文明はどこから始まるのか――放射性物質で読み解く人類の階層
文明の出発点を考えました。
文明とは、技術・社会構造・信仰が相互に結びつき、持続的に発展していく人間の営みの体系です。
矢じりなどを石で作っていた時代は、石器時代と呼ばれます。石器も技術ですが、文明と呼ぶかどうかには別の視点が必要です。宗教施設の存在や、社会の中に役割や階層が生まれているかどうかといった視点も欠かせません。建築技術の発達もまた、その社会の成熟度を示す重要な指標です。
以前参加した筑波大学のバイオeカフェでは、人骨に含まれる放射性物質を分析し、食生活や身分差を読み解く研究をしている方が講師でした。同じ時代に生きた人々であっても、摂取していた食物の違いが体内の放射性物質として記録され、それが結果として社会的な差異を浮かび上がらせるというのです。
目に見えないはずの階層や構造が、物質として検出される。その事実は、人の階層という抽象的なものも、可視化されうる「痕跡」の集積であることを示しているように感じられました。
石の道具から始まった人類の営みは、やがて建築や信仰、そして社会構造へと広がっていきました。文明とは何か――その問いに対する答えは一つではありませんが、放射性物質のようなミクロな手がかりが、その輪郭を静かに描き出しているのだと感じています。
