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"そろそろ再婚したら?”という爆弾発言に舌打ちしたい〜未亡人の館・遺族年金〜







「再婚しないの?」って聞かれるたびに思う。

ちょっと待って。
私、まだ亡くなった夫の籍を抜いてませんけど。

ええ、もう何年も経ちましたけどね。

もし私に子どもがいたら、義姉は光の速さで『籍抜いて』って言ってくるでしょう。
だって、もし義母が亡くなった時に相続でややこしくなるから。


この微妙な立ち位置が未亡人“あるある”




"そろそろ再婚したら?”って、どういうテンションで言ってます?

こっちは別に「もう一人じゃムリ…」なんて言った覚えもないのに、
なぜか周囲が焦り出す。
独身なんて山ほどいるのに、なんで?
「可哀想」って思われてるの?
…いや、勝手にストーリー作るのやめて。

夫が亡くなってから、クリスマスもバレンタインも仕事ぶっ込んでくるから師長は絶対私のこと恋愛から遠のいた退役寸前の老兵だと思ってる。
いや、別にいいんだけど、って思っていたら元院長の奥様がお見合い話持ってきた。
「薬剤師さんでね〜。良い人なの。本当良い人なの。うん。良い人。良い人なの。」
良い人連呼されたら逆にこわい。
「てか、独身のお姉様方たくさんいますけど。」
「あなたデビィ夫人の本読んだことないの?『選ばれる女におなりなさい』って本。ずっと独身だった人よりも1度結婚した人のほうが何度でも結婚するってデビィ夫人が言ってたわよ。」
なるほど、デビィがそんなことを。
やっぱり寂しいとか人恋しいという欲求に素直になるからだろうか?(知らんけど)
確かに私は2度結婚している。
こっちのほうが爆弾発言だったりしてね。

パッカーンと。(婚約指輪の音)

「とりあえず会うだけ会ってみて〜」と元院長夫人。



職場近くのホテルの日本料理店。
「ランチで現地集合現地解散でお願いします」と生意気にも条件をつけてお見合いスタート。

現れた彼は本当に「良い人」という感じであった。(5歳下)
大人同士の当たり障りのない会話をそこそこしていたら料理が運ばれてきた。

(やった、茶碗蒸しがある。)と心の中で喜んでいたら信じられない出来事が起きた。
と、心の中でガッツポーズをした 0.2秒後。信じられない光景が映った。

目の前の彼が、まるで自分の所有物であるかのような自然な手つきで、私の茶碗蒸しをサッと奪い取ったのだ。

(え、熱くない⁉️……っていや、そこじゃない。何しとるん、この人⁉️)

一瞬、思考がフリーズした。
看護師として修羅場はくぐってきたつもりだが、「初対面でサイドメニューを強奪される」という症例は教科書に載っていなかった。
内心、血管が数本ブチ切れる音がしたが、元院長夫人の顔もある。
「あはは。お行儀が悪いですよ」と、震える声でたしなめた。

「えへへ、僕、茶碗蒸し好きだから」

知らんがな。

てか、初対面で茶碗蒸しを躊躇なく奪うその胆力……。
このまま付き合いでもしたら、次は私の「自由」、その次は「銀行残高」、最終的には「私の命」あたりまで、
「えへへ、好きだから」
の一言でカジュアルに強奪されるんじゃないだろうか。


食事が終わって店を出た瞬間、さらにトドメが刺された。
「また会おうね」と、私の頭をグシャグシャに撫でてきたのだ。

いや、だから、何しとるん? この人。(2回目)
初対面の女性の髪型を崩すのは、もはや「親しみ」ではなく「暴行」である。
私を散歩中のゴールデンレトリバーか何かだと思っているのだろうか。

元院長夫人の顔? 知るか!
私の生存本能が全力でサイレンを鳴らしている。
電光石火の撤退作戦、発動。

「いえ、もう二度とお会いすることはありません。さようなら!」
と走って逃げた。運動不足なのにこんなに速く走れたのかと驚いた。 

後日、元院長夫人のダメ出しミサイルが着弾した。
「なんで断っちゃったの〜。もう少し考えてからでも良かったのに〜。ねえ、ねえ。一個くらい良い所あったでしょ?」
「そうですね。一人称が『僕』っていうところくらいですね。(夫も僕だったし)」


未亡人が概して再婚を望まないのは「遺族年金」が打ち切られるから、とはよく聞くが、私は子供がいないので遺族年金のうちもらえるのは「遺族厚生年金」のみ。
正直なところ、その金額は電気代くらいである。もちろん人によって違うが、子どもがいないとこんなもんです。
だから「あったら嬉しいな。」くらいのものなので遺族年金が打ち切られるから再婚を望まないわけではない。
するもしないも自由である。
もし看護師じゃなかったら(この給料じゃなかったら)‥戻る家もないし‥それで遺族年金も少なかったら‥どんな相手であっても再婚したいと思うものなのだろうか。
余裕がある訳ではない。ほぼ自炊だし毎日お弁当持ってくしコンビニ行かないし。
野菜の皮もできるだけ捨てずに味噌汁の具にするし、自分の欲しい物もメルカリの売上金が入った時だけ買う。

そんな暮らしだから、「遺族年金なんて気にしなくていい」と言えるほど余裕があるわけではない。

実際我が家は冬から家電が壊れまくり家計は火の車であり、オーブンレンジなんかガムテープ貼って使っている。
グラタン作る時ちょっとこわい。


ちなみにこのオーブンレンジ。
まだ夫と同棲していた頃、大喧嘩して家を飛び出した私に、
「ほら、欲しかったオーブンレンジ」
と夫がLINEを送ってきた思い出もある。

……だから、なんとなく今も捨てられない。
ガムテープだらけなのに。






「好きだから結婚する」より先に、
「一人で生きていけるか」が問題になる人がいる。

本当は自由恋愛の時代のはずなのに、
生活基盤が弱い人ほど、“誰かと生きる”を選ばざるを得なくなる。

そしてそれは、愛というより“生存戦略”に近い。

「未亡人」とひとくくりにされるけど家庭状況、子どもの有無・収入源で実態は全然ちがう。未亡人といってもいろいろなケースがあるのだ。








しかもこの制度、よく見ると少し不思議で。
たとえば、同じ配偶者でも条件が男女で違っていたり、年齢によって扱いが変わったりする。
男性は原則55歳以上だったり、30歳以下の女性は「5年で打ち切り」である。


そしてその流れは、これからもっとはっきりしていく。
2028年4月以降は、子どもがいない場合、原則として「5年間のみ」の支給へと変わる予定だという。

支給額は少し増えるけれど、そのぶん5年で終わる。
つまり、その後の生活は自分で組み立てていかなければならない。
ちなみに籍を入れずに、内縁関係いわゆる事実婚であっても遺族年金は打ち切られる。
言わなきゃバレないじゃん、と思われるかもしれないがこういうのは意外とバレるらしいし、申告しなかった場合は年金の返還どころか詐欺罪に問われるケースもある。



黒猫と三毛猫に囲まれて、私は未亡人の館に今日も帰宅する。





32歳の派遣社員・水沢久美子が、派遣切りと失恋を同時にくらい、農業に活路を見出す物語――それが、垣谷美雨『農ガール、脳ライフ』。

未亡人ではありませんがこの物語に登場する、29歳のシングルマザー・静代さん。

婚活パーティーで出会った男性について、最初は見た目も性格も、家庭の状況(舅姑に加えて、認知症の義祖母まで)も、ボロクソに言っていた静代ですが──
彼の家に遊びに行ったときに
『娘と一緒に夕飯を御馳走になったの。たいしたものは出なかったけど、ご飯をお代わりしてた。お腹一杯食べられるだけで、すごく幸せそうだったよ。ほんと私ったら……母親として今まで‥』
「娘には幸せになってほしい」という一心で、その男性とその家族にアプローチし、再婚を決めます。

…下手したら結婚して即"介護要員コース”なんですけどね。

たぶん読者なら誰も、「この人と再婚しよう」とは思わない。
でも静代は、自分には学歴もスキルも、収入もないから、「これしか道がない」と覚悟を決める。

『結婚式で神父が言うじゃん。「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも」って。
あの中で本当に重要なのは、“病めるとき”と“貧しいとき”なんだって。
人生最悪の事態に陥ったときの“保険”がないと、誰だって安心して生きられない──って意味なんだってさ。』

再婚するもしないも、どんな相手を選ぶかも、本当は“自由”であるはずなのに、
ときにその「選ばない自由」すら持てない人生もある。

「結婚は自由」

そう言えるのは、
一人でも食べていける人だけなのかもしれない。

本当に自由なのは、
“誰かに頼らなくても生きられること”なのだと思う。

どれだけ悲しいことがあっても。
どれだけ理不尽な目に遭っても。

人は翌日になれば食べなければならないし、
家賃も払わなければならないし、壊れたオーブンレンジもいつか買い替えなければならない。

生活は、待ってくれない。

夫が亡くなった日でも家賃は普通に引き落とされる。

悲しみには期限がないのに、支払い期限だけは律儀にやって来る。
だから私は、「再婚しないの?」という言葉の裏側にあるものを、少しだけ考えてしまう。



愛のためだけではなく、生きていくために。


あ、垣谷作品は男性は読まないほうが良いかもしれません。



遺族年金には大きく分けて2種類あります。
遺族基礎年金: 亡くなった方に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受給できます。子どもがいない場合は対象外です。
遺族厚生年金: 厚生年金に加入していた方が亡くなった場合、配偶者や子などが対象となります。
制度は複雑ですので、詳しくは年金事務所の公式サイト等をご確認くださいね。








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