない。
発明したのは、ネバダ州の仕立て屋
ジェイコブ・デイビスだった。

鉱夫たちのズボンは、
ポケットや股の部分からすぐ破れてしまう。
そこでデイビスは、
銅製リベットで補強する方法を考案した。

しかし彼には特許を取得する資金がなかった。
そこで取引先だったリーヴァイに相談する。
ここで経営者としての器が試される。

普通ならどうするだろう。
アイデアを安く買い叩くかもしれない。
あるいは真似をするかもしれない。
しかしリーヴァイは違った。
共同で特許を取得したのである。

1873年、世界初のリベット補強ジーンズが誕生する。
彼は発明家を利用しなかった。
発明家と組んだ。
この判断が後のリーバイスを生んだ。


家業から企業へ

特許取得後、リーヴァイの会社は大きく変わる。
単なる商店から、製造業へ進化したのである。
重要だったのは、

売れる商品を作ることではない。
改善し続ける組織を作ることだった。

鉱夫の声を聞く。
製品を改良する。
また現場へ届ける。
さらに声を聞く。

この循環が企業文化になった。
リーバイスの原点は、

広告ではない。
現場主義だった。

だからこそ150年以上経った今でも
ブランドが生き残っている。


静かな成功者

巨大企業を築いたにも関わらず、
リーヴァイは派手な人物ではなかった。

生涯独身。
豪華な生活を誇示することもない。
晩年は教育支援や慈善活動に力を注いだ。

彼の関心は、
さらに金を稼ぐことではなかった。
社会へ還元することだった。

また会社についても、
急激な拡大より長く続くことを重視した。
創業者にありがちな
「俺が俺が」という人物ではない。
むしろ、顧客の声を聞き続けた
静かな経営者だったのである。


【戦っていた相手】

リーヴァイが戦っていた相手は、

競合の商人ではない。
金鉱でもない。
ましてや他のジーンズメーカーでもない。

彼が本当に戦っていた相手は、
「ゴールドラッシュという熱狂そのもの」
だった。

1848年、人々は金を求めてカリフォルニアへ殺到した。
誰もが金脈を探した。
誰もが一攫千金を夢見た。

しかし歴史を振り返れば、
ゴールドラッシュで本当に儲かった人は少ない。
むしろ多くの人は財産を失い、
人生を失い、夢を失った。

土地の所有者だったジョン・サッターですら破産している。
つまり、人々が見ていたものは「金」だった。

しかし、
リーヴァイが見ていたものは「金を掘る人間」だった。

鉱夫が増える。
鉱夫は働く。
働くほどズボンが破れる。
破れれば新しいズボンが必要になる。

そこには継続的な需要がある。
彼は熱狂の中心ではなく、
熱狂が生み出す構造を見ていた。
だから成功したのである。


【これは戦略だったのか】

結果だけ見れば、リーバイスという会社の成功譚。
しかし彼の行動には一貫した型がある。

リーヴァイの成功は、
ジーンズを作ったことではない。
市場を見る場所を変えたことだった。

多くの人はこう考えた。
「どこに金があるか」
しかし彼は違った。
「金を掘る人は何に困っているか」
を考えた。

これは現代で言えば、
商品を売る発想ではなく、
需要を探す発想である。

さらに彼は、
ジェイコブ・デイビスの発明を見た時も、
特許を奪わなかった。
共同出願を選んだ。

つまり彼は、
発明で勝ったのではなく、
仕組みで勝ったのである。

ゴールドラッシュ発生

人々が金脈を探す

鉱夫が急増する

労働環境が過酷になる

作業着が破れる

鉱夫の不満が蓄積する

リーヴァイが需要を発見

丈夫な作業着を供給

デイビスと共同特許取得

耐久作業着を標準化

労働者の支持を獲得

ブランド化

世界的企業へ成長

彼の戦略は、

「金を追わないこと」

だった。
もっと言えば、

「熱狂の中で最も冷静であること」

だったのだ。


【まとめ】

リーヴァイ・ストラウスは、
ジーンズを発明した男ではない。
彼は、

人々が見ていた「金」ではなく、
人々が抱えていた「問題」

を見た男だった。

金を掘った人々の多くは歴史から消えた。
しかし、
金鉱夫の困りごとを解決した男の名前は、
150年以上経った今も世界中で知られている。

彼が残した最大の教訓は、

「商品を売るな。問題を解決せよ。」

ということだろう。
本当に成功する経営者は、
流行を追う人ではない。
流行の中で生まれる需要を見抜く人なのである。


次回予告


世界の偉人シリーズ|第32話 ジョン・ロックフェラー
ロックフェラー創業者


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