遺影、撮っとこ。
二月生まれの三人で、誕生会をした。
私、リツコ、もも。
十八の頃からのオトモダチ。
もちろん全員、イソジ。
飲んで、だいぶいい感じに酔ってきたころ、
リツコがふいに言う。
「夜のほら、アレよ、あれ♥️」
若い頃なら、顔を赤くして小声になる話題。
でも今は違う。
私は即答する。
「あるわけないーーだって股関節が硬いし。」
ももも負けない。
「えーーだってダンナ、枕臭いのにありえないし。」
ときめきより可動域。
色気より体調。
イソジの夜は、だいたい身体の都合の話になる。
「遺品整理してたらさ。」
と、リツコがグラスを置いた。
「女のLINEが、まーーーーーたくさん。
しかもバ◯アグラ、箱単位。」
私たち、声をそろえて。
「箱単位〜〜⁉︎」
ひとしきり笑ったあと、
ももが真顔で言う。
「バイ◯グラって、心臓にだいぶ負担かかるみたいだね。」
一瞬の間。
リツコがゲラゲラ笑い出す。
「あの人、飲み過ぎたんだよーー!」
「医者は知ってたけど、言えなかったんだね!」
旦那さんは、一昨年、大動脈解離で突然亡くなった。
血圧も高かったらしい。
でもリツコは、喪主をちゃんと務めて、
まっすぐ立っていた。
遺品整理で出てきた大量のLINEも、
箱単位のバイア◯ラも、
全部まとめて「あの人らしい」と笑う。
怒りでもなく、恨みでもなく、
豪快だったオトコの武勇伝みたいに。
十八の頃から変わらない。
女の私から見ても、ほんっとにいい女。
そして帰り際。
「遺影、撮っとこ。」
リツコが言う。
「へんな写真、絶対イヤだし。」
「だね、だね!」
ゲラゲラ笑いながら、ちゃんとカメラ目線。
豪快なオトコの話をして、
股関節と血圧の話をして、
最後は自分の遺影の心配。
それでも笑っている。
イソジは、強い。
艶じゃない。
若さでもない。
現実を笑えること。
遺影だって楽しんで撮ること。
それが、今の私たち。

