ジム女子会、最年少イソジの生存戦略
ジムで仲良くしてくれるズンコさん(80代)から、お誘いがあった。
「韓国行ってきたから、お土産渡したくてね。家においでよ」
「家においでよ」と言われた瞬間、私は家にある、どのタッパーにしようかな、と考えていた。
大きめがいい。絶対、大きめがいい。
ズンコさんは、プールで泳ぐ。
フラダンスも踊る。
そして韓国まで一人で行ってくる。
80代とは思えない、艶々のマダムである。
集まったのは、北野さん(80代)、ヨシヨシさん(70代)、そして私みーちゃん(イソジ)。
この中で、ぶっちぎりの最年少である。
韓国海苔をありがたく受け取り、いざ食卓へ向かうと——
煮物。天ぷら。煮物。天ぷら。
そして、赤飯。
さらに、おこわ。
しかもズンコさんは鹿児島出身。
竹の皮で包んだ、見たことないおこわまで出てきた。
赤飯か〜らの、おこわ。
破壊力抜群。
体育会系の大学生でも来るんですか?という量である。
でも私は知っていた。
マダム勢の食事量は、お上品な小鳥さんサイズ。
北野さんもヨシヨシさんも、ちょこっとつまんで、あとはお喋りが主食である。
しかもズンコさんの家、ほんとに色んなモノが出てくる。
だから、タッパー。
大きめのタッパー。

ビールにチューハイで乾杯。
煮物に箸をのばそうとして、私は立ち上がる。
「私、お皿運びますね〜」
すると即、ズンコさんの一声が飛ぶ。
「座って、座って」
ヨシヨシさんも気を遣って立とうとする。
「座って、座って」
何があっても、台所に入れてくれない。
正直に言います。
ラッキー。
洗い物しなくていいの、本当に助かる。

お酒が回ってくると、マダム勢の本音が出てくる。
ズンコさんと北野さんが、顔を赤らめながら熱弁を始めた。
「うちはね、私のやり方があるの。台所、触ってほしくないのよ」
「そう、そう。そんなことされるくらいなら、早く帰ってほしいって思っちゃう」
「うちの嫁もね、一応マネしてくれてるんだけど、でも違うのよね〜」
80代二人、めちゃくちゃ熱い。
うんうん、と聞きながら、私は赤飯をタッパーに詰める算段を始めていた。
そしてもう一つ、マダム会の七不思議。
会話、成立してないのに、成立する。
主に喋り倒しているのは、ズンコさんと北野さん。
80代二人。
ズンコさんは、韓国旅行の話、嫁の話、台所の話。
北野さんは、戦中の話。
70代のヨシヨシさんですら、この二人から見たら「若手」枠で、聞き役に回っている。
私はもう、聞き役を通り越して、おこわをタッパーに詰める係である。
全員、別の話をしている。
ズンコさんが韓国海苔の話をしてるそばで、北野さんが戦中の話を始める。
誰も話を遮らない。
ヨシヨシさんが「あらまぁ」と頷き、私も「へぇ〜」と赤飯を詰める。
それなのに、なぜか場が回っている。
誰も困っていない。
みんな満足げに頷いている。
この現象、誰か研究してくれないだろうか。

さらに、最年少には宿命がある。
「みーちゃんは若いんだから、食べられるでしょ〜」
「ほら、もっと食べて」
「天ぷら、もう一つどう?」
マダムよりは、確かに若手。
でもこちとらイソジである。
本当にきついっす。
でも大丈夫。
その場で食べられなくても、私にはタッパーがある。
会も終わり、タッパー満載で帰宅。
洗い物なし。
夕飯の仕込みなし。
手土産は韓国海苔と、ズンコさん作の煮物、天ぷら、赤飯、そして竹の皮のおこわ。
完全勝利。
帰り道、ふと思い出した。
ズンコさんは、ジムの帰り、いつも一人でハイボールを飲むと言っていた。
夫を亡くして、一人暮らしだから。
今日、みんなが来てくれて、本当に嬉しかった、と笑っていた。
台所は誰にも触らせない。
でも、家には招き入れる。
それがズンコさんの流儀なんだろう。
——次回もまた、大きめのタッパー持って行きます。

「マダム会公認・公式テーマソング♡「タッパー☆スピン」」 🌀
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