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明星の名を持つ娘――天見煌来、・美星町合宿譚

7月最初の週末。

天見煌来(あまみ・きら)は、剣道部の大会合宿で岡山県の美星町を訪れていた。

高校二年、17歳。
京都の古びた神社――天見神社の巫女として、「星の舞」を舞う少女。
その名の由来は、明けの明星。

合宿の朝、煌来は空を見上げてつぶやいた。

「7月5日になったなあ。鞍馬の奥の院で“あの日”って聞いたけど……
大丈夫みたいね。みんなの“想い”、無事に繋がったのかな?」

5月、夜の鞍馬山。
奥の院の磐座で“響いてきた懸念”は、何も起きなかった。

日本は、静かに、平穏な朝を迎えた。

天文の町で

大会では、煌来が優勝。

「やっぱ、煌来は強いよねぇ」
煌来
「まあ、たまたまよ。でも暑かった〜。疲れたね」

合宿最後の夜、町職員の案内で、美星町天文台へ。
夜空には、降るような星たち。


「星、きれいだね、普段さあ、夜空なんて見ないもんねぇ」

煌来
「そうだよねぇ。でも私、最近は毎晩、星を見てるんだ」

その時、一人の青年が話しかけてきた。
「京都の天見さんって、天見神社の?」
煌来
「はい、神社の娘です」

「やっぱり。僕、“星尾神社”の神職で、今日は天文ガイドやってる高嶺です。お父さんとは“星”繋がりで親しくてね」

彼――高嶺は笑って言った。


「皆さんで明日、帰る前に、星尾神社に寄りませんか? 星の御神宝、お見せしますよ」

「行こうよー! 剣道だけじゃつまんないー!」

星の神の石

翌朝、星尾神社。

時間が限られる中、特別に拝殿へと招かれ、神宝が披露された。

高嶺が箱を開けると、そこにはひとつの黒い石が。

高嶺
「これは……隕石です。星が落ちた跡に、神社が建てられました」

煌来
「うちにも“星降剣”っていう、隕鉄で作られた剣があります」

煌来が言った瞬間――

“澄み”がやってきた。
空間が、静かに、澄み渡るような、神聖な気配。

そして、石から声が響いた。

(……星を見るものよ……)
(我は“北の宇宙”より来た……北極星……)
(夜の空の中心……旅人の道しるべ……)
(星を見るものよ……お前もまた、道を照らせ……)
(光を絶やさぬように……希望となれ…)


澄みが、そっと、解けていく。

(また……聴こえた。これは……何?
でも、“次”が、来る――)

煌来は隕石を見つめながら、胸の奥に灯るものを感じていた。


明星はまだ

バスに揺られ、帰路につく生徒たち。

誰もが笑顔で、昨夜の星空を思い出していた。

でも煌来だけは、ふと、空に目を向ける。


(7月5日は、越えた。でも――
きっと“何か”は、まだ始まってもいない)

空にはまだ、星は、ない。

剣を帯び、星を仰ぎ、舞を舞う娘。
その名は――天見煌来。


彼女はまだ、知らない。
その星が、“彼女自身”を導くことを。


――そして、次なる“響き”が、
京都の星降る神社へと届こうとしていた。

(了)


天見煌来

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