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車通勤と音楽

 車はもう一つの部屋などと言ったりします。私は通勤で車を使用するので、これが顕著であります。食事もするし、音楽も聴く。テレビも見れば、昼寝もするという感じです。
 私はサラリーマン人生35年以上で、電車通勤は合計2年もしていないと思います。とにかく朝晩の通勤ラッシュが嫌で、いつも「車通勤ができないか」を模索しておりました。
 私の住む横浜から都心に出る時、東急田園都市線を使用するのですが、常に200%くらいの乗車率。朝から異様な熱気と乗客から出る負のオーラが車内を包み込みます。貧血者も続出です。そのせいか、私は大学に通っていた時は、朝のラッシュが嫌で月曜に家を出たら、大学付近の友人宅を泊まり歩き、帰りは土曜日という生活をしていたくらいです。
 社会人になると、会社が新宿や神谷町といった都心でありましたから電車通勤をせざるを得ず、とにかく苦痛でありました。そんな通勤地獄で神経をすり減らすのが嫌なので、車通勤を考えるのであります。
 本社のある新宿から新人研修の一環で横浜に1年半の出向期間がありました。この時に車通勤のメリットを感じ、常に考えるようになりました。その後、本社から直営店勤務になった時もチャンスと思い、店舗の近所に駐車場を借りて車通勤。
その後、転職し、都心の会社でありましたが会社の近くに駐車場を借りて車通勤。
東京の月極め駐車場代は20年前であっても20,000円~30,000円はしましたが、身銭切ってでも車通勤でした。
当時は家の車と通勤用の車を持っていましたので、維持費もバカにならなかったです。燃料費や保険代、メンテナンス費に高速代など全て自腹でしたが、それでも通勤のストレスが無い分、健康でありました。人と接触しないから風邪もひかないし。妙な酒の付き合いも無くなるし。
 仕事も意外と捗るのです。なぜなら、終電を考えずに仕事ができたり、早朝に仕事したいと思った時もフレキシブルに動けるのです。通勤はサラリーマンの大敵なのであります。
 今の会社では役職もそこそこつき、社有車を通勤の足にしております。駐車場も会社の駐車場、燃料費もメンテナンス費も会社もちですから格段に経済的になりました。

 通勤時には往復の時間を考えて最低でもCDを2枚持っていくことにしています。そして、そのうちの1枚は必ずボブ・ディランです。
 ディランのCDは全て所有しているので、アットランダムに選ぶこともありますし、テーマを考えて選ぶこともあります。1日1ディランです。
また、通勤以外でも私は大阪くらいまでなら車移動にします。飛行機や新幹線も良いのですが、車であれば終始電話ができますし、仕事にも困らない。現地に行ってもフレキシブに動ける。搭乗時間や電車の出発時間を気にすることなく仕事が出来るという利点があります。
そんな長距離ドライブの時、どのような音楽を共にするか。
 以前、娘に長距離ドライブの時に何を持っていくか、という話をしたところ、何千曲もの音源を収録したiPodなどのメディアツールをとりあえず持って、あとで適当に選ぶと今風の答えが返ってきました(今はスマホでもそれができますが)。
 私はダウンロード音楽を利用したことが殆ど無いので、もっぱらCDやカセットテープを大量に持って車に乗り込むと言ったら「昭和だね」と笑われました。

 長距離ドライブに何を持ち込むか。
行く先々の事を考えながらCD棚を見ている時が一番楽しい時かもしれません。
例えば、往路はやる気満々だから元気なロックとか、昼間は眠くなりそうだから楽しい歌とか。復路は夜になるからジャージーな落ち着いたものがいいか、などシミュレーションが始まり、ひいてはそこから既にドライブは始まっているのであります。
 さて、そんな時に重宝するのがベスト盤というやつです。洋楽邦楽問わずベスト盤は特別な企画アルバムでない限りコンサバな選曲をしていますから外れることはありません。ヒット曲も満載です。そんな意味でも高速道路のサービスエリアでもベスト盤のCD棚をよく見かけます。
 先日、長距離ドライブをする機会が有りベスト盤を数枚持って車に乗り込みました。いつものように運転をしながらBGMとして音楽を流しておりました。しかし何だか違和感が生じ、すぐに切ってしまいました。別のアーティストのベスト盤を流しても同じ現象。何故か、全然面白くないのです。音楽を聴く気分では無かったということでもありません。以前もベスト盤を積んで長距離ドライブに行ったことがありましたから、ちょっと不思議な気分になりました。
ただ言えることは、面白くないというよりイライラする方が上回っていました。それは、スピーカーから出てくる楽曲にストーリーが無いので聞いていて気分がとっ散らかるのであります。要は曲の見本市というか曲のカタログというか。
 そもそも、ベスト盤はレコード会社の都合で制作されることがほとんどですから、アーティストが介在しないことも多いと聞きます。また、アーティストが介在したとしても(選曲責任等)、収録曲は発表時期や曲の内容、時代性などバラバラなのでそれをひとつにまとめるのは中々難しいでしょう。
そう、何が言いたいかというと私はベスト盤そのものの聞き方がわからなくなってしまったのであります。きっとそれは、曲をBGMのように流して聴くことができなくなってきたのかもしれません。1曲1曲を集中して聴くとその流れなどにも気がいってしまい、ベスト盤のようにランダムに排出されると落ち着かなくなってくるのであります。

 という訳で、最近の長距離ドライブは、CDボックスです。アルバムを発表順にまとめたCDボックス。
ビートルズやジョニ・ミッチェル、ピンクフロイドやリンダ・ロンシュタットなど様々なCDボックスが出ております。そんなボックスを持込み、1日そのアーティストに浸るという事をしております。また、ボックスが出ていないアーティストでアルバムを全部所有している場合は、ファーストアルバムから最新のアルバムまでごっそりと棚から抜き出していきます。30枚以上もあれば、今回は前期だけ、とか。
やはり、アルバムで聞いていくとそのアーティストの音楽的な進化や機材の進化などもわかり、一つの絵巻物を見ているようになります。
 ビートルズで言えば、『プリーズ・プリーズ・ミー』(1963)で東京を出発し、大阪に着くころには『ホワイトアルバム』(1968)くらいまで聴くことができます。このような聴き方は、家のオーディオでは中々難しいですが、高速を走りながら聴くと時間を忘れてビートルズがどんどん進化していく様がわかり、とても面白いものです。

 他にも、「1969年特集」と題して、その年に発表されたアルバムだけを聴くというもの。
録音技術やアレンジなど国によっても違いますし、ギターの歪みの音を取っても、日本と海外には雲泥の差があることがわかります。同じ年でもこれほどまでに技術の差があるかとため息が出ます。そんな発見ができるのも、車の中で誰にも邪魔されずに集中して聴いていられるからでしょうね。
でも、あまり集中して聴くと事故を起こしますから、ほどほどにしておりますが。

 今日のディランは『Slow Train Coming』(1979)でした。ディランがユダヤ教からボーン・アゲイン・クリスチャンに改宗したことで有名になったアルバム。ゴスペル色が強く、従来のディランファンからは不評のアルバムと言われておりますが、私は大好きであります。
朝の爽やかな運転中に「ガッタ・サーヴ・サムバ~ディ!」なんて唸りながら車を走らせておりましたです。はい。

2025/9/13
花形

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