【リレー小説】第六話:東サトルという存在
西尾のぞみと、北野明日香。
小学校の時、二人は仲良しだった、はずだ。
仲良し、どころか親友といってもいいほどに。
でも、なぜだろう。
中学で二人が話をしているところを
見た記憶がない。
クラスが離れたから。
てっきり、ただそれだけだと思っていた。
でもそれは、30歳の同窓会の時、
そうではなかったのだと確信する。
西尾のぞみが、北野明日香にした仕打ち。
思い出そうとすると、ズキン、ズキン、と
頭の後ろで何かが蠢く。
まるで、封印していた何かが、
蘇ろうとしているが如く。
同窓会は、かなり盛り上がっていた。
地元にいる奴らがほとんどだけれど、
地元とはいえ、住んでいる市は割とバラバラ。
なかなか集まる機会が無かったのだ。
西尾のぞみは、その日、ひどく酔っていた。
顔が真っ赤になっていたので、
元々酒には強くない体質なのだろう。
にも関わらず、ハイペースで酒を口に運んでいた。
会も終盤に差し掛かった時。
明日香と今も親交がある、奈美が言う。
「もう!めでたい話なんだから、
言っちゃいなよ!
みんな祝福するよー?
…もう!言わないんだったら
私が言っちゃうから!
実はぁ…、この二人、
もうすぐ結婚しまーす!イェーイ!」
そうだ。
奈美は小学校の頃からこんな感じだった。
空気を読まずに先走るところがある。
奈美の予想外の行動に
恥ずかしそうにする俺と明日香。
「えー!うっそ!おめでとうー!」
「これで同級生カップル、何組目!?」
「たしかに似合う!良いカップル!」
と盛り上がる周囲。
俺たちも、恥ずかしながらも
祝福を受け入れていた。
ドンッ!
大きな音がしてシンと静まる。
ビールジョッキを、のぞみが
机に叩きつけた音だった。
「…ねぇ。あんたさぁ。忘れてないよね!?
あんたはぁ、絶対に
幸せになっちゃいけない人間なの!
あんたは「人殺し」なんだから!」
明日香を睨みつけながら怒鳴るのぞみ。
「…え?どういうこと…?」
と眉を顰める周囲。
明日香は、泣きそうな顔をして、
「違う!私じゃない!
それを言うならのぞみでしょ…?」
と言って、そのまま走って居酒屋を飛び出す。
俺はその後を追おうとする。
荷物を持って出ようとする俺に、
のぞみは吐き捨てるように言う。
「あんたたちの結婚なんて、
絶対に私は許さないから…!」
明日香を追うが、見失ってしまった俺。
明日香の住んでいるマンションに行くが、
結局その日明日香は帰って来なかった。
何度も電話もメールもしたけれど、
そこから連絡が返ってくることはなかった。
何度もマンションに足を運んだが、
管理人に明日香のことを聞けた時には、
既に部屋はもぬけの殻だった。
奈美も明日香と連絡が取れなったようだった。
俺は悲しみに打ちひしがれた。
元々社交的では無かった俺が
さらに人と積極的に関わらなくなったのは
きっとこの出来事がきっかけだ。
数ヶ月が経ち、明日香がいなくなった
ショックから少し冷静になって、
のぞみが明日香に吐いた言葉の意味を考える。
「人殺し」
のぞみは明日香が人殺しだと言い、
明日香はのぞみが人殺しだと言う。
ズキズキ…!ズキン…!
後頭部が酷く蠢く。
なんだ…?
俺は誰かを忘れている。
「アキだったら、大丈夫だよ」
ぼんやり、脳内に現れた誰かが俺に言う。
優しく笑いかける、男の子。
笑うと目が三日月状になって無くなる。
色素が薄く、白い肌と、茶色い髪。
サトル…?
そうだ、東サトルだ。
なんで俺は、あいつのことを
完全に忘れていたんだろう。
前回までのお話はこちら。
またお前か、と思われた方、すみません!
みなさま、週末はお忙しいかと思い
またまたしゃしゃり出て書いてしまいました…!
どなたか、お時間ある方、引き継いでいただけると嬉しいです🥰
