【エッセイ】成り行きはSFより奇なり
人生行き当たりばったり。こんにちは、塩野丸です。
7月11日は日本全国角打ちの日ということで、飲み仲間が企画した朝7時11分の乾杯に参加する為に、かなり早起きして会場の居酒屋へ向かった。
6時50分頃に店に到着。10時頃まで楽しく飲みに飲み、食べに食べた。
実はこのあと大分駅の南側にあるホルトホールでSFに関するイベントがあり、同人誌即売会もあるというので私は興味を抱いていた。
声優の塩沢兼人さんが2000年に亡くなられて、アニメや漫画にすっかり興味を失った私。
最近になってようやく創作意欲が復活してきたことから、令和の同人誌即売会の雰囲気を知りたいと思った。
だが、夫の虹夫さんはSFも同人誌即売会も興味は無い。
そこで一旦別れて、虹夫さんは期間限定出店しているお菓子屋さんの行列へ。
私はホルトホールへ向かい、意外にもその大規模なイベントに圧倒された。
小ホールの同人誌即売会は昭和から平成・令和とあまり変化は感じなかった。ただ、コピー本は圧倒的に少なく、皆さん手の込んだオフセット印刷の本がずらり。手作り感は薄く、かなり本格的だった。
雰囲気は感じ取れたし、早々に虹夫さんと合流して帰ろうか、と思った矢先、受付のホワイトボードに書かれた文字に私の目は釘付けになった。
「梶尾真治先生のサイン会14:00~」
な、なんだってー!
あの『サラマンダー殲滅』の作者、梶尾真治先生のサイン会だと!
因みにサラマンダー殲滅は、ラジオドラマ化された際に塩沢兼人さんが出演していて知っていた。
勿論原作も読んだ。
あぁ、でも今手許にサインしてもらう本が無い!
見れば、アミュプラザから紀伊國屋書店の出張販売所があるではないか。抜かりなしである。
早速そこで梶尾先生の作品を物色。3作品が陳列されていたが、1作は続きもののようだったので除外。1作は単発の小説。もう1作はきのこを題材にしたエッセイだった。
単発の小説とエッセイを購入した。
更に大ホールでは現在梶尾先生のトークショーが行なわれており、無料で聴けると知って飛び込む。なかなかテンションの高い愉快な人柄での語り口に、少々戸惑う。
ベテランプロ作家さんって、偏屈な人が多いイメージがあったから(超偏見)
トークショーからサイン会までは時間が空いていたので、虹夫さんに「このままサイン会まで残ります」と連絡。虹夫さんもかなり並んでパイをゲットし疲れていたので、先にお帰り頂いた。
アミュでひとりランチ。さっさと平らげて再びホルトホールへ向かうと、13:50くらいだったが既にサイン会の列が出来ており、急いで私も列に加わる。あっという間に最後尾は締め切られてしまった。
私の後ろに並んでいた女性とファン同士ということで少しお話し。そこで先程購入した本のどちらにサインを頂いたらいいかな~? なんて話題にもなった。
散々悩んで、私ならエッセイだろうと『キノコがわたしを呼んでいる』という作品にサインをしてもらうことにした。更にどこに書いてもらうかと悩んでいると、蛇行した列で横に居合わせた外国人の男性が「あ、みんな本にサインしてもらってるんだ。どこかに売ってるかな」と慌てている様子。
そこの出張販売所で売ってたよ、と教えてあげたけれど、今から列を抜けると戻れなくなる。
そこで、私はサインを諦めたもう1冊の小説を取り出して「じゃあ、これあげるよ」と差し出していた。
気が大きくなっていたんだろうな、私。もう目の前で梶尾先生がサイン書き始めているから、急がなきゃという気持ちもあった。
男性は驚いて「いいの? じゃあ、それ買います」と財布を出そうとしたので、こちらも慌てて「いいよ、プレゼント。同じ梶尾先生のファン仲間として、差し上げます」
男性は大喜びしてくれて、「これ、僕のステッカー。あとで僕のブースに来て」と言ってくれた。
なんだかウキウキな気持ちでそのまま並んでいたら、反対側の列に見たことのある顔の男性が立っていた。どう見ても某酒造会社の社長。でも、他人の空似かもしれないし、迂闊に声は掛けられないな。なんて思っていたら、バッグの中身がちらりと見えて、名前が大きく書いたシールが見えてしまった。
ご本人でしたーっ!
思わず声を掛けてしまって、あちらも私に気が付いてくださって、今回のことはちょっとした集まりで知って、梶尾先生の作品は『黄泉がえり』で知りました、なんてちょっとお喋り。
お忙しい社長の貴重なプライベート時間に、声を掛けてしまったのは申し訳なかったけど、こんな偶然もあるのかと驚きの連続。
その後も黙々と列に並んでいたのだけど、ひとつ気になったことが。私のふたり前の男性が、さっき購入したであろう3冊の本をしっかりと手に握っていたこと。まさか、その3冊全部にサインしてもらうつもりじゃないだろうな。常識的に考えて、そこは1冊に絞るべきだぜ。
まさかのまさかで、本当に3冊すべてにサインをしてもらう男性。マジか。
その様子に気が付いた後ろにいた女性が、慌ててスタッフに声を掛けた。それでなくても現在列に並んでいる人全員にサインが出来るか分からない(時間的な問題かな?)と言われていたのに、ひとりで複数のサインをしてもらっていたら最後尾寄りの人たちが割りを喰らう。
いよいよ私の番が来た。後ろに並んでいた女性が、私がサインをして頂いている様子を撮ってくださったり、先生に『サラマンダー殲滅』の棗に惚れたクチです! と口走って笑われてしまったり。
撮影してくれた女性にお礼を言って、すぐに先程の外国人の男性がいるブースへ。
熊本から来たというその方は、バイリンガル本というのを出していて、左から読めば英語作品が記載されており、右から読めば日本語で記載されている。なるほど、それでバイリンガル本なのか。
パトコンと名乗る彼は、先程のお礼だと言って、そのうちの一冊にイラストとサインを書いて私にプレゼントしてくれた。ここぞとばかりに私の方も、豆本と名刺を渡して少し世間話。
お互いに何度もお礼を言って、その場を離れた。帰り際、丁度サイン会を終えて戻って行く梶尾先生にお会いできて、そこでも「ありがとうございました」と頭を下げたら、にこにこと「どうもー」と会釈をしてくれた。
ここまでかなり興奮状態。
でも、忘れてはいけない。私は社交不安障害で鬱だ。
これだけテンションがハイパーに爆上がってしまったあとは、ズゴーッンと激堕ちしてしまうのだ。
この段階で、時間は15時。もう10時間はテンションMAXだったのだ。
やばいやばい、早く帰って横にならないと。マジで倒れる。
梅雨明けの直射日光が追い討ちをかけてくる。
まっすぐ改札を抜けて、丁度15分後の電車に乗ろうとしたら「7分ほど遅れております」のアナウンス。おぅ……。
虹夫さんに連絡すると、「電車が出たら教えて。駅まで迎えに行くから」と返してもらえた。本当に優しい。
幸い電車は5分程度の遅れで出発。無事に虹夫さんのお迎えで帰宅出来たが、疲労度が増すと子宮があった辺りに痛みが出てくる。痛い痛い。シクシク痛い。もう泣きそう。
全身から力が抜ける。声が出ない。目も開けていられない。
帰宅してすぐにリビングのソファーにぐったりと横たわるも、虹夫さんから
「今日は朝も早かったからね」
「いろんなことがあったから、疲れちゃったんでしょう」
「でも、凄く暑かったし汗も凄くかいたでしょ? お風呂入ってさっぱりしてから寝た方がいいよ」
なんて、優しく根気強く励まされ(説得され?)、食事も摂らずにシャワって寝室へ。
そのまま21時までバタンキュー。
ただの興味から立ち寄った同人誌即売会からの、成り行きでサイン会、見ず知らずの人との語らいに、知り合いとの再会。
凄まじい一日であった。
かなりの充足感ではあったが、その後の身動きが出来ず虹夫さんに心配をかけるくらいの疲労を考えると、ほどほどにせねばなるまい。
☆最後までお読みくださりありがとうございます。
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