見出し画像

【楽曲レビューしてみた】ReGLOSS 5th single「サクラミラージュ」

3月10日に日付が変わり、いまかいまかと待ち侘びていたReGLOSSの5作目のシングルとなる「サクラミラージュ」のデジタルリリースが始まった。
全国のGLOSSERは、楽曲が公開されると同時に、約半年ぶりとなる推しの新譜に耳を傾けたのではないだろうか?
Teaserや視聴動画で公開されていたパートから膨らませていた期待感は、楽曲の持つパワーや成長を感じられる各メンバーの歌唱力によって深く満たされたであろう。
早速、「サクラミラージュ」のYouTube Musicのコメント欄やX(Twitter)のタイムラインには楽曲に対する肯定的な感想が溢れかえっている。
かくいうわたしもそのうちの1人である。
素人意見で恐縮ではあるが、私なりに新章・ReGLOSSの第一歩となった「サクラミラージュ」を本記事で楽曲レビューしてみたい。
お時間のある方は是非ご拝読いただけると幸いだ。


楽曲制作面からの考察

楽曲プロデューサー・OHTORA氏について

本筋の感想を語る前に、楽曲制作の側面で変化したことなどをまずは考察してみよう。
「サクラミラージュ」を手掛けるのは、ReGLOSSのデビュー曲「瞬間ハートビート」から一貫してグループの楽曲をプロデュースされているOHTORA氏である。
個人でもシンガーソングライターとして活動をされているOHTORA氏は、他にも元JUDY AND MARYのボーカルを務めたYUKIさんや、アイドルグループの私立恵比寿中学、「春を告げる」のスマッシュヒットで一躍有名となった覆面シンガーyamaさんへの楽曲提供も行うなど、その才能をマルチに発揮している新鋭のクリエイターだ。
公式のOHTORA氏のプロフィールを確認してみると、R&Bやファンクといったジャンルを中心に、シティポップやオルタナティブなどの複数のジャンルを巧みに融合して自身のトラックメイキングに落とし込んでいくスタイルを得意とされていることがわかる。
ReGLOSSの楽曲においては、OHTORA氏のジャンルの中ではシティポップやオルタナティブのジャンルを下敷きに、EDMを取り入れたライブ映えのする盛り上がりとなるアレンジが行われることを意識した歌詞やコード進行の制作スタイルを全面に置いているように感じる。
おそらく、ReGLOSSというグループが新たなホロライブの、しかもDEV_ISという別セクションからのデビューになるということを踏まえて、既存の先輩メンバーたちの楽曲の路線とは一線を画すサウンドメイキングを命題とされたのかもしれない。

この方向性は、良い意味でのReGLOSSと先輩メンバーとの差別化につながったと私は見ている。
論拠としては、つい先日大成功に終わった「hololive 6th fes. Color Rise Harmony」で披露された4th楽曲「フィーリングラデーション」をあげよう。
彼女たちがステージに浮かび上がり、高揚感を感じさせるシンセサイザーのイントロが幕張メッセに流れると、駆けつけた観客は皆一斉に手に持つサイリウムをReGLOSSのチームカラーである白に切り替えて、サビの「HEY」という掛け声に合わせて楽しそうにコールを行っていた。
共演していたホロライブの先輩メンバーの方々も、ReGLOSSのパフォーマンスが良かったと口々に感想を述べていたので、この先輩たちとは別ベクトルからの楽曲アプローチというチャレンジは大きな成果を上げていると言えるだろう。

アルバム「ReGLOSS」までの楽曲パターン

そもそも、ReGLOSSのメンバーは都心部である渋谷にあるライブハウス「超Very Bad」に集合したという設定がある。
この、「都会のど真ん中」で活動しているというユニットコンセプトは、流行の最先端の地で若者がワイヤレスイヤホンやヘッドフォン越しに聞いているEDMというアーバン要素のある音楽ジャンルとの相性が非常に良い。

ReGLOSSの楽曲のメインはEDMを主体にしたものであるということが、ここまでの記載で伝わったと思う。
ReGLOSSの楽曲のパターンは、イントロで鳴るシンセサイザーで聴衆の興味を惹きつけ、Aメロは曲の導入部としての展開、Bメロはサビに繋ぐブリッジとして音色を減らしてじっくりと聴衆の熱量を溜めて、徐々にドラムビートの感覚を詰めていくことで期待値を高め、解放的なサビで爆発させるというパターンをベースに敷いて、このパターンを楽曲ごとに変化をつけているトラックメイキングがされているように感じる。

上述の例をストレートに落とし込んでいる楽曲は「フィーリングラデーション」であるが、デビュー曲の「瞬間ハートビート」は1番が終わるまではあえて溜めまくる構成を取ることにより、儒烏風亭らでんさんのサビパート終わりから火威青さんによる2番の出だしでガラッと楽曲がアップな展開に変わる。
それが各メンバーに対するイキイキとしたパフォーマンスをすることへの号砲の役割を果たし、訪れる2回目のサビも音色が増えて彩り豊かとなることで大きなカタルシスを鼓膜を通じて得ることができるようになっている。
楽曲のトラックメイキングにストーリーがあることで、メンバーもファンも共通見解のもと盛り上がることが出来る。

そしてそのストーリーを描くために必要となるのは、ボーカルメロディラインであり、そのラインを乗せていくための楽曲のコード進行である。
とどのつまり、作曲家が五線譜の上(DTM主流の現代なら、PC画面上という表記がよりマッチするだろうか?)に描くシナリオライティングなのである。
そんなストーリーを楽曲を通じて提供してくる、OHTORA氏は、さしずめ「音のシナリオライター」であろう。

編曲担当・New K氏との新たな共同戦線

そんなOHTORA氏が新たに手掛けた「サクラミラージュ」は、これまでのOHTORA氏のガイド的な部分をあえて抑えめにするように、激しく伴奏が転換していくという鉄板の形をあえて取らないトラックメイキングになっている。
そこにはOHTORA氏と共同作曲、そして編曲を担当したOHTORA氏とレーベルメイトであるNew K氏の戦略も潜んでいると私は考える。

New K氏の肩書きは「beatmaker」とある。
言葉から安直にイメージを繋げてしまうのは失礼にあたるかもしれないが、ビートメイカーやトラックメイカーの方々のバックボーンには、クラブハウスで観客を音楽に酔わせるDJ的な側面があるように思える。
ようは、ダンスミュージックを手掛けて、フロアにいる聴衆を気持ちよく盛り上げる、音のテクニシャンのイメージである。

それゆえに、EDMを主体とするReGLOSSの楽曲との相性は高く、現にNew K氏はReGLOSSのファーストアルバム「ReGLOSS」の収録曲である「SUPER DUPER」でタッグを組んでいる。
この「SUPER DUPER」は、火威青さん・一条莉々華さん・儒烏風亭らでんさんの3名(Ri-A-Ra)のために書き下ろされた楽曲のため、メンバー全員での歌唱を行うシングルカットされた楽曲の編曲をになっていたmaeshima soushi氏とはアプローチの異なるお化粧が楽曲に施されていた。

そのmaeshima氏であるが、シンガーソングライターとしても活動を行うOHTORA氏とは多くの楽曲制作でタッグを組む仲である。
ReGLOSS第一章と位置付けるアルバム発売までの工程では、阿吽の呼吸でOHTORA氏の楽曲のストーリーラインを汲み取り、ライブ映えのする上記のアレンジパターンを落とし込んであったのではないだろうか。

OHTORA氏とmaeshima氏の黄金コンビではなく、あえてNew K氏との共同戦線を張った理由として考えられるのは、おそらく、ReGLOSSの第二章の1発目の楽曲において「彼女たちの成長した姿」を、楽曲としてのクオリティーは保った上で、特にボーカルの側面で打ち出してみようという思惑が生まれたからなのではないか、と私は考える。
その思惑のもと白羽の矢が立ったのがNew K氏のビートメイカーとして培ってきたキャリアであり能力だったのではないだろうか。

New K氏によるHOUSEアレンジの意図

New K氏は、自身に影響を与えたビートメイカーとして、イギリスの電子音楽系音楽ユニットのケミカル・ブラザーズをインタビューにて答えている。
Wikipediaにまとまっているケミカル・ブラザーズの紹介文を引用させていただくと、以下のようにユニットの特徴が説明されている。

ドラムの進行パターンをループさせるブレイクビーツを基調としたバックトラックにロックテイストの音色を融合させる楽曲が初期は多かったものの、中期からはサイケデリックな、聴いているものを音楽の世界にどっぷりと浸からせる中毒味のあるテイストの楽曲制作に系統し、近年ではヒップホップカルチャーとも接近して新譜発表を行っている進化を続けるユニット。

Wikipedia「ケミカル・ブラザーズ」の記事より引用

多彩なビートアプローチの引き出しを持ちながらも、「これぞケミカル・ブラザーズ」という独自性を持つという点に対する憧憬をNew K氏は語っている。

そして、New K氏のトラックメイキングのポリシーとして、「頭の中で着地点を決めて作る」ということも同インタビュー内では回答されている。
このReGLOSSの第二章としての1発目の楽曲制作のオファーが来た際、以前担当した楽曲時よりもさらにボーカル表現の幅が広がった5人を更に1段階上のステージへ引き上げるために、また楽曲の持つ春めいた爽やかさや期待感を楽曲として表現するために、意図的に四つ打ちのHOUSEのジャンルでのビートトラックを選択したのではないだろうか。

「サクラミラージュ」のインストゥルメンタルバージョンを聞くと顕著なのだが、本楽曲の伴奏パターンはイントロで利用されるシンセサイザーのフレーズが、楽曲の核のフレーズとしてたっぷりとループされる構成となっている。
そして、楽曲のブリッジとなる箇所でパターンを外したトラックを挟み、また主軸のフレーズに戻るという緩急の付け方が施されている。
まさに王道のHOUSEミュージックの系譜を踏んだトラックメイクであり、DJプレイをするような方からすれば次はどんな曲と「繋ごう」かとワクワクさせてもくれる仕上がりである。

ただ、ボーカルの音程確認の手助けとなるようなメロディラインや出だしの一音が極端に用いられておらず、一度音程を失念してしまったら大きく音を外しかねない、演者からするとかなりのギャンブル的な側面を持つ、非常に難度の高い構成に仕上がっているのも事実だ。
しかし、それでもなお踏み切ったという背景には、デビューから約一年半、毎週のようにダンスとボーカルレッスンに励んできて能力値が向上しているメンバーの進化した姿を、第二章の幕開けとしてアピールして行こうと方針が固まったからではないだろうか?

それらを踏まえて、「今のReGLOSSにできるかな?」とOHTORA氏とNew K氏から挑戦状として与えられたのが、この新譜だったのではないだろうかと考察する次第である。

「サクラミラージュ」の感想

さて、ここからは楽曲全体への私の感想と、ReGLOSSの各メンバーごとへの感想に筆を進めてまいりたい。

押韻多用で遊び心に富んだ歌詞

本楽曲も作詞はOHTORA氏が担当している。
デビュー曲の「瞬間ハートビート」から続くOHTORA氏の作詞の特徴は、フレーズの押韻を活用した、聞き心地の良い遊び心に富んだ歌詞である。
例えば、「瞬間ハートビート」では、次の箇所が韻を踏んでいる。

漠然とした不安 欲していたfun
日常に違和感 ウンザリしていた

ReGLOSS「瞬間ハートビート」より

気づいた時にはね Can't think without you
いつまでも君と一緒なら ここから先広がる宇宙

ReGLOSS「瞬間ハートビート」より

これら押韻の手法は、2作目にシングルカットされた「シンメトリー」や3作目の「泡沫メイビー」でも同様に取り入れられている。

パッと まだ落書き
磨き続ければmasterpiece
登り詰めてく頂き
努力だけは裏切らない

撒いてる点と線
インスパイアー扇動的?
腫れてる扁桃腺
ずっと ずっと take on me

ReGLOSS「シンメトリー」より

泡沫ベイビー
回れ右、今夜別れ道
胸騒ぎレイニー
繰り返し、さよならため息
ほんのちょっとのあいだの停滞
燻ったままの低体
失った過去も少し手痛い
今はまだ見過ごしていたい

ReGLOSS「泡沫メイビー」より

このように、OHTORA節とでも名付けた方が良いような、同じ語感や共通の母音を含む言葉を駆使し意味のあるフレーズで楽曲の世界観を表現する手法は、氏がこれまで通ってきた音楽ルーツの多様さと語彙の豊富さの表れであろう。

OHTORA氏のような言葉遊びで歌詞構成をするアーティストといえば、有名どころでは日本を代表するロックバント・Mr.Childrenのフロントマンを務める桜井和寿氏がパッと思い浮かぶ。
ミリオンセールスを何作も記録する氏であるが、歌詞の中に仕込んだ遊び心あふれる押韻フレーズが、楽曲のメロディーと綺麗に融合している作品は「名もなき詩」をはじめとして何作もある。
また、ヒップホップ界隈では、すでに放送は終了してしまったが、即興ラップのスキルを競い合う番組「フリースタイルダンジョン」にダンジョンモンスター(挑戦者の対戦者役)として出演していたヒップホップユニット・ICE BARNのクルーであるFORK氏のような、タイトでおしゃれな韻踏みも彷彿とさせる。

今作でも健在のOHTORA節満載の歌詞

前者はJ-POPの、後者はHIPHOPのと、日本の音楽シーンを牽引する人物たちとなんら遜色のない技巧が散りばめられたOHTORA氏によって紡がれる歌詞は、「気づく人は気づくよね」というようにさりげなく、それでいて楽曲のストーリーを支える屋台骨の一角として仕込まれている。

そんなOHTORA節であるが、今作でも変わらず顕在である。
例えば、儒烏風亭らでんさんが担当するラップパートは、ここまでピックアップしたOHTORA節が分かりやすく炸裂している。

桜花爛漫 染める桃色
別れの予感はソメイヨシノ
I'll be there, I'll be there,
I'll be there, I'll be there
for you
一閃 浴びて Dance with me now!!

ReGLOSS「サクラミラージュ」より

また、「サクラミラージュ」の歌詞は「サクラ」と冠する春のイメージを強くアピールしつつも、春という季節が内包する「出会いと別れ」「始まりと終わり」というように、物事の二面性にも触れた構造となっている。
この点を意識されたのかは推測の域を出ないのだが、上記の引用部にも「別れの予感」というフレーズが使用されていたり、サビではローマ字表記ではあるが「徒桜(あだざくら)」=儚く散っていく桜と、何かが終わっていく様や離れていく様を比喩しているような箇所も見受けられる。

だが、本楽曲の本質的なテーマはサビの最後の一節、「Stay for me」に集約されると私は読み取っている。
春という季節を、ReGLOSSというグループの第二章の始まりと位置付けてみると、彼女たちがこれから経験するであろう可能性あふれる未来もあれば、彼女たちが今の立ち位置にたどり着くまでに失ったものやお別れをしてきたものもあるだろう。
その事実を理解しながらも、隣にいる「キミ」という存在が消えてしまって幻でしか会えない存在にならないように、変わりゆく未来に向けて進んでいく中でも「(出来ることなら)私のそばにいて」と気持ちを伝える。
なんともいじらしいラブソングのようにも感じられるのである。

ここからは更なる私の独自解釈かつ深読みとなるので、その旨をご容赦願いたい。
hololive DEV_ISという「ホロライブの7期生なのか?完全な別枠の(ホロスターズのような)立ち位置なのか?」というユニットや所属セクション定義が曖昧だった状況から、ホロライブファミリーの一員として先輩メンバーはもちろんホロライブリスナーに受け入れられる現在に至るまで、彼女たちを応援して支えてきたファンがいる。
Vtuberとしての立ち位置もキャリアマップも変わっていく中で、時に彼女たちを見つけた時とは異なる環境や方針に戸惑い、中には推すことを辞めて離脱してしまった人もいるかも知れない。
だが、少なくとも今現在自分のことを愛し、声援を送ってくれる画面の向こうにいる存在には、これから先の未来もそばで応援してほしい。
そんな風に彼女たちの思いをOHTORA氏の歌詞が代弁してくれているのかも知れない。
(ソースも何もない私の「もしもこうなら…」なので、「そんなわけあるかい!妄想、乙!」と思われた方、ここは一つ苦笑でご勘弁願いたい)

そもそも、「ミラージュ」という言葉は一般的には蜃気楼を意味する単語である。
蜃気楼の意味から転じて、幻想や幻影といった、存在しない幻を比喩することもあるようだ。
一般的な蜃気楼は、砂漠のオアシスのように、空気や光の屈折で生じる遠方の物体が遠くに見えるなどの現象である。
それが、「春の風に乗せて舞い散る桜吹雪の中で見えた幻を表現する」という世界観にOHTORA氏の手によって昇華されるのは、なんと美しく幻想的だろう。

音乃瀬奏さん:楽曲の中核としてバッチリ決める

さて、ここからは各メンバーごとの感想へと移って行こう。
まずは奏さんのパートを聞いての感想だが、やはりReGLOSSの歌柱!
イントロで始まる一条莉々華さんと儒烏風亭らでんさんの後に、ぐっと引き締める低音ボイスでクールに英語のフレーズを歌い、Aメロのスターターである轟はじめさんへバトンパスをしている。
全体的に高いキーのメロディラインもバッチリ音を当てているし、2番Aメロでの低音との組み合わせも奏さんの揺るぎのない歌唱力を実感できるポイントだ。
何より、トリリンガル(6ヶ国語喋れると初配信時に語っているが、あえてこう表記させてほしい)の本領発揮と言わんばかりのナチュラルな英語の発音には舌を巻く。

他には、1番のバックトラックの音色がいくつもフェードアウトしてシンプルな音色とドラムキック軸になるBメロパートで、明るくポップな楽曲の雰囲気をチェンジする緩急をつける役割を担う点なども、奏さんが担うことでカリスマ性を感じる目立ち方を可能とするし、純粋に奏さんの歌声に耳を傾けることができる美味しい演出となっている。

そして、大サビ前のファルセットでのロングトーンは圧巻で、この成否が最後の大サビをトップ・オブ・ザ・ヘッドへ持っていけるかどうかの鍵を握るパートだ。
この大役を任される奏さんは、やはり歌唱力という点において全幅の信頼を楽曲制作陣や録音を担当しているスタジオのスタッフなどから勝ち得ているのだろう。

ReGLOSSの楽曲には奏さんの存在が欠かせない。
楽曲の中核として、外してはならないポイントをバッチリ決めてくれるのは、やはり奏さんである。

火威青さん:まさかの高音パートで表現の幅が広がる

ReGLOSSの楽曲における青さんといえば、1人オクターブ下でメロディを歌い、低音部から4人の歌声を支える縁の下の力持ち的な役割を担ってきた。
もちろんそれは本人の歌唱キーにマッチしたものであったし、低音は青さんが担当しているということですぐに聞き分けがつくなどのポジティブ要素が大きかった。

しかし、今作のBメロからサビへ繋ぐブリッジの後半で飛び込んでくる青さんのパートは、「青くん!?」と驚くくらい透き通った少女味を感じさせるキレイな高音だ。
これには読者一同、新たな青さんの魅力にメロメロであろう。
なんと言っても、普段青さんが自身のチャンネルで行なっている歌枠などでも滅多に聞くことができない高音なのだから。
その高音を合図に始まる、サビのパッと花が咲いたかのような5色の彩りにあふれたユニゾンへ展開していくのは、楽曲構成として聴いていて非常に気持ちが良い。

どうしても高音のインパクトに青さんの感想は引っ張られがちになるのだが、2番のBメロ後半のブリッジで一度クールダウンするパートでは、スタッカートのリズムを丁寧に歌いながら、サビに向けての溜めをしっかりつける役割を担当している。
このパートの、下記の歌詞はまるで青さんに向けて当て書きがされたのかると感じるほど秀逸だ。

点と線 紡ぐ物語はEndless
Call my name(A-oh)  研ぎ澄ます先見の明

ReGLOSS「サクラミラージュ」より

「点と線」で紡がれる物語は、ストレートな解釈なら小説などの文芸作品だろうが、青さんが歌唱すると「元・漫画家」というキャラクターの個性を持っている青さんのことを指しているのでは?とフォーカスできる。
その後の「Call my name」で呼ばれるのが、「A-oh」なのもまた素敵だ。
歌唱時は「エィ・オゥ」と英語発音となっているが、ライブの時にリスナー側が「ア・オ!」とコールしても問題はないだろうか?
むしろ、それが望まれているような気がしてならない。

轟はじめさん:変幻自在の歌声で示す存在感

本楽曲のはじめさんのソロパート配分はやや少なめではあるが、イントロ終了後の1番のAメロのスターターを爽やかに務めていたり、オートチューンがかかっているが英語パートをクールに決めていたりと、要所要所の楽曲の美味しいポイントではじめさんが確かな存在感を見せている。

私の一押しポイントは、やはり2番のサビへ向かうブリッジ後半(1番では青さんが担当しているパートだ)だ。
ここでは、歌柱の奏さんに負けず劣らずの歌唱力を持ってして、聴き手をサビへと運んでくれるところである。
やや舌足らずなはじめさん独特な発音も少し感じられる歌唱パートなので、まっす組の皆さんも何度もリピートしてみてほしい。

楽曲全体を通してはじめさんのパートの歌い方を聞いてみると、2回担当しているサビの英語パートを同一とみなすと、すべてのパートで歌い方のアプローチが異なっていることにお気づきになるだろう。
上述しているように、1番Aメロでは爽やかに柔らかく、サビの英語フレーズはオートチューンのMIXでクールに。
2番Bメロ後半のブリッジ部分ではそのあとのサビに向けて勢いを与えるように、2番サビの締めの「Stay for me」のフレーズは高音部分にジャストでピッチを合わせて、そして2番終了後のメンバーが代わる代わるリレーしていくRapパートではでは普段の配信時やライブMCでも喋っているような「ばんちょー節」炸裂で。
はじめさんが影分身の術でも使ったかのように、変幻自在に歌声を駆使するのは、奏さんとはまた異なるベクトルでの歌唱力の高さを見せつけてくれるので、どのパートのはじめさんがお気に入りだというのは、人によって評価が割れそうだ。

さて、ReGLOSSの楽曲はサビの一部のパートでは、はじめさん発案の振り付けが公式採用されているのだが、今作でもはじめさん発案の振り付けはあるのだろうか?
その点にも着目しながら、本楽曲が披露される際にはダンスも含めて楽しみにしよう。

儒烏風亭らでんさん:Rapで唯一無二の個性を発揮

デビュー時には破天荒キャラやヤニカス・酒カス・パチン(スロ)カスと、何かとキャラクターづくりに迷走感のあったらでんさんであるが、ことReGLOSSの歌の中では唯一無二の個性を手に入れることに成功したと、「サクラミラージュ」によって感じることができた。
それが、らでんさんが担当する1番Aメロと2番Bメロの間に挟まるRap Verseである。

2月に開催されたらでんさんの生誕祭ライブや、先日大成功に終わった6th fesでも披露していた「鎌倉STYLE」のように、らでんさんの個性的な声質はRapとの相性が存外良い。
「儒烏風亭は前座見習い」と自己紹介フレーズにもあるように、噺家の端くれとして舌もよく回っているのであろう。
言葉と言葉がきゅっと詰まっているRapパートをするっとリズムに乗せて乗りこなせるのは、らでんさんの才覚のなせる業だろうか。

らでんさん自身、知的好奇心が服を着て歩いているような方なので、Rapを取り入れているミュージックにも系統していくのかもしれない。
同セクションの後輩グループであるFLOW GLOWはまさにHIP HOPカルチャーにアタックしていくグループで、リーダーを務める響咲リオナさんを中心にRap楽曲へ挑戦をしている。
また、メンバー5名のうち3名が先輩とコンビを組んだ歌ってみた動画をリリースしている最中であるが、残りの虎金妃笑虎さんか輪堂千速さんのどちらかが、らでんさんとタッグを組んでRap楽曲のカバーをする可能性も想像してみても面白い。
深堀り(ディグ)が高じて、FLOW GLOWよりもRapをするキャラクターになったら…それはそれで面白いかもしれない。
話が脱線してしまったので、「サクラミラージュ」のらでんさんの感想に話題を戻そう。

もちろん、Rapだけでなくらでんさんが担当するパートでも彼女の歌唱力が向上していることは節々から感じられる。
もともとの高い声質は、「サクラミラージュ」のキーの高さではサビのユニゾンでもキレイなハーモニーのピースとなっている。
また、2番のAメロの出だしでは、らでんさんが2曲目の歌ってみたで公開した「オレンジ」でも披露していたような優しく語り掛けるようなアプローチで、歌詞に描かれる情景を次のシーンへとしっかりと誘導してくれている。

まさにストーリーテラーのようなポジショニングで、「サクラミラージュ」の世界観をしっかりと聴き手へ共有してくれるらでんさんのようなボーカルがいるだけで、ReGLOSSというグループの楽曲アプローチの幅が広がっていくのだから、なんとも替えがきかない人材だ。

一条莉々華さん:本楽曲の裏エース

そして本楽曲の裏エースと言っても過言ではない、非常に大きな役割を担っているのは私の推しである一条莉々華さんである。
Teaserで「サクラミラージュ」のイントロフレーズが流れた時、本楽曲の歌いだしが莉々華さんから始まるとわかった瞬間から、私は3月10日0時ジャストのデジタルリリースの瞬間を「いまか、いまか」と、主人からの餌を待って舌を出して尻尾を振るペットの犬のようにそわそわしながら楽しみにしていたのである。

帰国子女の莉々華さんが自身の武器でもある英語で歌うイントロでの歌唱パートは、楽曲がどんな展開をしていくのかと期待感をMAXまで引き上げてくれる。
そして、1番のBメロ後半(奏さんのパートの後)で一度クールダウンするパートでは、ウィスパー味のある優しさを内包した歌い方で、歌詞の主人公の心情を的確に表現している。
このような表現力は、デビューした当初の莉々華さんには身についておらず、「とにかく音程を合わせる」ということに意識が向いて、余裕がないという印象だった。
日々のレッスンを怠らず、自身がアプローチできる音域を拡張するのはもちろん、歌唱時の表現力を身に着けるレッスンなども進めてきたのであろうか、依然と比較して抜群に歌がうまくなったということを誰の耳にも明らかなクオリティで示されている。

その最たる例は、2番のBメロ部分(1番で奏さんが務めた部分)を莉々華さんが担っていることに集約される。
以前私は莉々華さんの歌唱技術に関してnoteの記事で分析をしているが、その際には「莉々華さんの音域は一般的な女性よりも低いので、高音を出すことを苦手としている」という旨の分析をさせていただいた。

ただし、これは「サクラミラージュ」の発売前に莉々華さんが自身のチャンネルに投稿されていたオリジナル曲を含む歌動画5本分と、アーカイブにて聞き直しをした歌枠動画、ReGLOSS公式チャンネルで公開されている歌唱担当動画を聞いての評価である。
冷静に考えれば、毎日のようにレッスンを頑張っている莉々華さんの歌唱技術や実力が、過去のまま停滞しているわけがないのだ。
その証明となる、とても綺麗で安定している高音は、聴く人誰もが「清楚な一条莉々華」を感じることができる、まるでガラス細工のように美しい歌声だ。

ReGLOSSのボーカルディレクションがどのようなスタイルで行われているのかは明言されていないが、アイドルグループのレコーディングでよく用いられる手法としては、一人一人がソロで楽曲のメインボーカルラインを通しで歌い、その歌声をもとにボーカルディレクションとMIXが行われて、完成版の歌割が発表されるという形式がスタンダードであろう。
それは、ReGLOSSのデビュー曲である「瞬間ハートビート」や、後輩グループのFLOW GLOWのデビュー曲である「FG ROADSTER」でメンバーごとのソロバージョンが間髪入れずにYouTube上などで公開できるように準備されていることから、ホロライブ内でもこの手法が取られている可能性が高いと私は見ている。

莉々華さんの性格を考えると、自らこの奏さんの裏に配置されるパートはやや自信を持てずに収録に臨んでいたのではないだろうか。
だが、結果は選ばれている。
日々の莉々華さんの努力はしっかりと実を結んでいることを、楽曲制作陣は分かってくださっているのだ。
その証拠に、莉々華さんも配信で嬉しそうに語っていた収録時のエピソードとして、はじめさんやスタッフの方に「サクラミラージュは莉々華さんの歌声に合っているね」という趣旨の誉め言葉を頂いたそうだ。
これはお世辞でもなんでもなく、本当に莉々華さんの歌声とマッチしていると感じているからこその発言であり、莉々華さんの上達した歌唱力がちゃんと評価されている証拠であろう。

もう1つ、私が「サクラミラージュ」の莉々華さんパートで好きな箇所がある。
大サビに入る前、莉々華さん以外の4人のメンバーが代わる代わるRapパートを担った後である。
莉々華さんが担当することになった歌詞も、素敵なフレーズで私は気に入っている。

ずっと飾らないキミでいて
人伝いの温度で 誰かがそう嘆いた

ReGLOSS「サクラミラージュ」より

莉々華さんのファンである秘書見習い以外が莉々華さんにもつイメージは、豪快でガサツな男勝りな酔っ払いの印象だろうか。
およそ人間離れした不思議な体の使い方や、インターネット上でコラージュとなったベッドの上で飛び跳ねる女性を彷彿とさせるようなジャンプだろうか。

もちろん、そういった盛り上げ役としての一面も莉々華さんではあるが、それがすべてではないことを、普段から莉々華さんの配信での振る舞いを見てきているリスナーは知っている。
案外ネガティブであったり、先輩とのコミュニケーションに躊躇してしまったり、ダンスが踊れずにレッスン付の日々を苦しく感じていたり。
PCやスマホの画面を隔てているが、リスナーはVtuberモデルに身をまとうその向こうに、莉々華さんの飾らない人間臭さを感じ取っていて、それもひっくるめて彼女のことをいとおしく感じている。
だからこそ、歌が上達しても、ダンスの振り付けを覚えるのが早くなっても、苦手なことを1つ1つ克服していっても、莉々華さんには飾らない莉々華さんで居続けていてほしいと願うリスナーが多いのであろう。

まだお披露目されていない本楽曲のダンスフォーメーションであるが、このパートを莉々華さんが歌う際には、ラップパートをリレーした4人の間から堂々とセンターにポジションに立って歌声をリスナーへ届ける莉々華さんの姿があってほしいと願う。
そんな日が来たら、また私の涙腺は緩んでしまうだろう。

MV未公開の意図への考察

さて、この「サクラミラージュ」であるが現時点ではReGLOSS楽曲公開にセットでついてきていたMVは公開されていない。
ネガティブな考えをすると、制作予算が足りなかった、あるいは依頼していた動画編集者との調整がうまくいかなかったという予想がよぎる。
だが、私は「あえて本楽曲はMVはなし、あるいは後出しにする」戦略をとっているのではないかと考えたい。

音源のみの公開であることにより、「サクラミラージュ」の視聴ページで再生ボタンをクリックしたリスナーは、全神経を鼓膜へ集中させることになる。
仮に素敵なMVが付いていたとしたら、リスナーの意識や感想はMVの映像へと引き込まれてしまう。
だからこそ、彼女たちの成長したボーカル力で勝負に出てきた「サクラミラージュ」においては、まずは歌声に100%集中してほしいというメッセージが、運営側から込められているのではないだろうか。

その目論見の補完となる論拠は、1月末に公開されたReGLOSSがカバーしたホロライブの先輩である星街すいせいさんの「ムーンライト」であろう。

このカバーも、都会の夜景の映像をベースにした映像に歌詞のテロップを差し込んでいくという極めてシンプルな作りとなっており、すいせいさんのアプローチとは異なる5人の歌唱力に意識が集中することとなった。
それだけ、新章のReGLOSSは「歌」という表現手段で、リスナーに余すことなくユニットの魅力を届けたいのだと考えている。

おわりに

さて、そんな新章スタートを開始したReGLOSSであるが、早速この「サクラミラージュ」リリースを記念したミニライブを3月30日の20時から、YouTubeのReGLOSSの公式チャンネルにて配信することが決定した。

このライブでは、Unreal Engineを活用したライブ映像で配信されるということで、より鮮明なカメラ映像で彼女たちのダンスパフォーマンスを楽しむことができるであろう。
また、ミニライブのTeaserに使用されている楽曲で流れている楽曲は、これまでのReGLOSSの楽曲のインストゥルメンタルに合致するメロディがない。
ReGLOSSの登場アンセムはこれまでは「瞬間ハートビート」のトラックをベースにしてきたものだったので、それとも異なるように感じる。
もしかすると、もう1曲新譜を仕込んでいるのであろうか?
他にも、ReGLOSSメンバーは莉々華さんが「今日も大天才っ!」、青さんが「Club Blue Fire」、はじめさんが「Countach」とオリジナル曲を携えている。
(らでんさんの「まいたけダンス」をオリジナル曲にカウントしてよいものか、少し判断に迷うところではある)
ソロ曲のパフォーマンスも行われる可能性も、期待してよいだろうか?

まだライブ実施日と配信場所のみというオープンになっている情報が少ない情報下であるので、月末まで楽しみに待とうではないか。
それまでに、「サクラミラージュ」は何回鬼リピートをするのだろう。

雪が降ることもあるなど、まだまだ冬の寒さが残る日々が続くが、「サクラミラージュ」を聞きながら、暖かな春の訪れを待つというのも、なかなかにオツなものではないだろうか。


参考文献
・ササクレストProfile 「OHTORA」
https://sasakrect.com/creator/ohtora/

・作曲家「OHTORA」の技巧を探る ホロライブへの提供楽曲と新EPを繋ぐ共通点
https://kai-you.net/article/91186

・【インタビュー】OHTORA「何か新しいものを」、令和に目覚めたシンガーソングライター
https://www.barks.jp/news/?id=1000191331

・ササクレストProfile 「New K」
https://sasakrect.com/creator/new-k/

・New K(FUNLETTERS)インタビュー 「手を動かす前に頭の中で曲の着地点を決めておく」Zoomgalsへのビート提供などソロ名義の活動も広がる注目のプロデューサー
https://magazine.tunecore.co.jp/stories/102534/

いいなと思ったら応援しよう!