【エルムステークス2026 全頭診断】札幌ダート1700mの構造から逆算する、夏のダート重賞の勝ち筋

夏競馬は、春のGIシーズンと同じ感覚で見てしまうと、思った以上にズレる。能力上位馬がそのまま走るレースももちろんあるが、ローカル開催では「能力そのもの」よりも、「その能力を今回の条件でどれだけ出し切れるか」が結果を大きく左右する場面が増えるからだ。開催何週目か、ダートの含水率、コース替わりの有無、斤量構造、輸送か滞在か、そして当日の暑さ。こうした要素が少しずつ積み重なって、春とはまったく違う結論を作っていく。夏競馬を難しくしているのは、単純に情報が少ないことではなく、評価すべき軸そのものが季節によって変わることにある。

今回取り上げるのは、2026年8月8日に行われる第31回エルムステークス。札幌11R、ダート1700メートル右回り、3歳以上オープンの別定戦で、GIII格付け、発走は15時25分である。夏の北海道シリーズ唯一のダート重賞として毎年注目を集めるが、このレースには他のダート重賞にはない固有の論点がいくつもある。小回り1700メートルという距離設定、1コーナーまでの距離が240メートルという制約、滞在競馬か輸送組かという臨戦態勢の差、そして過去5年の勝ち馬がすべて4番人気以下という強烈な波乱傾向。本稿では、まずコースの本質を整理し、そのうえで夏競馬固有の環境条件を重ね、今年のメンバー構成から展開を読み、最後に全頭を総合評価する。オッズや人気は切り離し、ここでは「能力」と「今回条件への適合度」と「展開の噛み合い」に集中して話を進めたい。


エルムステークスを考えるうえで最初に押さえるべきこと

エルムステークス2026は、札幌ダート1700メートル右回りの別定戦である。JRA番組表では「3歳以上オープン・ダ1700m・別定」と記載されており、GIIIとして施行される。斤量は3歳54キロ、4歳以上57キロが基本。収得賞金によって58キロまたは59キロを背負う馬がいる。今年の登録14頭はフルゲートと一致しており、全馬が出走可能だ。

別定戦であるから、ハンデ戦のように斤量の妙で大きく結果がぶれるレースではない。しかし、今年はナチュラルライズが59キロ、ペリエールとルクソールカフェが58キロを背負う。57キロとの1キロから2キロ差は一見小さいが、小回りコースのダート戦では道中のスタミナ消費に直結する。特にナチュラルライズの59キロは、帝王賞、かしわ記念、フェブラリーステークスとGI級を連戦してきた疲労の上に、さらに全馬中最重量を課される形だ。一般に1キロ差は1馬身前後、約0.2秒の差に相当するとされ、この経験則に基づけば59キロと57キロの2キロ差は約1馬身、約0.4秒のハンディキャップとなる。

唯一の3歳馬オンザムービーは54キロ。古馬57キロとの比較で3キロ差、約1.5馬身、約0.6秒のアドバンテージだ。ただしこの馬はダート1勝クラスを勝ち上がったばかりの上がり馬であり、斤量差だけで重賞の壁を超えられるかどうかは、能力の絶対値の問題に帰着する。


札幌ダート1700メートルは、なぜ波乱が起きやすいのか

札幌競馬場のダート1700メートルは、スタート地点が正面スタンド前の直線右側に設定されており、ダートコースをちょうど1周する形態のコースだ。1コーナーまでの距離は約240メートル。札幌のダートコースとしては標準的だが、小回りコースの先行争いを考えると決して余裕のある距離ではない。

外枠の先行馬は1コーナーまでにポジションを取りに行くと、序盤でかなりの脚を使わされる。かといって控えると、小回りコースの4コーナーで前との差を詰めきれず、264メートルの短い直線だけでは届かない。つまりこのコースは、序盤の位置取りを無理なくこなせる馬に構造的にアドバンテージがある。スムーズに好位を取れる先行力があり、かつコーナーで脚を溜められる器用さを持った馬が、着順の上位を独占しやすい。

過去5年のエルムステークスを振り返ると、この構造は明確にデータに表れている。2025年はペリエールが5番人気で優勝、2024年はペイシャエスが5番人気で優勝、2023年はセキフウが6番人気で優勝、2022年はフルデプスリーダーが9番人気で優勝、2021年はスワーヴアラミスが4番人気で優勝。直近5年の勝ち馬はすべて4番人気以下だ。上位人気が飛ぶのではなく、コース適性と展開の噛み合いが能力差を逆転させるのがこのレースの本質であり、だからこそ「能力評価の配点を下げ、適性と展開の配点を上げる」必要がある。

今回の評価モデルでは、能力25、適性40、展開35の配点比率を採用する。適性40の内訳は、コース形状への適合度が12、距離適性が8、馬場状態への対応力が8、斤量構造の有利不利が6、脚質と枠順の噛み合いが6だ。展開35は、想定ペースとの相性が15、隊列の位置取りが12、騎手のコース巧者度が8。能力が25しかないことに違和感を持つ向きもあるかもしれないが、過去5年の勝ち馬がすべて人気薄である事実が、能力だけでは足りないことを雄弁に語っている。


天候と馬場、今年はどう読むか

8月3日時点の天気予報では、レース当日の8月8日の札幌は降水確率40パーセント、最高気温31度、最低気温23度と予想されている。前日7日も降水確率30パーセントであり、にわか雨が降る可能性は無視できない。競馬天気の馬場予想ではダートの良馬場確率が60パーセントと出ており、良馬場を基本線としつつも馬場が渋る展開を常に念頭に置きたい。

札幌は8月上旬としてはやや高めの気温が予想されており、31度は北海道としてはかなりの暑さだ。暑熱対策期間中の開催であり、装鞍所集合時刻が発走40分前に変更され、下見所の周回時間も短縮される。パドックで拾える情報量が制限される中、大型馬の発汗やイレ込みの有無を短時間で見極める力が試される。

馬場状態については、良馬場のシナリオを50パーセント、馬場荒れ(稍重から外差し有利化)を35パーセント、道悪(重)を15パーセントと想定して評価を組む。


今年のメンバー構成から見える展開の輪郭

14頭の脚質を整理すると、逃げの本命はウェイワードアクトだ。マリーンステークスでは1番手を楽に取ってそのまま逃げ切り勝ち。舟山瑠泉騎手とのコンビで前走と同じ形を狙ってくるだろう。テーオーパスワードも逃げ脚質で、前走アハルテケステークスでは中団からの競馬だったが、師走ステークスでは逃げて6着に粘っている。この2頭がハナを争うか、あるいはウェイワードアクトが楽に行くかで展開の色が大きく変わる。

先行勢にはチュウワクリスエス、ヒルノハンブルク、レヴォントゥレット、アクションプランが並ぶ。中団にはテーオードレフォン、オメガギネス。後方からはナチュラルライズ、ヴァルツァーシャル、ルクソールカフェ、ペリエールが構える。

想定される基本展開は、ウェイワードアクトが単騎逃げの形になるシナリオだ。テーオーパスワードは前走アハルテケステークスで中団から差す競馬に転換しており、松山弘平騎手が無理に競りかけに行くとは考えにくい。この場合、前半3ハロンは36秒台前半、後半3ハロンは37秒台前半のミドルペースからスローペースが基本線となる。札幌ダート1700メートルのラップ構造は、1コーナーに向けた先行争いで序盤がペースアップした後、向正面ではペースが落ち着き、3コーナーから徐々に再加速するというパターンが典型的だ。逃げ馬が1頭の場合は意識的にペースを落とすことができるため、スロー寄りの持続戦になる可能性が高い。

この展開で最も恩恵を受けるのは、逃げるウェイワードアクトと、その直後につけられる先行勢。そして3コーナーから動き始めて直線入口で射程圏に入れる中団差し勢だ。後方で脚を溜めて直線だけで差し切る形は、264メートルの直線では物理的に困難だ。


ウェイワードアクトをどう見るか

総合評価の最上位に置きたいのはウェイワードアクトだ。前走マリーンステークスは、1番手を楽に取ってハイペースの中を逃げ切り、2着レヴォントゥレットに3馬身半差の圧勝。時計1分42秒8は札幌ダート1700メートルとして優秀な数字で、しかも上がり37秒5は逃げた馬のものとしては十分に速い。つまりペースを引き上げながらも自分は余力を残していたということだ。

父Maclean's Musicは米国のスプリント系種牡馬で、ダートのスピード能力に優れる。6歳にして急成長を遂げた印象で、ゴドルフィンの所有馬として田中博康厩舎が管理する。鍵になるのは距離適性と今回の斤量だ。根岸ステークスでは1400メートルで7着と伸び切れず、本質的にはマイルから1700メートルがベストの距離帯。今回は前走同様の1700メートルであり、距離の不安はない。

斤量は57キロ。前走マリーンステークスでは58キロを背負って圧勝しているため、1キロ軽くなる今回はさらに有利だ。ただし、前走は函館ダートであり、札幌ダートとは微妙にコース形状が異なる。札幌の方が直線がわずかに長い(函館は約260メートル、札幌は264メートル)。この差は微差だが、差し馬がわずかに届きやすくなる点は意識しておきたい。

オアシスステークスでは出走取消があり、そこから中2週でマリーンステークスを制している。今回もマリーンステークスから中2週のローテーションであり、消耗度は確認が必要だ。馬体重540キロの大型馬であり、夏場の暑さ(31度予想)による発汗やスタミナ消耗がリスクファクターとなる。パドックでの馬体の張り、発汗の有無が最重要チェック項目だ。

好走の条件は、単騎逃げの形が崩れないこと。テーオーパスワードに競りかけられるとペースが上がり、後続に漁夫の利を与えてしまう。枠順は未確定だが、内枠に入れば理想的で、外枠でも先行力があるため大きな不利にはならないだろう。馬場は良馬場がベストだが、稍重程度まではこなせる。


テーオーパスワードは上がり馬としての勢いを買う

テーオーパスワードは、前走アハルテケステークスを1番人気で快勝。時計1分35秒0は東京ダート1600メートルのオープン水準としてはかなり優秀で、上がり36秒0の末脚は差し切りの形で決めたもの。2走前のオアシスステークスでも2着と安定しており、充実期にあることは間違いない。

父コパノリッキーはダートの一流種牡馬で、産駒は先行力と持続力を兼ね備える傾向がある。5歳の今が最も充実したタイミングであり、松山弘平騎手との相性も前走で証明済みだ。

懸念は、1600メートルでの好走が続いている点。札幌の1700メートルは100メートル長いだけに見えるが、小回りコースの1700メートルは直線の短さゆえに道中の運びで決まるレースであり、1600メートルのスピード勝負とは質が異なる。過去にシリウスステークス(2000メートル)では7着、プロキオンステークス(1800メートル)では10着と、距離が伸びた時の成績が落ちている点が引っ掛かる。

もうひとつ、前走から中9週で北海道に乗り込む形になること。滞在態勢が整っているかどうかが不明で、関西からの輸送負荷も考慮に入れたい。追い切りでは函館のダートコースで最終調整を行い、全体時計70.2秒をマークしている。函館滞在からの札幌転戦と思われ、北海道の気候には馴染んでいるとみてよい。

好走の条件は、中団の好位で折り合い、3コーナーから動いて直線入口で射程圏に入ること。逃げにこだわると前走と違うペースを強いられるリスクがある。


ナチュラルライズは59キロと疲労の二重苦

ナチュラルライズは、出走馬中で最も高い賞金を持つ馬だ。帝王賞8着、かしわ記念8着、フェブラリーステークス7着とGI級を連戦してきた実績は、他の出走馬とは一線を画す。ジャパンダートクラシック2着の実績も光る。キズナ産駒で伊藤圭三厩舎、横山武史騎手のコンビ。能力の絶対値では、14頭の中で最上位に位置する。

しかし今回は59キロだ。全馬中最重量であり、2着ペリエールや3着ルクソールカフェの58キロよりも1キロ重い。57キロの馬とは2キロ差であり、先述のとおり約1馬身のハンディキャップとなる。加えて、帝王賞から中5週というローテーションは、GI連戦の疲労が抜けきっていない可能性を示唆する。帝王賞では8着、かしわ記念でも8着と、近2走は結果が出ていない。GI級の消耗戦を2走続けた後に、GIIIとはいえ59キロで北海道に遠征してくる形は、叩き台ローテーションの匂いがする。

過去のエルムステークスで58キロ以上を背負って好走した馬はいるが、59キロは前例が極めて少ない。能力は認めつつも、今回の条件では割引が必要だ。馬場が渋って重たいダートになれば、59キロの負荷はさらに増す。良馬場のスピード勝負の方がまだ可能性はあるが、それでも好走の条件は狭い。パドックでは馬体重の増減と気配の有無を確認したい。前走帝王賞時の500キロから大幅に増えているようだと太め残り、逆に大幅に減っていると消耗の証左となる。


ペリエールは連覇を狙えるか

ペリエールは昨年のエルムステークス優勝馬であり、札幌ダート1700メートルとの相性は証明済みだ。父ヘニーヒューズは、過去のエルムステークスでセキフウ、フルデプスリーダーなど複数の好走馬を出しており、このコースとの血統相性は最高クラスにある。佐々木大輔騎手との相性も抜群で、昨年は5番人気での優勝だった。

問題は、昨年のエルムステークス以降の成績が冴えないことだ。みやこステークス14着、チャンピオンズカップ10着、フェブラリーステークス10着、オアシスステークス4着と、重賞では苦戦が続いている。年齢も6歳に入り、ピークを過ぎた可能性は否定できない。ただし、これらの敗戦はいずれもGIかGI級のハイレベルなレースであり、GIIIのエルムステークスに条件が戻れば話は別だ。昨年も同様にGI級で凡走した後にエルムステークスで巻き返している。

58キロは昨年より1キロ重いが、札幌ダート1700メートルという舞台限定の巧者ぶりは侮れない。マリーンステークスでの4着は、ウェイワードアクトのハイペース逃げに巻き込まれた形であり、着順ほど内容は悪くない。好走の条件は、前走のような前傾ラップではなく、スローからのロングスパート戦になること。3コーナー手前から徐々にポジションを押し上げ、直線入口で3番手以内に上がっていれば、持続力で粘り込める。


ヒルノハンブルクは上昇曲線が最も急な一頭

ヒルノハンブルクは、北海道シリーズで大沼ステークス3着、マリーンステークス3着と連続好走中。父ナダルは米国の2歳チャンピオンで、産駒のダート適性は高い。4歳の成長力を見せており、3勝クラスの上賀茂ステークスを勝って以降、着実に力をつけている。武豊騎手から池添謙一騎手への乗り替わりがどう出るかは微妙だが、池添騎手は札幌コースの経験が豊富であり、不安は大きくない。

馬体重468キロ前後の小柄な馬体で、夏場の暑さによる消耗リスクは大型馬に比べて小さい。先行脚質で、好位の内を追走する競馬が得意。札幌ダート1700メートルの好走パターンに合致する脚質であり、適性面では高い評価ができる。

懸念は、重賞経験の少なさだ。平安ステークスでは16頭中14着と大敗しており、GI級はおろかGIII級でも通用するかどうかは未知数。ただし、マリーンステークス3着の内容は、ウェイワードアクトのハイペース逃げに好位でついていき、直線でも粘った力強い競馬だった。上がり37秒6はメンバー中上位であり、ペースが緩めば前走以上の着順も見込める。好走の条件は、内枠から好位を取れること。


ヴァルツァーシャルは道悪で化ける大穴候補

ヴァルツァーシャルは、平安ステークス2着、マーチステークス4着と、近走のダート重賞で堅実な成績を残している。父マクフィは芝のマイラー種牡馬だが、この馬はダートで本領を発揮するタイプであり、特に渋った馬場での持続力が武器だ。7歳とベテランの域に入っているが、高木登厩舎の管理のもとで安定した力を維持している。

最大のセールスポイントは、後方から長く脚を使える追い込み脚質と、道悪への強さだ。平安ステークス2着時は稍重馬場で、12番手から押し上げて2着に食い込んだ。マーチステークス4着時も稍重で、後方待機から7番手まで押し上げた。札幌の馬場が渋れば、前残り傾向が崩れて差し馬にチャンスが広がる。良馬場では直線の短さがネックとなり、圏内に届かない可能性が高いが、道悪になった瞬間にこの馬の評価は一気に跳ね上がる。

好走の条件は明確で、馬場が渋ること。良馬場なら消し候補、稍重なら圏内候補、重なら勝ち負けの有力候補。全馬中で最も馬場状態による評価変動が大きい一頭だ。


ルクソールカフェは適性に疑問符

ルクソールカフェは、武蔵野ステークス優勝、ジャパンダートクラシック3着という実績を持つ実力馬だ。父American Pharoahは米国三冠馬で、ダートの大舞台に強い血統。堀宣行厩舎の管理で、能力の絶対値はメンバー上位に位置する。

しかし、今回は不安材料が多い。まず前走が安田記念(芝1600メートル)の11着であり、畑違いの芝からダートに戻るローテーション。次に馬体重が544キロと大型馬で、北海道の暑さ(31度予想)による消耗リスクがある。さらに58キロの斤量を背負う。チャンピオンズカップ15着、サウジカップ5着と、近走はGI級のスタミナ戦で消耗している形跡がある。

最大の問題は、札幌ダート1700メートルの小回りコースに対する適性が未知数であることだ。武蔵野ステークスは東京ダート1600メートルの長い直線で差し切った内容であり、直線264メートルの札幌で同じ競馬ができるとは限らない。ジャパンダートクラシックの3着は大井の2000メートルであり、コース形態がまったく異なる。能力は高いが、今回の条件への適合度に疑問が残る。


オメガギネスは器用さで勝負

オメガギネスは、グリーンチャンネルカップ優勝の実力馬で、フェブラリーステークス5着という上位実績も持つ。父ロゴタイプはマイルのGI馬で、産駒はダートでの渋太さに定評がある。岩田康誠騎手とのコンビは安定しており、中団から器用に脚を使える脚質は札幌の小回りコースに合いそうだ。

ただし、近走は精彩を欠く。マーチステークスでは1番人気に支持されながら7着に沈み、重賞のあと一歩を超えられない壁にぶつかっている。武蔵野ステークス7着、根岸ステークス4着と、好走はしているものの勝ち切れない。1400メートルから1800メートルまで幅広い距離をこなす器用さは武器だが、札幌ダート1700メートルの実績がないことは割り引きたい。好走の条件は、中枠から中団の好位を確保し、3コーナーから動ける展開になること。


レヴォントゥレットは北海道巧者の資格十分

レヴォントゥレットは、マリーンステークス2着、大沼ステークス2着と、北海道シリーズで連続2着と安定した走りを見せている。父ロードカナロアはダートでの活躍馬も輩出しており、母父キングカメハメハとの配合はパワーと持続力のバランスが良い。矢作芳人厩舎で北村友一騎手のコンビ。

マリーンステークスの2着は、ウェイワードアクトから3馬身半離されたが、3番手追走から直線でも粘った内容で、着差以上に力を示した。先行脚質で好位を取れる器用さがあり、札幌の小回りコースへの適性は高い。

懸念は、勝ち切れない傾向が目立つことだ。近5走で2着が3回、3着以下が2回。重賞では一度も勝っていない。能力的にGIII級ではこなせるレベルだが、勝ち切るにはもう一段の上積みが必要だ。好走の条件は、内枠から好位を確保し、ウェイワードアクトの直後につけること。


アクションプラン、チュウワクリスエス、テーオードレフォンの中間層

アクションプランは、マーチステークス2着の実績を持つ先行馬。リオンディーズ産駒でダートの先行力に優れるが、平安ステークス14着と大敗した前走が引っ掛かる。浜中俊騎手への乗り替わりは悪くないが、馬場が渋った時にはスタミナ面で浮上する可能性がある。稍重のマーチステークスで2着、稍重の総武ステークスで2着と、渋った馬場での実績は確かだ。

チュウワクリスエスは、中山のアレキサンドライトステークスを先行押し切りで勝った4歳馬。ルヴァンスレーヴ産駒で先行力があり、小回りコースへの適性は高い。ただし、マリーンステークス9着、マーチステークス6着と近走は期待に応えきれておらず、成長途上ゆえの波がある一頭。嵌まれば好走するが信頼度は低い。

テーオードレフォンは、2024年のエルムステークスで10番人気3着に好走した実績を持つ7歳馬。ドレフォン産駒で札幌ダート1700メートルの経験はあるが、近走の成績は下降傾向にある。マリーンステークス6着は11番人気で健闘した形だが、重賞で馬券圏に入れるかは疑問。古川吉洋騎手の継続騎乗は好材料だが、全体的に下降線の印象が強い。


ジョーメッドヴィン、オンザムービーの異色組

ジョーメッドヴィンは、父ドレフォンの5歳牡馬で、近走は芝のスプリントから中距離まで幅広く使われている。ドレフォンはダート・短距離・パワー色が強い種牡馬であり、ダートへの転向自体は理解できるが、近走の芝中距離戦から急にダート1700メートルの重賞に挑むというローテーションは異色だ。馬体重522キロの大柄な馬体だが、ダート1700メートルへの距離適性については実績が乏しく、現時点では積極的に評価する根拠がない。消し候補の筆頭だ。

オンザムービーは3歳馬で54キロの斤量アドバンテージを持つ。前走札幌ダート1700メートルの1勝クラスを勝ったばかりの上がり馬。サンダースノー産駒で、父は海外のGI馬だが日本での産駒成績はまだ限定的だ。前走1分43秒9のタイムは1勝クラスとしては優秀だが、勝ち馬のペリエールが昨年のエルムステークスを1分43秒5で制していることを考えると、タイム的にもう一段の短縮が必要になる。斤量差を加味しても壁は高い。ただし、3歳馬の夏の上昇力は侮れず、人気薄で一発があるタイプ。パドックで成長分が見て取れるかどうかが鍵になる。


シナリオ別の最終結論

ここまでの分析を総合し、条件ごとの推奨順位を示す。

良馬場でバイアスが小さい場合。 ウェイワードアクトの逃げ残りが最も信頼でき、テーオーパスワードが中団から差してくる形で2番手評価。ペリエールの連覇狙いが3番手、ヒルノハンブルクの先行粘りが4番手、レヴォントゥレットの好位追走が5番手。ナチュラルライズは59キロの負担で6番手に後退する。

馬場が荒れて稍重から外差しが効く場合。 ウェイワードアクトは依然として有力だが信頼度は一段下がり、ヴァルツァーシャルの追い込みが圏内に浮上する。アクションプランもスタミナ面で評価が上がり、ペリエールのコース巧者ぶりが活きる。テーオーパスワードは距離不安がやや増す。

道悪に急変した場合。 ヴァルツァーシャルが文句なしの最有力候補となる。アクションプランもスタミナ型の競馬で浮上し、ウェイワードアクトの逃げ残りは馬場の消耗で信頼度がさらに下がる。ナチュラルライズは59キロ×道悪のスタミナ消耗で大きく割り引く。

3つのシナリオを加重平均した総合順位は、ウェイワードアクトが80点で最上位、テーオーパスワードが74点で2番手、ヒルノハンブルクが70点で3番手、レヴォントゥレットが69点で4番手、ペリエールが63点で5番手となる。条件間で評価が最も大きく変動するのはヴァルツァーシャルで、良馬場では9番手評価だが道悪になれば2番手まで急浮上する。テーオーパスワードは逆方向の変動が大きく、良馬場では2番手だが道悪では5番手まで下がる。

3歳馬のアローワンスについて補足しておくと、オンザムービーの54キロは古馬57キロ比で3キロ差。これは約1.5馬身、約0.6秒に相当する。ただし、能力差がそれ以上に大きいため、斤量差だけでは逆転は難しいと判断する。ダートの1勝クラスを勝ったばかりの馬がGIIIで好走するには、能力の上振れが必要だ。


当日絶対に確認したいチェックポイント

最優先は馬場状態だ。当日朝のJRA公式馬場情報で良馬場か稍重かを確認し、良馬場ならウェイワードアクト中心、稍重以上ならヴァルツァーシャルの評価を格上げする。

天候は午前中のレース結果から追いたい。にわか雨が降った場合、ダートの含水率が急変する可能性がある。気温が30度を超える場合、ウェイワードアクト(540キロ)やルクソールカフェ(544キロ)の大型馬は消耗リスクが増す。

パドックでは、ウェイワードアクトの馬体重を最優先でチェックする。前走540キロからの増減を確認し、大幅増なら太め残り、大幅減なら消耗を疑う。テーオーパスワードは前走492キロから大きく変動していないことが理想。ヒルノハンブルクは468キロの小柄な馬体が絞れすぎていないか確認したい。ナチュラルライズはGI連戦の疲労が馬体に出ていないかを見る。

返し馬ではウェイワードアクトの前進気勢を見たい。逃げ馬にとって返し馬のテンションは重要で、行きたがりすぎていると本番で掛かるリスクがある。テーオーパスワードが返し馬で前向きな気配を見せているかどうかも注目だ。

直前レースのバイアス実態は8Rから10Rの結果で確認する。内が伸びているか外が伸びているか、先行有利か差し有利かを判定し、推奨順位の最終調整をかける。先行有利バイアスが続いていればウェイワードアクトの信頼度を上げ、差しが決まり始めていればヴァルツァーシャルやオメガギネスの評価を格上げする。

枠順確定後の補正も忘れてはならない。札幌ダート1700メートルは中枠の好走が目立つコースだ。特に馬番3番から9番付近から無理なく好位を取れる馬が安定しており、外枠の先行馬は1コーナーまでの距離損が大きい。ウェイワードアクトが内枠に入ればさらに評価を上げ、逆に大外枠に入った場合は若干の割引が必要になる。


要するに、今年のエルムステークスは「ウェイワードアクトの逃げ切りを軸に、馬場状態で相手を入れ替える」レースだと考えている。良馬場ならテーオーパスワードとヒルノハンブルクを2着3着候補に据え、馬場が渋ればヴァルツァーシャルとアクションプランを格上げする。ペリエールは連覇狙いの底力で常に圏内候補に残しておきたい。

過去5年すべて4番人気以下が勝っているレースだ。上位人気を盲信せず、コース適性と展開の噛み合いを冷静に見極めること。それが、夏の北海道ダート重賞で結果を出すための最も確実な方法だ。

いいなと思ったら応援しよう!