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軽トラ寄りの、わたしのベンツ。

わたしは、自転車を部屋の前に置いている。

下の駐輪場に置けばいいじゃん、と自分でも思う。

でもイヤなのだ。

盗まれたり、イタズラされたりしたら、
たぶん、わたし、けっこう本気で落ち込む。

だから毎回、エレベーターに乗せて、
部屋の前まで連れて帰る。

ちょっと面倒くさい。

でも、大事な相棒だから。

この自転車、もう10年くらい乗っている。

見た目は、正直ボロい。

カゴは少しゆがんでいるし、
ところどころ塗装もはげている。

ピカピカの高級感は、ない。

むしろ、くたびれている。

そんな自転車に、今朝。

エレベーターで一緒になったおっちゃんが言った。

「かっこいいベンツだね〜〜」

……ベンツ?

どう見ても軽トラ寄りですけど(笑)

でも、その一言で、朝からゴキゲンになった。

なぜか。

それは、この自転車が
ただの移動手段じゃないから。

わたしは脳出血で入院し、
急性期病院からリハビリ病院へ転院した。

リハビリの目標を聞かれたとき、
わたしは言った。

「自転車に乗りたい」

リハビリ室には、足をくるくる回す機械があった。

時間が終わっても、自主練した。

そして、いよいよ外へ。

理学療法士さんが、ふたり。

ひとりが自転車の横。
ひとりが後ろ。

完全ガード体制。

最初はフラフラ。

止まる。

またこぐ。

また止まる。

正直、ちょっと怖い。

でも、何回か繰り返して——

すーーーーーっと。

あきらかに違う感覚。

横の手が離れている。
後ろの気配が少し遠い。

わたし、自分で進んでる。

その瞬間。

「乗れましたーーー!!」

理学療法士さん達がすごく喜んでくれた。

でも退院後の生活は、きれいごとじゃない。

病院はフラットな床。
上げ膳据え膳。

家は、実戦。

洗濯。
ゴミ出し。
段差。
段取り。

正直思った。

「🏥いたときのが、ラクじゃね?」

でも、それでも。

自宅にまさるとこない。
退院祝いに旦那に買ってもらった、この自転車を
生活仕様にカスタムした。

荷台をバスケットに変え、
買い物できるようにした。

前と同じじゃない。

でも、“今のわたし仕様”。

見た目はボロい。

カゴもゆがんでる。

でも。

フラフラして、止まって、
何回もこいで取り戻した自由を、
この10年、黙って運んでくれている。

ブランドでもない。
値段でもない。

だからこれは——

わたしのベンツなんです。

どう見ても軽トラ寄りだけど(笑)



#脳出血
#高次脳機能障害
#note書くのがリハビリ
#退院後の生活
#わたしのベンツ

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