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平城さやか『ふつうに働けないからさ、好きなことして生きています。』感想 〜 "not for me" な本からの学び〜

"not for me"、自分向けではない、自分に合わないという本はたくさん存在する。平城さやか『ふつうに働けないからさ、好きなことして生きています。』(百万年書房)もその一冊であった。著者と、本作が好きな人には申し訳ないが、わたしにとっては、あまり合わない本だった。でも合わないわりに、学びも多い本であったので、率直な感想を書いておきたい。

「ふつうに働く」が苦手ながら、どうにか長患いのうつ病をいなして多少無理をして週5でフルタイム労働(と夜の執筆活動)をしているわたしにとって、ヒントが多そうな本だと思い、手に取った。読後の感想は、「正直、 "not for me" だったな」であった。

本作が最も "not for me" たる所以は、終始文から滲み出る「上から目線」である。作中では、全部で100のtipsが紹介されているが、全体的に「私のやり方を教えてやろう」という言外の「上から目線」なメッセージを受けがちであった。わたしの被害妄想だったらすみません。

なんというか、語気が全体的に強い。自分のやりたいことがわからない人の気持ちが理解できない(35ページ)とか、「『できること』を基準に仕事を選ぶことは、悪魔に魂を売る行為」(41ページ)だとか。
敵を多く作りそうな発言がなんだか多いなと思った。わたしはやりたいことこそあるが、後者の発言に関しては、「『できること』で飯を食っていて悪かったですね」と少し悪態をつきたくなった。

また、うつ病と長年付き合っている人間としては、うつ病を抱える元恋人に対する「私は『自分は弱いんです』という印籠を振りかざしていきたくない」(221ページ)という発言に引っかかった。そんな著者は、「はじめに」で「私は心身ともに繊細な、弱い人間でもありますが」(3ページ)と言っている。
この自己紹介と本文の内容を受けて、持論である「自称『繊細』は全然繊細じゃない説」がまた補強されたと感じた。本当に繊細だったら、本名で活動する身でうつ病の人にそんな冷たいことは言わないだろうし、書店に飛び込み営業はできないだろうし、毎晩寝袋で寝ることはできないだろう。著者には強者として、堂々としていてほしい。自分を「夢見ることをあきらめない強い人間」(3ページ)だとわかっているのだから。

衣食住などの暮らしの話も極端な話が多く、個人的にはあまり参考にはならなかった。究道者ともいえるし、「こういう人もいるんだな」と読みはしたけれど。わたしには「ブレサリアンの存在を信じる」という発想が1ミリもないし、ファッションと美容にはそこそこ気を遣いたいし、「世間知らず」にはなりたくない(まるで悪口みたいになってしまったが、読んだ人には伝わると思う)。
個人的には特に、電子レンジへの悪口(?)「不自然な熱で調理されたものを食べたくないので使わない」(175ページ)が引っかかった。わたしは日常生活において電子レンジ(National製!)にかなり助けられているので、まるで大切な友人に向けられた悪口を聞いたような気分になった。

などと、いろいろ "not for me" なポイントが積み重なったので、「女性って仕事と同じくらい恋愛を大事にする生き物でしょう」(182ページ)ということばを真に受けて、「いや、違うんで、一緒にしないでください」と思ってしまうほどであった。

だが、ときにイライラしながら読んでいて、学んだこともそれなりにある。上に書いたことに関連することだけでも、「上から目線」は文章に滲み出ること、語気が強いと損をすること、主語の大きさに気をつけること、などを学んだ。

生き方という点でも、本作を通してひとりの人間の生き様を見させてもらい、「いくら『好きなことを仕事に』といっても、収入やファッションや美容まで犠牲にするような生き方は自分の理想とは違うな」と、生き方を改めて振り返る機会を得た。

文章の書き方という点でも、常体(だ・である調)と敬体(です・ます調)が混在する本著を読み、これらの使い分けについて、自分の文章を振り返りたいと思った。

"not for me" ではなく、純粋に「良いことおっしゃる」と思うところもあった。たとえば、簿記を学ぶとお金の管理が楽しくなる話。それはその通り、と思い、簿記3級のテキストをまた読み返した。
他には、「行動することはすばらしいが、自分の気持ちに寄り添った行動じゃないと意味がない」(154ページ)ということば。「行動至上主義」が幅を利かせる現代社会において、行動前に一度考えることは大切だと思う。

というわけで、長々と "not for me" な本の "not for me" たる所以と、それでもいろいろ学ぶことができたという読書感想文であった。
本に限らず、 "not for me" なコンテンツはたくさんある。でもそんなコンテンツからも学べることはたくさんある。だから "not for me" なコンテンツを "not for me" だと言ってすぐに接するのをやめてしまうのは、もったいない場合もある。"not for me" と書きすぎて、ゲシュタルト崩壊。

わたしは、この本に出会えて良かったと思う。本からいろいろ学んだだけではなく、多方面から自分を振り返るきっかけをもらえたから。そしてこうしてこの記事を書くことができた。著者にはお礼を言いたい。

おわり

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