レタスが地球を救う?バイオ炭入り肥料で温室効果ガスを減らす新しい農業
私たちが毎日の食卓で食べているレタス。
シャキシャキとした食感で、サラダや料理に欠かせない身近な野菜です。
そのレタスを育てるために欠かせないもののひとつが「肥料」です。
肥料は、野菜を元気に育てるために必要なものです。
しかし一方で、農地に施された肥料からは、温室効果ガスの一種である一酸化二窒素(N2O)が発生することがあります。
美味しい野菜を育てること。
そして、環境を守ること。
この2つをどう両立していくのか。
いま、その解決策のひとつとして注目されているのが、バイオ炭です。
バイオ炭とは、もみ殻、木材、竹、家畜ふん、コーヒー粕などのバイオマス資源を炭化したものです。
土づくりに役立つだけでなく、土壌に炭素を長期間とどめる可能性があり、農業分野における脱炭素の取り組みとしても期待されています。
今回は、農研機構、福井県、立命館大学などが関わる「バイオ炭の農業利用事例とその活用ガイドブック」で紹介されている研究事例をもとに、レタス栽培とバイオ炭入り肥料の可能性について、ECOXCOの視点でわかりやすく紹介します。
肥料から温室効果ガスが出る?
農業では、作物を安定して育てるために、肥料が欠かせません。
肥料には、化学肥料のほか、堆肥や有機質肥料、複合肥料など、さまざまな種類があります。
その中で、環境負荷の観点から注目されているのが、肥料由来のN2O排出です。
N2Oは、一酸化二窒素と呼ばれる温室効果ガスです。
農地では、窒素を含む肥料や有機質資材が土壌中で変化する過程で発生することがあります。
脱炭素というと、CO2削減を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、農業分野ではCO2だけでなく、N2Oの発生をどう抑えるかも大切なテーマです。
つまり、これからの農業では、作物をしっかり育てながら、土壌から出る温室効果ガスをできるだけ減らす工夫が求められているのです。
便利なペレット肥料に潜む課題
農業現場では、鶏ふん堆肥などをペレット状に加工して使うことがあります。
ペレット化された肥料は、扱いやすく、保管しやすく、散布もしやすいというメリットがあります。
作業効率を高めるうえでは、とても便利な形です。
しかし、今回紹介されているガイドブックでは、鶏ふん堆肥をペレット化すると、N2Oの発生量が通常より多くなる場合があることが示されています。
便利で使いやすい肥料であっても、条件によっては温室効果ガスの発生につながる可能性がある。
ここに、農業の難しさがあります。
そこで検討されたのが、バイオ炭を肥料に混ぜ込むという方法です。
肥料としての使いやすさを保ちながら、N2Oの発生を抑えることはできないか。
この問いに対して、バイオ炭入り複合肥料の研究が進められています。
もみ殻炭、鶏ふん炭、コーヒー粕炭
ガイドブックで紹介されている研究事例では、性質の異なる3種類のバイオ炭を使った複合肥料が試作されています。
使われたのは、次のようなバイオ炭です。
もみ殻炭
鶏ふん炭
コーヒー粕炭
いずれも、農業や暮らし、食品産業などから生まれる資源に関係しています。
もみ殻は、稲作から生まれる副産物です。
鶏ふんは、畜産由来の有機資源です。
コーヒー粕は、食品由来の未利用資源です。
これらを炭化して農業に活用することは、単なる肥料利用にとどまりません。
未利用資源を再び土に還す、資源循環の取り組みでもあります。
研究事例では、これらのバイオ炭を混和した複合肥料を用いて、レタスの生育や収量、外観、N2O排出量などが比較されています。
特に注目されるのは、もみ殻炭を配合した肥料です。
ガイドブックでは、もみ殻炭入りの複合肥料で、N2O排出抑制効果が高い傾向にあったことが紹介されています。
身近な農業副産物であるもみ殻が、炭になることで、土づくりと脱炭素の両方に関わる可能性を持つ。
これは、とても興味深いポイントです。
環境に良くても、野菜はちゃんと育つのか?
生産者にとって、最も大切なことのひとつは、作物がきちんと育つかどうかです。
どれだけ環境によい取り組みであっても、収量が大きく落ちたり、品質が不安定になったりすれば、農業現場では導入しにくくなります。
では、バイオ炭入り肥料を使った場合、レタスの育ちはどうだったのでしょうか。
ガイドブックで紹介されているレタス栽培の事例では、バイオ炭入り肥料を使用した区画と化学肥料区を比較し、レタスの調製重や外観に関する結果が示されています。
その結果、平均値には差が見られるものの、統計的に有意な差は確認されず、安定した収量を維持できる可能性が示されています。
つまり、バイオ炭入り肥料は、環境負荷を抑える可能性を持ちながら、レタス栽培における生産性も大きく損なわない可能性があるということです。
「環境にやさしい」と「しっかり育つ」。
この2つを両立できる可能性がある点に、バイオ炭入り肥料の大きな魅力があります。
N2O排出を抑える可能性
研究事例では、施肥後のN2Oフラックスの経日変化や、累積N2O排出量も比較されています。
肥料をまいた直後の土壌では、微生物の働きなどによって、N2Oの発生が高まることがあります。
化学肥料区では、施肥後に高いピークが見られる一方で、バイオ炭を混合した区画では、そのピークが抑えられる傾向が示されています。
また、複数年のデータでも同様の傾向が確認されており、バイオ炭入り肥料には、N2O排出を抑える技術としての可能性があることが示されています。
ここで重要なのは、バイオ炭が単に「土に炭を入れる資材」ではないということです。
土壌に炭素をとどめる。
肥料由来の温室効果ガスを抑える。
土づくりを支える。
未利用資源を循環させる。
こうした複数の価値が重なり合っている点に、バイオ炭の面白さがあります。
ECOXCOが考える、これからの土づくり
ECOXCOは、環境にいいものを、未来の子どもたちへ届けることを大切にするセレクトメディア・ECサイトです。
私たちが注目しているのは、単に「エコ」と言える商品ではありません。
自然由来の資源を活かしていること。
暮らしや農業の課題解決につながること。
環境負荷の低減に貢献できること。
地域資源の循環につながること。
無理なく生活や事業に取り入れられること。
こうした視点を大切にしています。
バイオ炭入り肥料は、まさにこの考え方と重なります。
もみ殻やコーヒー粕のような未利用資源を炭化し、農地に還す。
それによって、土づくりを支えながら、温室効果ガスの削減にもつなげていく。
これは、単なる肥料の話ではありません。
農業、資源循環、脱炭素、そして私たちの食卓の未来をつなぐ取り組みです。
持続可能な農業は、食卓からも考えられる
持続可能な農業というと、専門的で遠い話に感じるかもしれません。
しかし、私たちが毎日食べている野菜は、土から生まれています。
その土をどう育てるか。
どのような資源を使うか。
農業の中で、環境負荷をどう減らしていくか。
こうした取り組みは、最終的には私たちの食卓につながっています。
もし、レタスを育てる肥料にバイオ炭を取り入れることで、温室効果ガスの発生を抑えられる可能性があるなら。
もし、もみ殻やコーヒー粕のような未利用資源が、次世代の土づくりに役立つなら。
それは、農業だけの話ではなく、私たち一人ひとりの暮らしにも関係する話です。
環境に配慮した農業を支えることは、未来の食卓を守ることにもつながります。
まとめ
バイオ炭入り複合肥料は、肥料として作物の生育を支えるだけでなく、土壌に炭素を貯留し、温室効果ガスの排出を抑える可能性を持つ資材です。
ガイドブックで紹介されているレタス栽培の研究事例では、もみ殻炭入り肥料がN2O排出を抑える傾向を示し、収量面でも大きな低下を示さない可能性が紹介されています。
もちろん、バイオ炭の効果は、原料、製造方法、土壌条件、作物、施用量、気象条件、栽培管理方法などによって異なります。
そのため、すべての農地で同じ効果を保証するものではありません。
それでも、土づくりと脱炭素を同時に進める選択肢として、バイオ炭入り肥料は大きな可能性を持っています。
美味しい野菜を育てながら、環境にも配慮する。
そんな農業が広がっていけば、私たちの食卓は、未来の地球を守る選択の場にもなっていくかもしれません。
ECOXCOはこれからも、環境と暮らしをつなぐ商品や情報をわかりやすく発信していきます。
引用・参照
本記事は、以下の公開情報を参考に、ECOXCOの視点で内容を再構成・解説したものです。
農研機構「(お知らせ)日本で初めて、バイオ炭の農業利用に関する体系的なガイドブックを公開」
情報公開日:2025年5月27日
発表機関:農研機構、福井県、立命館大学
参照URL:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/niaes/169191.html
立命館大学「バイオ炭の農業利用事例とその活用ガイドブック」
農研機構の発表内で公開先として紹介されているガイドブック資料
参照URL:https://www.ritsumei.ac.jp/research/brc/biochar_guidebook.pdf
農林水産省「みどりの食料システム戦略」関連情報
農業分野における環境負荷低減、持続可能な食料システムに関する政策情報として参照
免責事項
本記事は、バイオ炭、バイオ炭入り肥料、土壌改良、温室効果ガス削減、N2O排出抑制、J-クレジット制度等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものです。
掲載内容は、公開情報をもとにECOXCOが独自に要約・再構成したものであり、特定の製品、資材、農法について、収量向上、品質向上、土壌改善効果、N2O削減量、CO2削減量、J-クレジット認証の取得、経済的利益等を保証するものではありません。
バイオ炭やバイオ炭入り肥料の効果は、原料、製造方法、炭化温度、配合割合、土壌条件、作物、施用量、気象条件、栽培管理方法などによって異なります。
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