働かないおじさんが、旅人に出会った日。

うちには、働かないおじさんがいる。
正体は、私の左足だ。
脳出血のあと、私が思うようには動かなくなった。
でも「麻痺」なんて冷たい言葉じゃ呼びたくなくて、
私はこの足を「働かないおじさん」と呼んでいる。
朝はだいたい遅刻。
残業ゼロ。
出世に興味なし。
「与えられた仕事しか、しません」って顔して、毎日座っている。
そんなおじさんが、ある日めずらしくソワソワしていた。
タカーズ事務所に、新しい仲間が入ったらしい。
ルンタッタさん。
旅が人生の、バックパッカー。
海外を歩いて、その土地の暮らしや考え方を、
やわらかい言葉で届けてくれる人だ。
「世界中を、自分の足で歩いてるんだとさ」
私が記事を読んで聞かせると、
おじさんが、ぼそっと言った。
「……ふーん」
ぜんぜん「ふーん」じゃない顔をしていた。

しばらくして、おじさんがまた口を開いた。
「みーちゃん」
「あの人の足、何キロ歩いてるの」
「さあ。地球一周くらい?」
「…………」
おじさん、黙った。
寒い時や、たくさん歩くとすぐゴキゲン斜めの足が、黙った。
でも、おじさんはおじさんである。
ひとしきり黙ったあと、開き直った。
「いや、オレは定時で帰るんで」
うん。
知ってる。
「動きたいやつが、動けばいいんだぞ」
うん。
それも、知ってる。

そのくせ、おじさんはそのあと、
ルンタッタさんの記事を、こっそり最後まで読んでいた。
アメリカで、車をわざとぶつけ合って壊す競技を見た話だった。
最後まで動いてた車が、勝ちなんだそうだ。
読み終わったおじさんが、ぽつりと言った。
「……壊されるために走る車も、いるんだな」
「オレは、走らないけど」
なぜか、車に親近感を抱いていた。
それにしても、と、おじさんは続けた。
旅の話のはずなのに、
いつのまにか、生き方の話になっている。
「当たり前って、本当に当たり前なのかな?」
ルンタッタさんは、そう書いていた。
おじさんは、しばらく天井を見て、
それから、ぼそっと言った。
「……いい足してんな、あの人」
ほめてた。
あんなに張り合っておいて、最後はほめてた。
おじさんは、今日も働かない。
朝は遅刻するし、残業はしないし、
明日もたぶん「与えられた仕事しか、しません」って顔をする。
でも。
その働かない左足が、
今日も私を、立たせてくれている。
世界中を歩く足も、
一歩も働きたがらない足も、
どっちも、ちゃんと、足だ。
旅人さん、これからよろしくね。
うちのおじさんが、
こっそりファンになったみたいです。

🎤うちのおじさん、働かないのにセンターで歌うらしいです。
(※本人にやる気はありません)
タカーズ事務所デビューライブ「働かないのに、センター」
キジトラのうつおは本気、おじさんは半目。アヒルは勝手に参加。
ミチPから画像をお借りして色々作りました♪
そして、私のおじさんを『シビれる〜💖』とまで言って
くれた、ルンタッタさん
お二人とも、私のバカバカし〜い妄想に
付き合ってくれて
ありがとう✨✨
🐱 おじさんが惚れた、ルンタッタさんはこんな人
▼ ヒトリミチさんのスカウト記事(ルンタッタさんの人物紹介)
▼ おじさんが読んだ記事(壊される車に親近感を抱いた一本)
▷タカーズ事務所 共同マガジン
👉️まきマネージャー活動記録
(過去のまとめ記事)
