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#108 俺、娘の応援に行く パパ、いんせーになる

○月☓日


とうとう、
長女の陸上大会の日が
近づいてきた。


選手に選ばれてからも、
ミニバスの練習がない日に
何度か一緒に走った。


練習では、
次女ももちろん参戦。

途中から妻も自転車で伴走。
そんな家族総出の自主練だった。


そして、
地区大会当日。


他校の子が
どれくらい速いのかは
わからない。

だから順位よりも、
「今の自分の走りができればいい」
そう思っていた。


朝。
長女はというと…

全く緊張していない。

いつも通り朝ごはんを食べ、
いつも通り支度をしている。
むしろ、遅刻するペース。


そのマイペースさが、
彼女の強みなのかもしれない。


本当はいろいろ伝えたかった。
「落ち着いて」
「最後まで諦めずに」
「怪我をしないように」


それをぐっと飲み込み、
でも、一言だけ

「まぁ、楽しんできな」

と伝えた。

すると、

「うん。まぁ、頑張る」

返事までいつも通りだった。


長女を送り出した後、
妻と二人で会場へ向かった。


仕事や予定を調整して、
何とか応援に来ることができた。


車の中では、
「どうだろうね」

「まぁ、なるようにしかならないよ」

そんな会話をしながら向かった。


会場に着くと、
たくさんの保護者がいた。


やっぱり、
我が子の頑張る姿は
みんな見たいものなんだなと思う。


いろいろな競技が進み、
いよいよ中距離で、
長女の番。


遠くから見ても、
やっぱり緊張しているようには
見えなかった。


スタート。


飛び出すタイプではない。


自分のペース。


でも、
少しずつ、
少しずつ前との差を縮めていく。


コーナーで見ていた自分たちも、
順位が上がっていくたびに、
思わず声が出た。

「いけーー!」

久しぶりに、
あんな大きな声を出した気がする。


その声が届いたのか、
届かなかったのかはわからない。


でも、
最後の直線でさらにギアを上げ、
最後の一人を抜いた。


結果は入賞。


妻と思わず顔を見合わせた。


「うちの娘って…」
「意外とすごい人だったのかもね…」


親バカ全開である。



でも、
地道に積み重ねること


自分のペースを崩さないこと


最後まで諦めないこと


そんな大切なことを、
また娘から
教えてもらった気がした。


競技が終わり、
長女に声をかけた。

「頑張ったね」

「まぁ、頑張った」

「緊張した?」

「うーん、あんまり」

「学校の授業で当てられた時の方が
    緊張する」


最後までブレなかった。


ちなみに、
後日、
もう一つ上の大会にも出場した。


さすがにそこでは
上位には入れなかった。


やっぱり、
上には上がいる。


でも、
その景色を見られたことも、
きっと長女にとっては
大きな経験になったと思う。


自分も負けていられない。
応援に行った分、
少し遅れた大学院の
タスクが待っている。


現実は優しくない。


でも、
娘が地道に積み重ねた姿を見た今、


「やるしかない」
ちょっと、
そう思えた。


どうやら、
応援に行くと、
元気だけじゃなく、
宿題まで持ち帰ってくるらしい。


たぶん。


(つづく)

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