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【DAY3:マリトッツォ】速くバズったものほど、早く消えています

速く広がったものほど、早く消えています。 マリトッツォも、そうでした。

パンの間から白い生クリームがはみ出した、あの断面です。 2021年、どのパン屋にも並んでいました。 気づいたら、棚から静かに消えていました。

そしてこれは、グルメだけの話ではありません。 速く広がった、自分の発信の話でもあります。

マリトッツォは、なぜ一気に広がったのか

火付け役は、福岡市のパン店アマムダコタンです。 2020年4月頃に販売を始めると、Instagramで一気に広がりました。 2020年の暮れから2021年にかけて、本格的なブームになりました。

SNSを開けば、あの断面の写真が何枚も流れてきました。 パン屋だけではありません。 カフェの棚にも、コンビニの冷蔵ケースにも並んでいました。

人気の中心は、やっぱりあの断面でした。 たっぷりの生クリームが、ぱんと顔をのぞかせています。 切った瞬間の白が、画面越しでも目を引きました。

正直、僕も一度は買った一人です。 切るときのクリームに、ちょっとわくわくしました。 ただ、心が動いたのは味よりも、新しさのほうでした。

見たことのない見た目は、写真に残したくなります。 撮りたくなるものは、放っておいても広がります。 だから火がつくのも、速くなりました。

なぜ、短命に終わったのか

ブームの最中、こんな見立てが出ていました。 2021年8月の時点で、専門家が早ければ年内に沈静化すると話していました。

実際、勢いは長く続きませんでした。 理由は、いくつか重なっていたと思います。

①後発の店が、増えすぎました。 → 生クリームを挟むだけなら、どこでも作れてしまいます。

②見た目への依存が、強すぎました。 → 一度見て驚いた断面は、二度目には驚けません。

③派生が、次々に生まれました。 → 寿司トッツォのような変化球まで登場しました。

変化球が増えるほど、もとの良さは、かえってぼやけていきました。

新しさは、一度きりの刺激です。 慣れてしまえば、ふっと薄れていきます。 同じ断面を何度も見るうちに、心が動かなくなりました。

味そのものではなく、新しさと見た目で広がりました。 だから新しさが切れた瞬間に、続ける理由がなくなりました。

定番のお菓子なら、ここで踏みとどまれたはずです。 通い続ける理由が、味の側に育っていたからです。 でもマリトッツォは、その理由が育つ前に広がりすぎました。

しかも、速く広がるほど、その瞬間は早く来ます。 みんなが同時に知って、みんなが同時に飽きます。 速さは、広がりと引き換えに寿命を縮めていました。

惜しいお菓子だったと、今でも思っています。 消えたのは、まずかったからではありません。 速さに、中身が追いつけなかっただけです。

一つだけ、注記を添えます。 速さと寿命が反比例するという言葉は、確立した一語ではありません。 新しさへの一瞬の高揚が、慣れで薄れていく現象として書いています。

そしてこの構造は、自分の発信でもまったく同じでした。

同じことが、自分の発信でも起きます

速く拡散した投稿ほど、早く飽きられていきます。 中身ではなく、新しさで広がるからです。 新しさで広がったものは、新しさが切れた瞬間に古びます。

これは、はっきり言い切れます。 でも僕も、最初は同じ場所で転びました。

正直、当時はずっと焦っていました。 伸びている型を逃すのが、こわかったからです。

Xを始めた頃は、目立つ一発ばかり狙っていました。 流行りの言い回しに乗せれば、その日は数字が動きました。

速く伸びた投稿も、たしかにありました。 通知が鳴り続けて、数字がみるみる増えました。 めちゃくちゃ嬉しかったのを覚えています。

でも、翌週にはもう何を書いたか思い出せませんでした。 あれだけ数字が動いたのに、自分の中には何も残っていませんでした。 マリトッツォの断面写真と、同じです。

追いかけるほど、足元がすり減っていく感覚でした。 数字が伸びた翌朝ほど、通知欄はむしろ静かでした。

速く伸びた数字ほど、自分の中には残りません。 そのことに、そこでようやく気づきました。 同じ場所で足踏みしている人を、その後も何人も見てきました。

では、何が残る側に回るのか

では、何が残る側に回るのでしょうか。 速さではない、と今は思っています。

毎日の積み重ねと、現場の手触りから出た言葉です。 派手ではありませんが、簡単には古びません。

借り物の新しさは、誰かに先を越されたら終わります。 でも自分の現場で擦り込んだ実感は、そう簡単には奪われません。

流行りの言葉には、期限があります。 でも現場で手が覚えたことには、期限がありません。 何度もくり返した分だけ、言葉に厚みが出てきます。

僕は2026年の2月に、Xを始めました。 速い一発ではなく、ただ毎日続けただけです。

約2ヶ月で、累計500万インプレッションまで来ました。 収益化の承認も、そこで取れました。

500万と聞くと、大きな数字に感じます。 満員の野球場を、100回埋めてもまだ届かない表示回数です。 でも中身は、毎朝の一投稿の積み重ねでした。

一日で建てた塔ではありません。 低い段を、毎日一段ずつ重ねた結果です。

だから、最初から完璧でなくて大丈夫です。 僕も転びながら、少しずつ直してきました。

速さより、残ることを選びます

認識を、一つ書き換えます。 速く広がる発信ほど強い、と思っていました。

でも速く広がったものは、マリトッツォと同じです。 速く飽きられて、消える側に回ります。

だから僕は、速く広がることより、遅くても残ることを選びます。

その、続くから残る価値の作り方は、連載最終日の有料記事で扱う予定です。

明日は、生キャラメルです。 ある人がテレビから消えた途端に、行列まで一緒に消えていったグルメの話をします。

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