働かないおじさんと、初詣
うちのトイレは、狭い。
掃除する場所は、だいたい腰より下にある。
だから、かがむ。
かがもうとすると、
働かないおじさんが、全力で阻止する。
(麻痺している左足のことを、
私は愛称をこめて、そう呼んでいる)
膝の曲げ伸ばしって、
ほんとは、うまーーくできてる動きだと思う。
曲げて、伸ばして、立ち上がる。
何も考えなくても、体が勝手にやってくれるやつ。
でも今は、その「勝手に」が、勝手じゃない。
だから私は、
突っ張り棒状態の足で、
トイレ掃除をするハメになる。
曲げない。
伸ばしきる。
壁と床と自分で、三点支持。
見た目はたぶん、かなり不格好。
でも、倒れてない。
撤退もしてない。
おじさんもさー、
新年明けたんだから、
もうちょっと融通きかしても、
いいんじゃない?
って、心の中で言ってみる。
でもね。
脳出血して、いろいろあって、
うーーーって思ったことも、正直たくさんあったけど。
私は、ケンカしないことにした。
最初のころは、
おじさんが消えるように、願ったよ。
そりゃあ、そうだよね。
でも、消えなかった。
だから、追い出すのも、
無理やり動かすのも、やめた。
今日はどこまでいける?
今は、何が無理?
そうやって、相談することにした。
でね、今日は、初詣に行ったわけ。
おじさんも、もちろん、連れて行くよね。
階段も、砂利も、人の流れも、
全部、おじさんと相談しながら。
空はね、
寒いから、きれいに澄んでたよ。
お願いごとは、ひとつだけ。
今年も、
ケンカせずに、やっていけますように。
おじさんは、相変わらず、
そんなに融通はきかない。
でも、初詣には、ちゃんと、ついてきた。
それで、今年のスタートとしては、
私は、十分だと思ってる。

