子どもの頃には分からなくても――「風立ちぬ」と「鬼滅の刃」を観て思うこと
幼稚園生だった息子と一緒に、風立ちぬを観たことがあります。
でも当時の息子は、あれが「戦争」を背景にした物語だとは、たぶん理解していなかったと思います。
飛行機が出てきて、綺麗な映像があって、大人たちが難しい話をしている――そんな印象だったのではないでしょうか。
けれど、それで良いのだと思います。
子どもの頃に触れた作品を、大きくなってから観直して、「こういう話だったのか!」と気づくことがあります。
それもまた、作品との大切な出会い方だと思うのです。
そして、私は鬼滅の刃も、ある意味では「子ども用の教材」だと思っています。
戦いや悲しい場面も多い作品ですが、だからこそ、人の命や苦しみ、生き方について考えるきっかけになるのではないでしょうか。
ただ楽しいだけではなく、「なぜ苦しむ人がいるのか」「なぜ人は傷つくのか」を描いているからこそ、子ども達の心に残る作品になっている気がします。
また、「鬼滅の刃」の遊郭編では、遊郭で働く女性達の過酷な状況や、梅毒の問題もかなりハッキリ描かれています。
さらに、梅毒にかかった女性が精神障害を発症し、子ども達に暴力を振るう様子も、かなり生々しく描かれていました。
加えて、梅毒にかかった女性が産んだ子どもに先天的な障害や奇形が多かったことを連想させる描写もあり、感染症が次の世代にまで影響する恐ろしさも感じさせます。
もちろん作品中で医学的な説明が詳しくされるわけではありませんが、性感染症が身体だけでなく精神面や家庭環境、さらには子ども達にも深刻な影響を与えることを感じさせる描写だったと思います。
ちなみに、梅毒によって精神障害を発症して亡くなった人の脳から、梅毒トレポネーマを発見したことで知られているのが、野口英世です。
梅毒が単なる皮膚や性の病気ではなく、脳や精神にも深刻な影響を与える感染症であることを示した重要な研究でした。
病気や貧困、女性達が置かれていた立場など、「鬼滅の刃」は歴史や社会問題に触れる入口にもなっている作品なのではないでしょうか。
私は薬剤師時代、薬剤師向けの雑誌をよく読んでいました。
その中では、性感染症の問題もたびたび取り上げられていました。
現在でも、風俗店を介して性感染症が広がることは実際にあります。
これは特別な誰かの問題ではなく、若い人達全員が知っておくべき知識だと思います。
性教育というと、「恥ずかしい話」と感じる人もいますが、本来は「自分の身体を守るための知識」です。
そして、そうした問題を、物語やアニメを通して考えるきっかけがあるのは、決して悪いことではないと思うのです。
子どもは、学校の授業だけで成長するわけではありません。
物語の中で、人間関係や感情の機微を学ぶことも多いのだと思います。
だからこそ、大人が「これはまだ早い」と決めつけるのではなく、一緒に観たり、後から話したりすることも大切なのかもしれません。
子どもの頃に観た作品が、大人になってから別の意味を持つ。
それは、とても豊かな体験だと思います。
