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バイオプロセス論文を読む CHO細胞開発の進化:その9

みなさん、こんにちは。
現在、ADCや多重特性抗体が盛んに開発され、抗体医薬品の勢いはますます加速しています。その抗体医薬品を製造するためには、抗体を効率的に産生するCHO細胞株を開発する必要があります。その際に、目的の抗体遺伝子をCHO細胞のゲノムに組み込むのですが、その遺伝子の導入方法に進化が起きています。その技術進化について、”The new frontier in CHO cell line development: From random to targeted transgene integration technologies”という論文で詳しい説明がなされています。論文のURLを以下にお示しします。

https://doi.org/10.1016/j.biotechadv.2024.108402

このNoteの投稿では、この論文を少しずつ着実に読み進めて行き、最終的にはその技術進化について理解することを目的としています。既に既存技術であるRandom Transgene Integration の項は終わり、前回からSemi-targeted transgene Integrationの項に入りました。そして9回目である今日は、3.2. Transposase/transposon systems and their implementation in CHO cell line development(トランスポザーゼ/トランスポゾンシステムとCHO細胞株開発への応用)を勉強していきます。

なお、過去の投稿(その1から8まで)は以下のマガジンに収納されていますので、ぜひ、ご参照下さい。

それでは、3.2. Transposase/transposon systems and their implementation in CHO cell line development(トランスポザーゼ/トランスポゾンシステムとCHO細胞株開発への応用)を訳して行きましょう。

3.2. トランスポゼース/トランスポゾンシステムとCHO細胞株開発への応用

トランスポゼース/トランスポゾンシステムは、宿主細胞の種類や使用する培地システムにかかわらず導入効率が高く、実装も容易であることから、近年の産業用途におけるCHO細胞株開発(CLD)プロセスにおいて、その重要性が増している。これらのツールは数十年前にすでに発見されていたが、バイオ医薬品の研究分野で本格的に注目を集めるようになったのは比較的最近のことである(Cary et al., 1989)。現在、バイオ医薬品の研究開発で一般的に使用されている市販のトランスポゼースシステムには、Sleeping Beauty、PiggyBac、Leap-In®、および DirectedLuck™ がある(Table 2)。とりわけ注目すべきは、これらすべての(また一部は商業化された)トランスポゼースシステムが、たとえばタンパク質工学によって機能性を強化するなど、系統的な最適化が施されており、野生型のオリジナルと比べて高い機能性を示している点である(Burnight et al., 2012;Cui et al., 2002;Mátés et al., 2009)(Table 3)。

注1) 表2は、CHO細胞で使用されるトランスポゼースシステムの構築に向けたエンジニアリング手法の一覧です。
注2) 表3は、CHO細胞における安定発現細胞株構築に用いられるトランスポゼース利用システムの比較で、力価データも含まれています。ぜひ、リンク先から論文中の表をご確認ください。

続きの訳になります。

利用可能なトランスポゼースシステムの数が比較的少ないという事実は、機能的な新規トランスポゼースを見つけ出すことがいかに困難であるかを示している。ほとんどのトランスポゼースは、進化の過程で宿主生物によって不活性化されるか、遺伝的にサイレンシングされている。というのも、常に活性状態にある(構成的に活性な)トランスポゾンは、ゲノムの不安定性を引き起こし、生物にとって不利な影響をもたらすためである(Hsu et al., 2021)。さらに、トランスポゼースはしばしば認識するDNA配列に対して非常に高い特異性を持っているため、対応するトランスポゾンITR配列を持つ標的配列を新たにゲノム中から特定することは極めて困難である。特に、トランスポゼース遺伝子を挟む配列が進化の過程で変異している場合には、その難しさは一層増す。

このようにして、市販されているトランスポゼースシステムは数が限られており、その利用は高額なライセンス料や不利な商業条件によってしばしば制約を受けている。それにもかかわらず、トランスポゼースを用いたCLDワークフローには刷新と改善の可能性があり、長期的に見れば、その初期投資の大きさも少なくとも一部は正当化される可能性がある。

和訳は以上です。

最後にCLDに直接関連する要点をまとめると、
1. トランスポゼース/トランスポゾンシステムは、CLDにおいて高効率かつ柔軟な導入手法として有望である
 - 宿主細胞の種類や培地システムに依存せず、導入効率が高く、実装が容易。
 - Sleeping Beauty、PiggyBac、Leap-In® などの商用システムが使用されている。
2. 商用導入にはコストと契約条件の制約があるが、長期的にはCLDワークフローの刷新と改善につながる可能性がある
 - 市販されているシステムは数が限られており、ライセンス料や商業条件が導入の障壁となっている。
 - それでも、得られる技術的メリットにより、初期投資は長期的に正当化されうる。

次回は、3.2.1. The sleeping beauty transposase systemに進みます。お付き合いありがとうございました。

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