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kaniemon_photo
ショートショート 庭の底で
とても静かな夜。
ザザン、ザザンと波の音。
娘と一緒に、読書をしていると、庭から何か音が聴こえてきた。
「お母さん、なんか聴こえるね」
音楽のような、ただの音のような。
不思議な懐かしい音。
「お母さん、庭に出てみようよ」
娘と一緒に外にでる。
細い三日月が、うっすらと光っている。
ふたりで手を繋いで、スマホのライトを照らしながら、音を探す。
「お母さん!ここから聴こえるよ!」
娘が指した場所は、ブルーベリーの木の下。
ライトで照らすと、土の上に変わったフジツボのようなものがポツポツとある。
娘は耳を地面ギリギリまで近づけて聴いている。
「お母さん、これだね。このよく分からないのから、聴こえてくる」
フジツボのようなそれが、呼吸するみたいに、音を吐いている
ふたりで、しゃがみこむ。
波の音と、フジツボから聴こえる音。
波の音に乗って、
トクトクトクと不思議なリズムが響いている。
そして、ぷつぷつと泡が弾けるような音。
手を繋いだまま、目をとじる。
「ねえ、娘ちゃん、この間見た白いカイトは本物の魚だったかもね」
「そうだよね、やっぱり空を泳いでいたんだね」
トクトクトクトク...
庭で静かに鳴るリズムと、心臓の音が重なっていく。
「お母さん、泣いているの?」
目から溢れた雫は、
下に落ちずに、空に登って行った。
娘が手を伸ばして、捕まえようとする。
手をすり抜けて、雫は月に向かっていく。
そして、見えなくなった。
「ここが、海の底なら楽しいのになぁ。」
そうかな。
お母さんは、ちょっと寂しい気がするな。
娘の手が、私の手を、ぎゅっと握ってきた。
私も、ぎゅっと握り返した。

