「良いデザイン」って何だろう、暮らしの中で考えてみた
デザインって言葉を聞くと、なんだかむずかしそうに思いませんか。美しい配置、洗練された色選び、プロが作ったものだけがデザインで、僕たちの日常とは別世界のものみたいに。でも最近、ふと気づいたんです。本当は、毎日の暮らしの中に「良いデザイン」の答えがいっぱい転がっているんだって。
なぜ「あのモノ」を何度も手に取るのか
朝、歯ブラシを握る瞬間。お気に入りのマグカップでコーヒーを飲む時間。仕事から帰ってきて、ペンを手に取る動作。こういう日々の中で、あるモノには何度も何度も手が伸びて、別のモノは引き出しの奥に眠ったままになっていませんか。
この差って、実は「デザイン」がしっかり機能しているかどうかなんです。
僕の部屋には、けっこう高級な万年筆があります。友人からのプレゼントで、見た目も素敵。でも正直、手にするとしっくりこない。ペンの重さ、太さ、グリップ感。少しの違いなんですけど、毎日手に取ろうとは思わないんです。一方、セリアで500円で買った、シンプルなゲルボールペン。これは毎日ガンガン使ってます。書き心地がいい、軽くて手に馴染む、インクがサラッと出る。こういう細かい部分が揃うと、無意識のうちに何度も手が伸びる。
「良いデザイン」の本質って、ここなんじゃないかと思うんです。見た目の美しさじゃなくて、その物と人の関係が心地よいかどうか。使い手が何度も何度も選ぶ理由があるかどうか。
「使い込みたくなる」という感覚
台所の話をもう一つ。持っているまな板は3枚あります。大きいプラスチック製、小さい木製、そして中くらいの木製。毎日、無意識に手が伸びるのは中くらいの木製。なぜか。大きいのは置き場所に困る。小さいのは野菜がはみ出す。でも中くらいのやつは、出したり片付けたりがラク、サイズ感がちょうどいい、使ってるうちに色が変わるのが愛おしい。
これってデザイン的には「フィッティング」って呼ばれるものです。目的に対して、形・大きさ・素材がちょうど合ってる状態。合ってると、人は勝手に使い込みたくなる。
もう一つ気づいたのは、良いデザインのモノって、時間が経つにつれて愛着が増す傾向があるってこと。プラスチックまな板は3年経ってもプラスチック。でも木のまな板は色が深まる、風合いが変わる、使い込んだ跡が味になる。同じモノを毎日見つめていると、このプロセスが目に見えて、ますます手放したくなくなる。
こういう「時間とともに価値が増す」っていう特性も、良いデザインの大切な要素なんだと思います。
「引き算」が効いてるモノの力
最近、生活の周りを見回してて気づいたのが、良いデザインって案外シンプルだということ。
例えばシャンプーボトル。家にあるのは白と黒のツートン、凸凹がない、シンプルな四角形。一見なんてことない見た目ですが、風呂場に置いても浮かない、ボトルを逆さにしても詰まらない、どの角度から見ても「これ以上何も足さんでいいな」って感じる仕上がり。
逆に、装飾が多いボトルって、見た目は目立つけど、実際に置いてみるとちょっと浮いてる。掃除の時に邪魔。毎日見てるうちに「あ、あの装飾いらなくね」って思い始める。
デザイナーの間では「引き算」「ミニマリズム」って言葉がありますが、これが単なるファッションじゃなくて、生活のレベルで本当に機能してるんです。必要なものを最小限に、でも機能は完全に。この「潔さ」が、毎日使ってストレスがないモノを生み出す。
IKEAの家具がいい例です。見た目はシンプル。けど、組み立ての手順から、色の選択肢、置き場所の融通まで、すべてが「最小限の複雑さで最大限の使いやすさ」を目指してる。だから、世界中の色々な人に選ばれ続けてるんじゃないかな。
自分の「ちょうどいい」を見つけるレッスン
ここまで話してきて、多くの人が気づくことがあると思います。つまり、「良いデザイン」って、万能な答えじゃなくて、その人の生活や手の大きさ、趣味によって変わるってこと。
だから、「どうやって良いデザインを見つけるのか」って質問に対する答えはシンプルです。自分が何度も手に取るモノ、毎日見てて気持ちいいモノをよく観察することです。
今日から実践できることをいくつか挙げてみます。
まず、家の中で「これ何度も使ってるな」って感じるモノ3つを選んでください。それがスマートフォンでもいい、調味料ボトルでもいい、バッグでもいい。次に、その3つを触ってみて「なぜ何度も選ぶのか」を言葉にしてみる。重さはどう、色は、サイズは、手触りは。この「言葉にする」プロセスが大事。因為すると、自分の中に「ちょうどいい」の基準が生まれます。
そしてもう一つ、新しくモノを選ぶときは「最初の一週間毎日使うか」をテストしてみてください。完璧に見えるモノも、実際に毎日使ってみると、細かいストレスが見えてくる。例えば、サイズが思ったより大きかったり、色が部屋に合わなかったり。短い試用期間こそが、本当の「良さ」を教えてくれます。
デザインを「見る目」が変わると、暮らしが変わる
良いデザインについて考え始めてから、最大の変化は、毎日が丁寧になったってこと。
モノ選びが丁寧になるし、既に持ってるモノを観察する時間が増える。そうすると、使い方も工夫するようになる。削り込まれたデザインのモノを手にしてると、自分の動きも自然と整理されていく気がする。
デザインって、本来は「人の生活を良くするための工夫」です。派手さとか、高級さじゃなくて。街中を歩いてても、看板のフォント、駅の階段の手摺、スーパーの野菜コーナーの照明……見方を変えると、すべてが「誰かが考えたデザイン」に見えてくる。そして、その中には本当に心がこもったものと、テキトーなものが混ざってる。
その違いを感じ分けられるようになると、世界の見え方ぐっと豊かになります。別に高いモノを買う必要もない。100円ショップだろうが、古い道具だろうが、良いデザインは存在する。自分の目で見つけて、毎日使い込んで、その変化を楽しむ。これこそが、デザインを通じた人生の味わい方なんだと思うんです。
暮らしの中の「ちょうどいい」を探す旅。それが、実は一番面白いデザイン学習かもしれませんね。
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