「駆逐対象」と「遊び相手」が同時に存在するとき、何かが曖昧になる
上記のニュースや告知を見たとき、最初に浮かんだのは賛成でも反対でもなく、
ただ 「何か違和感があるな」 という感覚だった。
ブラックバスが外来種として問題視されることは理解できる。
在来の生きものへの影響も、何らかの対策が必要だという話もわかる。
でも、普段は釣り禁止の湖を期間限定で開放し、
「駆逐せよ」と強い言葉で呼びかけ、
参加者は楽しそうに釣りをして、ランキングや表彰もある。
その光景を見たとき、どうにも気持ちがすっきりしなかった。
うまく言葉にしにくかったその違和感を、少しずつ分けてみると、
たぶんいくつかの種類があるのだと思う。
女神湖では、ブラックバス駆除を目的とした期間限定イベント「MEGAMIKO BASS BUSTERS」が行われ、参加者は専用Tシャツを購入して参加する仕組みになっている。公開案内では「単なる釣り大会ではなく、外来魚駆除プロジェクト」と説明されている。 Source Source
報道でも、女神湖は本来釣り禁止で、ブラックバス駆除のためにイベントとして実施しているとされている。 Source
1. まず引っかかったのは、「駆逐せよ」という言葉だった
ブラックバスは、たしかに外来魚だ。
けれど同時に、釣り人にとっては長くスポーツフィッシングの対象でもあった。
ルアーで狙い、駆け引きを楽しみ、その引きを味わう。
そういう魚として関わってきた人にとって、
「駆逐せよ」という言い方は少し強すぎる気がした。
もちろん、外来種対策として厳しい表現を使いたい意図は分かる。
ただ、釣り人の感覚からすると、
いつも遊ばせてもらっている魚に対して、急に敵意の強い言葉を当てている感じ がしてしまう。
もし同じ内容でも、
外来魚対策
生態系保全のための管理捕獲
回収協力イベント
のような言い方なら、受け止め方は少し違ったかもしれない。
問題は、駆除そのものへの賛否だけではなく、
どういう言葉で伝えるのか でもあるのだと思う。 Source
2. 次に引っかかったのは、楽しさと善行が混ざっていることだった
このイベントは、公開案内を見る限り、
専用Tシャツを購入して参加
毎日ランキングを発表
大物と最多釣果を表彰
SNS掲載もある
という、かなりイベント性の強い作りになっている。 Source Source Source
釣りとして考えれば、正直、楽しそうではある。
普段釣り禁止の湖で、しかも魚が他のフィールドほど擦れていないなら、
釣り人から見れば魅力を感じる人がいるのも自然だと思う。
でも、その楽しさの前に
「これは環境保全のための良いことです」
という建前が強く置かれている。
もちろん本当に保全につながるなら、それ自体は悪いことではない。
ただ、どこかで
楽しさがある
でもそのままでは後ろめたい
だから善行という言葉が前に出てくる
という構図に見えてしまうと、
楽しんでいること自体に、少し言い訳が必要な空気 が生まれる。
そこに、何とも言えない居心地の悪さがある。
3. いちばん大きかった違和感は、「で、どう処理するのか」が見えないことだった
駆除を掲げる以上、本来いちばん気になるのはそこだと思う。
公開案内では、
開催期間
参加費
専用Tシャツが許可証であること
営業時間
ボート利用
ランキングや表彰
ゴミの持ち帰りなどの注意事項
は確認できる。 Source
一方で、少なくとも私が確認した範囲では、
釣ったブラックバスはリリース禁止なのか
主催者が回収するのか
持ち帰りなのか
検量後の扱いはどうするのか
といった、いちばん重要な処理ルール は公開案内でははっきり見えなかった。 Source Source
ここが曖昧だと、どうしても思ってしまう。
駆除というなら、そこを最初に書くべきではないか。
逆にそこが見えないまま、
「撲滅」「駆逐」「表彰」「SNS」が前に出てくると、
外からはどうしても建前だけが目立って見えてしまう。
4. 長期的にどうしたいのかが見えてこない
もうひとつの違和感は、これが一回のイベントとしては成立していても、長期計画としてどうなのか分からないことだ。
女神湖の公開情報から確認できるのは、
期間限定イベントとして実施していることと、駆除を目的にしていることまでで、
その先の
何年単位でどう減らしたいのか
目標個体数はあるのか
モニタリングはするのか
再び増えた場合はどうするのか
環境省の「オオクチバス等の防除の手引き」では、
侵入初期の早期捕獲や毎年の集中的な捕獲によって、駆除や低密度管理に成功し、在来種の回復の兆しが見えた水域もあるとされている。 Source
ただ同時に、
大量に捕獲しても、少し捕り残せば個体数を盛り返すことがある
とも書かれている。 Source
さらに、防除の効果を高めるには、
一つの手法だけに頼らないこと
複数手法を組み合わせること
モニタリングを行うこと
結果を見て計画を見直すこと
が重要だという。 Source
つまり専門的に見ても、
年1回や短期イベントの間引きは、ゼロよりはましでも、それ単独で十分とは言いにくい。
だからこそ、
「このイベントで何を目指しているのか」
よりも先に、
「この湖を将来どうしたいのか」
が知りたくなる。
本気で撲滅・抑制したいのか。
それとも、年に一度少し減らして現状を持ちこたえたいのか。
その方針が見えないことが、建前っぽさにつながっているように思う。
5. 釣り人のモラルに依存しているように見えることも、少し怖い
そして、ここは避けて通れない。
一番問題なのは、やはりモラルの悪い釣り人だと思う。
勝手に放流する
ルールを破る
隠れてリリースする
ゴミやラインを残す
こういう行為があれば、どんな制度も壊れる。
まともな釣り人まで、まとめて信用を失う。
ただ、その一方で思うのは、
制度というものは、モラルの悪い人が一定数いる前提で作られるべき だということだ。
善意に頼るだけでは弱い。
だからこそ、
方針を明確にする
ルールを明文化する
違反時の対応を示す
回収や処理の流れを可視化する
といった部分が必要なのだと思う。
つまり、問題の根っこは釣り人のモラルだけではなく、
モラルが揺らぐ場面をどう制度で受け止めるか にもある。
6. だからこそ、方針はどちらかに寄せたほうがいいと思う
釣り人として素直に思うのは、
こういう湖こそ、どちらの方針なのかをはっきり示してほしい ということだ。
スポーツフィッシングの湖として残すなら
遊魚ルールを明文化する
遊魚券などで管理する
収益の使い道を示す
利用と保全の両立を正面から掲げる
本気で撲滅・抑制する湖にするなら
リリース禁止を明文化する
回収・処理方法を示す
複数年計画を立てる
モニタリング結果を公開する
このどちらかに寄せてくれた方が、
参加する側も、自分が何に協力しているのか分かる。
いちばん苦しいのは、その中間だ。
釣りとしては楽しそう
でも建前は撲滅
ただし本気の長期計画は見えない
ルールの中身も見えにくい
これでは、
楽しむことにも、善行であることにも、どこか自信が持てない。
おわりに
建前ではなく、方針を見せてほしい
私は、外来魚対策を否定したいわけではない。
やるならやるで、筋を通してほしいだけだ。
ブラックバスをスポーツフィッシングの対象として扱うのか。
それとも、本気で抑制・撲滅を目指すのか。
その方針が見えないまま、
強い言葉とイベント性だけが前に出てくると、
どうしても「何か違和感がある」という気持ちが残る。
たぶん私が感じていたのは、
ブラックバスへの好き嫌いではなく、
楽しさと正しさが整理されないまま混ざっていることへの違和感 だったのだと思う。
建前を重ねないと楽しめない仕組みは、
どこかで誰かに後ろめたさを残す。
だからこそ、まず必要なのは、
この湖を将来どうしたいのかを、正直に示すこと
なのではないだろうか。
参考にした公開情報
信州たてしな観光協会「【期間限定】女神湖でブラックバス釣りができる!」
https://shirakabakogen.jp/event/event-4741/信州たてしな観光協会「女神湖ブラックバス駆除釣りイベント」
https://shirakabakogen.jp/information/information-4707/FNNプライムオンライン「ブラックバスを釣って駆除 長野・女神湖で1ヵ月に及ぶ大会 最大サイズはSNSに掲載」
https://www.fnn.jp/articles/-/1052700ARURA MEDIA「6/16(日)『ブラックバス駆除釣り大会 in 女神湖』開催!」
https://arura-media.jp/topics/13356/環境省「オオクチバス等の防除の手引き」
https://www.env.go.jp/nature/intro/3control/files/manual_bass.pdf
どんなルアーが釣れるのか、実はよくわかっていない….
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