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#107 俺、一緒に走る パパ、いんせーになる

○月☓日


長女が陸上大会の選手を
目指していた。


種目は中距離。


昨年も挑戦したが、
残念ながら選手には
選ばれなかった。


長女は、
あまり感情を表に出す
タイプではない。


だから、
悔しかったのか、
平気だったのか、
正直よく分からなかった。


でも、
親として思った。


結果ももちろん大事だけれど、
努力して挑戦する経験をしてほしい。


そして、
もう一つ理由がある。


……


自分の運動不足解消である。

「よし、一緒に練習しよう」

そんな軽い気持ちで走り始めた。


長女も嫌ではなさそうだった。


たぶん。


すると、すぐ横から声がした。

「ずるい!」

もちろん、
次女である。


結局、
三人で走ることになった。


ミニバスの練習がない日や
自分が家に居られる時は、
夕方になると一緒に走った。


もちろん、
小学6年生の長女と、
小学2年生の次女。


勝負になるはずもない。


長女は
淡々と走る。


一方、
次女は
最初だけ勢いよく飛び出し、
あっという間に置いていかれる。


そこで、
置いていかれてしまう次女のために、
妻も自転車で参戦してくれた。


走る長女。

「待ってー!」

と必死についていく次女。

「頑張れー!」

と自転車から声を掛ける妻。


そして、
一番息を切らしている父。


そんな夕方が、
何日か続いた。


振り返ってみると、
大会へ向けた練習というより、
家族みんなで
過ごした時間だった気がする。


こういう時間も、
悪くない。


ただ、
次女は負けっぱなしでは
終わらない。

「もう一周!」

「次は勝つ!」


小学2年生、
闘志むき出しである。


姉妹でも、
こんなに性格が
違うものなんだと
改めて思った。


長女は、
決してスピードタイプではない。


でも、
ペースを崩さず、
表情も変えず、
最後まで淡々と走る。


親バカかもしれない。


それでも、
この努力を積み重ねられる姿は、
長女の強さなのだと思った。

長女は走り、
次女は負けたくない
と泣きながら走り、
妻は自転車で伴走し、
自分は必死についていく。


なんとも賑やかな練習風景だった。


そして今思えば、
この時間を一緒に過ごせたのも、
仕事を少しセーブしながら
大学院に通っている
今だからこそだったのかもしれない。


大学院に進学するときは、
そこまで考えていなかった。


でも、
思いがけず家族と過ごす時間が
増えたことは、
大学院生活の
おまけだったように思う。


そんな練習を何度か重ね、
タイムトライアルの日。


結果は…


無事、
選手に選ばれた。


「どんな気持ち?」

と聞くと、

「まぁ、嬉しい」


と一言。


相変わらずである。


でも、
その一言の裏には、
昨年の悔しさも、
今回の努力も、
全部詰まっていた気がした。


感情は、
必ずしも言葉や表情だけで
伝わるものではない。


努力して、
結果で示す。


そんな姿を、
子どもから教えてもらった。


その日、
自分も少しだけ
机に向かう時間を長くした。


子どもが頑張っている。


だったら、
自分も頑張ろう。


そう素直に思えた。


ちなみに、
次女は最後まで、

「次は勝つ」

と闘志むき出しだった。


一方、
自分は連日、
しっかり筋肉痛だった。


どうやら、
一番鍛え直す必要があるのは、
父らしい。


たぶん。


(きっと、つづく)

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