17 関東軍防疫給水部の任務は、生物兵器コレラ対策と安全な飲水の確保
通称石井731部隊の正式名称は、関東軍防疫給水部といい、その任務は、コレラ等の生物兵器対策のための、安全な飲み水の確保、伝染病の予防・治療など、保健所と病原菌研究所のようなものである。
ご存じのように、日本の水道水は大正時代に塩素消毒が開始されており、安全な飲料水が供給されているが、これは大正10年1921年、当時東京市長だった後藤新平の発案で水道水の消毒に、第1次世界大戦が終了し、不要になった陸軍の液体の塩素系の毒ガスを塩素消毒に利用したことから始まっている。
伝染病対策の予防注射、ワクチン接種は軍隊や住民の公衆衛生上、重要なことであるが、ワクチンの予防接種と病気を感染させることとは、紙一重である。
住民に予防注射したり、ワクチンを接種したら、大量に病気を感染させているとうわさが、立つに違いない。
ここで触れておかなければならないのが、「窒息性ガス、毒性ガスまたはこれらに類するガスおよび細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書」、すなわち毒ガスや生物兵器を禁止したとされるジュネーヴ議定書 (1925年)では、毒ガスや生物兵器の使用は禁止されたが、開発、生産、保有は制限されないことだ。
したがって、どの国も条約締結後、廃棄していないので、むしろ保持したほうが敵側の使用に対する抑止力になる。条約だけでは抑止力としては心もとないので、製造を続けた国は日本だけではないと思われる。
日本は、中華民国国民革命軍がドイツから毒ガス兵器を購入していないか懸念していた。だから、第2次上海事変では日中双方が、敵の先制使用に備えてガスマスクを着けていた。(実際に、いずれかの側が催涙ガス(みどり弾)を使用した可能性が高い。)1938年以降、国民党軍はソ連から軍事援助を受けるが、毒ガスも受け取っていた可能性が高い。
日本と米国はジュネーヴ議定書 (1925年)を議会が批准しなかった。1942年1月に中国の同盟国となった米は、国民党軍に毒ガス兵器を供与した。
日本が毒ガスを使用したら、中国やアメリカが、報復として毒ガスを使用する可能性があったので、結果として抑止されていた。
しかし、アメリカが参戦するまでは、漢口陥落後の1939年、南昌作戦では、広義の毒ガスとされるもののうち、ジフェニルアルシンのくしゃみ弾(赤弾)(非致死性)、1941年の第1次長沙作戦の宜昌攻防戦では赤弾、きい弾(糜爛性ガス)(致死性)を日本軍が使用したといううわさはあるが、煙幕弾を毒ガスと勘違いした可能性は否定できない。なお国民党軍も毒ガスを保有していたし、使用した可能性もゼロではない。
毒ガスの話に脱線したが、中国軍が生物兵器を保有し使用した可能性も否定できない。第2次上海事変では日本軍内ではコレラ感染者が爆発的に急増した。そこで中国軍の生物兵器コレラ対策として、防疫を任務とする関東軍防疫給水部が関東軍に設置された。
当時、生物兵器の研究をすることは違法ではない。もちろん、捕虜で生体実験などしていたら問題だが、アメリカは東京裁判のために日本の戦争犯罪を調べつくした結果、関東軍防疫給水部や従軍慰安婦の件では起訴していない。
石井731部隊の話は、帝銀事件を題材にした松本清張の小説や日本共産党赤旗で連載され1980年代に単行本になった森村誠一の小説「悪魔の飽食」が有名だ。松本清張と森村誠一は共産党支持者であることを公表している。私も読んだが、どちらも読後、強く違和感を感じていた。松本清張は朝鮮戦争はアメリカ軍が始めた戦争であると、主張していたような人物だ。左翼好みの陰謀論を社会派仕立てにして小説を書いていたにすぎない。
