[国会と予算4]世界一長いのに世界一決まっている議会
以前の記事にて、
国会は「効率」より「手続きの正当性」を重視する制度
という結論を自分の中で得ていたが、この整理の段階でChatgptより面白い言葉を提示された。
日本の国会は、
世界一長いのに世界一決まっている議会
この自己矛盾を孕んだようなワードには、かなり惹かれる。
今回は、このワードを海外との比較・制度・歴史などの観点から整理していきます。
■世界一長いのに世界一決まっている議会
1. 世界一長い → 手続き・時間の冗長さ
日本の国会は質問中心で運営され、討論より質問が中心
予算審議や法案審議は段階的・複雑で長期化
与野党の役割は慣例化され、議事日程が精密に管理される
選挙直後や重要法案のときでも全体の時間は長い
2. 世界一決まっている → ルール・慣例の強さ
手続きや発言順序は事前にほぼ固定
与党の主張・野党の質問パターンは予測可能
個々の議員の自由度はあるが、全体のパターンは揺らぎにくい
これが「決まっている」の理由で、理解はできるが、なぜこうなったかはまだ説明が必要
→なんとなく実感のあるような説明が並び、理解はできる。
が、なぜこうなってるかはわからない。
そこで、次は世界一という枕がつくのだから、
他の国との比較をしてみることにする。
■海外議会との比較
米国(連邦議会)
制度構造:上院・下院とも採決は多数決だが、議員個人の裁量が大きい
選挙区重視で、個人判断で是々非々を示すことが可能
党議拘束は日本ほど強くない
英国(下院・議院内閣制)
小選挙区制で党の力が強い
与党議員は党方針に従うのが常識
個人裁量で是々非々を出すのは少数
ドイツ(比例代表中心)
議員は党に責任を持つ形で選出
党としての合意形成が優先される
日本に近く、党統制が強い
選挙制度と議会制度により、党統制の強さ・個人裁量の余地が決まることが分かる
→様々な国の制度を並べてみると、
選挙制度と議会制度によって
政党の統制、つまり議決の際の党議拘束の強さに影響するlことがわかる。
そこで、次は日本の選挙制度と議会制度について整理していく。
■制度から見る
議院内閣制
内閣は議会信任で成立
内閣存続は議会に依存 → 与党議員は党方針に従う必要がある
議員個人の裁量 vs 党統制
内閣運営に支障が出ないよう、党統制が強い
個人が全案件で是々非々で動くのは難しい
比較例
国 | 制度 | 選挙制度 | 党統制 | 個人裁量
日本 | 議院内閣制 | 小選挙区+比例代表 | 中〜高 | 低〜中
英国 | 議院内閣制 | 小選挙区制 | 高 | 低
ドイツ | 議院内閣制 | 比例代表中心 | 高 | 低
米国 | 大統領制 | 小選挙区制(単純多数) | 低 | 高
→議会制度と選挙制度を合わせて考えると、
議決時の討議拘束が強くなる流れは自然である。
党議拘束によって、決定自体はスムーズに行われる構造ができている。
しかし、逆に長い審議時間については説明がつかない。
ここで、僕は2つの仮説を立てた。
①アメリカの統治期間に個人主義的な考えが植え付けられた。
②多くの期間で最大与党であった自民党が、
様々な考えを内包しているため、政治的なアピールの時間が必要だった。
そこで次は、審議時間が長くなるたっていった過程を歴史から見ていく。
■歴史から見る
制度上の基盤
議院内閣制+与党過半数 → 採決は短時間で可能
小選挙区+比例代表で、議員は党統制に従う傾向
自民党成立と内部多様性
1955年:自由党系+民主党系の合流 → 自民党結成
派閥・地域基盤を内包 → 党内調整に時間が必要
国会運営・政治文化
与野党質疑や調整も含め、長い審議時間が慣習化
「時間をかける=丁寧な審議」という文化
質疑・質問は個人アピールの場としても機能
報道・国民への可視化
採決はほぼ確定 → 中継・ニュースでは興味が薄い
野党の質問やスキャンダル追及に注目 → 審議時間が強調される
→ これらの制度的背景や党内事情、政治文化、報道文化が
相互作用することで、審議時間は長期化している。
また、先ほどの仮説で見ると
②多くの期間で最大与党であった自民党が、
様々な考えを内包しているため、政治的なアピールの時間が必要だった。
という点の方が主な要因であると感じました。
野党が審議時間を求めたという説明もある。
しかし、与党に利益がなければ、
このような制度が長く維持されるとは考えにくい。
■現代の構造まとめ
制度上は採決は即決可能
しかし、党内多様性・政治文化・報道文化の相互作用で審議は長期化
結果として、
「世界一長いけど世界一決まっている議会」
「個人アピールが目立つが、採決は党方針通り」
長い審議時間は、制度よりも党内事情・政治文化の結果であることが明確
→ここまで、見てくると最初の問いである
世界一長いのに世界一決まっている議会
といういワードは、だいたい説明がつく。
制度によって、決め切る構造ができているのに対して、
個人的なアピールも必要であるという事情が
そうさせているというものである。
ただ、ここで自民党が、様々な考えを内包しているという話は、
色々なところで聞いたことがあったのですが、
あまりピンとこない方もいらっしゃると思います。
そこで最後に、
自民党の成立過程をみると分かりやすいかなと思うので、
ここにまとめを置いておきます。
■自民党の成立過程との関連を見る
1. 自民党の成立過程
1955年、日本の保守政党が統合して 自由民主党(自民党) が成立
自由党系(リベラル寄り) と 民主党系(保守寄り) の合流
1955年体制
保守政権が長期政権を維持する構造
内部に多様な派閥・地域基盤を内包
2. 党内多様性の特徴
派閥制度 が長く存在
政策や人事、予算配分に影響
派閥ごとの意見調整が必要
地方重視・経済重視・保守系・中道系 の意見をまとめる必要
→ 党内で是々非々の議論が発生
→ 採決前に審議時間を長めに取る理由の一つ
3. 制度との相互作用
議院内閣制+過半数で採決 → 採決自体は簡単
しかし 内部多様性の調整=審議時間の確保 が必要
報道や国民からは「時間が長い=丁寧」と映ることもあるが、本来は党内事情の結果
4.分析的視点
自民党の成立過程で生まれた 派閥・多様性の文化 が、
国会運営の長期審議
質問や討論での個人アピールとの組み合わせ
→ 日本国会の独特な「長いけど決まっている」構造を作った
→ 長い審議時間や党内調整の文化は、
1955年の自民党成立時に形成された派閥制度や内部多様性と
密接に関連している。
これにより、国会は制度上は即決可能でも、
党内調整のために時間をかける慣習が定着した。
■今回の整理
ここまで整理してくると、
世界一長いのに世界一決まっている議会というワードは、
自民党が作り上げてきた55年体制の権化とも言えなくもないと感じる。
今回の予算審議では、野党が日程への批判しかしないと言ったような主張をしているが、大きく歴史をみると自民党自体が作り上げたものだと思う。
また、制度や歴史から政治アピールの場として成立してしまった国会で、
報道がスキャンダル追求を多く取り上げる現象について、
実は報道側も苦肉の策だったのではないかという見方もできた。
それでも、なんとか他の視点も入れてもらいたいという気持ちは変わらないが。
くわえて55年体制については、
他党化した時代が壊しつつあると主張される方も多いです。
現状衆議院は圧倒的多数の与党の体制ですが、
今回の予算審議の報道に対するつまらないという感覚は、
55年体制に対する考え方が国民の中でも変わってきていることを
あらわしているのかもしれない。
予算審議について考えていたら、疑問が次々に湧いてくるので、
自然にシリーズになってしまいました。
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