自宅三国志#22 〜未来の私へ、同じようにもがいているあなたへ届きますように
ここは、国王(父)・国母(母)・女王(私)が暮らす自宅大陸。
認知症禍により、今日も何かが勃発しています。
今回は、水戸のご印籠の話。
どこまでも女王目線で綴った記録です。
※あくまで個人の見解です。
#22 「地獄を見ますよ」――医師の言葉というご印籠
国王がおかしくなってから、私が相談した先は一つじゃない。
警察、地域包括支援センター、ネットで見つけた厚生労働省関連の相談窓口、そして都道府県の相談先。
これらと並行して、精神科病院にも当たっていた。
最悪の事態を想定して、入院できる「ツテ」を作っておきたかった。
電話相談を何度も重ね、ようやくたどり着いた家族受診。
診察室で、医師は開口一番こう言った。
「で、どうしたいんですか?」
――どうしたいんでしょう?
国王は手術前の一件で数日荒れたものの、その後は驚くほど大人しくなった。
さすがに炭酸飲料を飲んだ件は誰のせいにもできなかったらしい。自覚もあるようだ。
国王が書いたメモには、震える文字でこう記されていた。
『何故、病院から帰ってきたのか?
わからない わからない』
このタイミングでの家族受診。
分からないのはこちらも同じ。
「どうしたらいいか分からなくて、相談に来ました」
経緯を話し終えると、医師は言った。
「話を聞く限り、今がベストな状態です。このままでいい」
そして続けて、
「変化が一番危険です。生活は変えないこと」
――変化が危険。
その言葉に、私の脳裏には他県で暮らす兄・ラカン王が現れかけた。
言いづらかったが、思い切って切り出した。
「兄が、介護休暇を取ると言っていて……」
その瞬間、初めて医師の顔が曇った。
「おすすめしません」
ここから、医師の言葉に説明だけではない温度を感じた。
「お兄さんの助けが必要な時期は必ず来ます。
でも、それは今じゃない」
「何度も言いますが、変化が一番危険です」
そして、決定打。
「最悪、地獄を見ますよ」
はぁぁ。
ため息が出る。
ーーこれは、再交渉が必要ですな。
私は医師の言葉を、水戸のご印籠のように胸に握りしめ、国交の準備にとりかかる。
時に、“水戸のご印籠”なる昭和言葉、
今の若人に通じるのか。
まあいい。
相手はもうじき還暦の昭和世代。
通じるーーよね?
この「地獄」という名の印籠、
効かないはずなんてないよね?
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
昭和世代しかいない自宅大陸の話ですが、
世代を問わず、どなたかの時間に
お付き合いいただけたなら嬉しいです。
